(第26章)恋人とは?

(第26章)恋人とは?

覇王は
「恋人が見つからないのか?」
美雪は
「別に……」と言いながらベッドから立ち上がった。
美雪は自分の過去を振り返った。
彼女は今まで分子生物学者として怪獣の研究のみに生涯を捧げていた。
恋人など作った事がなかったし、子供や家族が欲しいなんてほとんど考えた事はなかった。
彼女は独身でも分子生物学者の仕事に一生涯を捧げようと固く決意していたつもりだった。
しかしいくら仕事に没頭しても心奥に出来た隙間は埋められなかった。
悩み考えた末にその心に出来た隙間を無理やり埋めようとある時は
「自分より賢い人間の子供を儲けたい」
と言う淡い夢を持ち、とある狂信的な実業家が私財を投じて立ち上げた、
無料でしかもノーベル賞受賞者精子のみを集めた精子バンクに強く惹かれ、
その精子のカタログを取り寄せる事もあった。
しかし悲しい事にその精子バンクは設立者の実業家が自宅だっけ?
のバスタブで溺死した為、彼女が利用する前に
そこはすぐに封鎖されてしまったのでたちまち彼女の淡い夢は儚く散って行った。
それからショックのあまり長い事、友達と何回か飲み会へ通う事もあった。
今思えば色々馬鹿な事をやってきたなと思い、
目の前に覇王がいると余計自分の行いが恥ずかしくなった。
覇王もベッドから立ち上がりながら
「俺じゃ駄目か?」と聞いた。
美雪は突然、振り向いて
「えっ?どうして?」
覇王は向き合って美雪の顔を見つめながら
「どうすればいいんだ?」
美雪は
「そんなのあたしには分からないわよ!」
彼女は動揺していた。まさか彼がそれを口にするとは思わ無かったからである。
覇王は動揺している美雪の顔を見つめながら
「テレビや映画や小説では恋人同士は抱き合ってキスをするらしい」
すると美雪の顔は真っ赤になって
「キスなんて……そんな……あたし…」
と動揺した様に言った。
しかし覇王は美雪を抱きよせて、唇にキスをした。
美雪は顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。
覇王は
「すまん……いきなり悪いな…」
美雪は突然の出来事にしばらく頭が真っ白になっていた。
やがて覇王は
分子生物学者でいくら国連の為に怪獣の研究をしていても、魂の沸きかえって
いる君の胸を満たすものはこの世界にどこにも無かった。違うか?」
美雪は
「分からない……でも分子生物学者の仕事をしている時、いつも思うの。
『あたしの研究は何だったんだろう?』って……」
覇王は
「君にとって『生きる楽しみ』は何だ?」
美雪はしばらく黙っていた。
覇王は
「無いのか?」
美雪は
「それは……」
覇王は
「見つけられなかったのか?」
美雪は少し迷っている様子だったが
「今……見つけた様な気がした……」
と小さくつぶやいた。それを聞いた覇王は少し笑った。
美雪も笑い返し、今度は美雪から覇王の唇に熱いキスをした。
覇王も熱いキスを返すと2人は抱き合ってベッドに倒れ込んだ。
美雪は頭の片隅で
「この人ならあたしの気持を分かってくれるかも知れない……」
と思った。ふと夏の暑さのせいか汗をかいているのに気が付いたが、2人はキス
をやめなかった。
美雪は思い出した様に
「……すぐに仕事に戻らなきゃ!」
と言った。
覇王は
「7時半位にここを出ようか?」
美雪は笑いながら肩まで伸びた長い髪のゴムを外し
「それでいいわ……」と返した。

インファント島攻撃再開まであと3時間後。

ゴジラは海底の岩の隙間で眠っていたが胸の傷口が再生すると動き出した。
ゴジラはミニラを助けるのと、ケーニッヒギドラにリベンジする為に東京へ向か
う途中、ある海底で立ち止まった。1954年に芹沢大助博士がオキシジェン・
デストロイアを使い、初代ゴジラと共に死んだ場所だった。昔と変わらぬそのま
まの風景だった。
しかし一つ違うのは「死の世界」だったこの海底に再び深海魚が動き回り、少し
ずつではあるが生態系を取り戻していた事である。

地球防衛軍本部で尾崎は波川司令に
「どうして!?美雪の護衛ばかり覇王少佐がしているんですか?!それに最近は
私が彼と彼女を見ている限り!互いに手をつないで歩いていたり!肩を組んだり!
腕から腰を抱いて歩いていたり!どう考えても彼は真面目に護衛の任務をしているとは思えません!」
と不満を漏らしていた。しかし波川司令の言葉は同じだった。
美雪の家では2人がベッドから起きたのが8時頃だったので、急いで2人は徒歩
で仮設研究所に着くと、裏口に回った。日本や外国から山の様に届いていた
「全87種の怪獣を始め、世界中に出現した様々なモンスターのDNAサンプル
のデータファイル数万冊」が入った段ボールを見るなり、美雪は
「大変……」
覇王は
「これは大変だな……」
と手短に感想を済ませると、大慌てで荷物の整理を始めた。
そこに神宮寺博士が現れた。
美雪は
「御免なさい少し遅くなって……」
神宮寺博士は
「おや?珍しいな?美雪さんが遅くなるなんて……」
と珍しそうに答えた。
すると覇王は
「そんなに珍しいんですか?」
と質問した。
神宮寺博士は
「まあね!私も手伝おうか?」
と言うと
荷物の整理を手伝い始めた。

(第27章に続く)

朝の変更はここまでにします。
また帰ったら載せます。
では♪♪