(第33章)緊急救命士VSデストロイア!(後編)

(第33章)緊急救命士VSデストロイア

さらに瓦礫の山が左右に裂けたと同時にゴジラの頭が現れた。
その横にはジュニアとミ二ラの顔も見えた。
瓦礫の裂け目が大きくなるにつれて、瓦礫と土に覆われた3体の全体像がはっきりとした。
デストロイアはその様子を黙って見ている筈が無く、ミクロオキシゲンを
含んだ白い光線を3体に向かって吐き出した。
その瞬間、その攻撃を一早く察知した様に、体を左右に揺らし、
瓦礫と土を跳ね退けるとそのまま3体は大きくジャンプした。
ミクロオキシゲン光線をヒラリとかわすと、3体は同時に放射熱線で反撃した。
が、直撃して爆発してもデストロイアは全く動じなかった。
轟天号内ではジェレルが
ゴジラとジュニア、ミ二ラの蒸発した背びれが再生し!復活しました!」
ゴードン大佐は
「一体どうなっているんだ??」
ジェレルは
「ジュニアからケーニッヒギドラと同等のエネルギーが確認されています!」
と説明した。
ゴジラとジュニアとミ二ラは満月の月に向かって何度も吠え続けた。
轟天号内ではジェレルが
「大気中のオキシジェン・デストロイヤーの汚染速度を分析しました」
ゴードン大佐は
「それでどうだ?」
アヤノは
「信じられません……デストロイアの微小体は急速に世界中に拡散しています!
このまま汚染が進めば……」
ジェレルは
「これからあと10日以内には汚染は世界中に拡大し尽くして、
我々人類や多くの生物が死滅して、文字通り『死の惑星』になります!」
ゴードン大佐は
「……相手は急激な進化を続けているんだ!」
尾崎は
「相手は冷凍兵器も全く効果がありません!」
するとニックが
「大気中の酸素濃度もデストロイアのせいで急速に低下している!このままじゃ
火器兵器も全く使えなくなる!現にゴジラも放射熱線で攻撃出来なくなっている!」
グレンは
「八方塞がりだな!」
東京では復活したジュニア、ゴジラ、ミニラが吠えたのに対し、
デストロイアも吠え返すと、ハサミの様な長い鉤爪を振り回して攻撃して来た。
ゴジラが放射熱線で攻撃しようとするが周りの酸素が足りない為、
青い火花が一瞬飛び散りたちまち消えた。
やはりジュニアは苦しそうに倒れた。
デストロイアは長い尻尾を伸ばし、大きく振り回すと苦しそうに倒れたジュニアを遠くに弾き飛ばした。

地球防衛軍本部の特殊生物病院では今もなお医師や看護婦達は
「次は自分達が殺されるのではないか?」と言う不安や恐怖で張り裂けそうな感情に堪えながら、
デストロイアに感染した患者の治療に専念していた。
友紀と山岸のベッドはようやくGメ―サー室まであともう少しと言う場所にいた。
医師や看護婦達は最大限の治療を続けていた。日本人の医師はベッドに寝ている山岸について
「山岸さんの血管内に微小のデストロイアが集まって腫瘍の様なものを作ってい
るようです!脳にもいくつか確認されました!危険な状態です!
いつ爆発するか分からない時限爆弾の様です!
このままでは血管が詰まって心筋梗塞かあるいは脳梗塞も起こしかねません!」
隣にいたヨーロッパ人の医師は「うーむ……」としばらく考え込んでいた。
やがてアフリカ人の医師は
「カート先生!とにかく彼と隣にいるもう一人の患者の友紀さんも、血圧が高い
状態で心臓の働きも徐々に弱まっています!
レ二ベースを2人の患者の点滴から投与したらどうでしょう?」
ヨーロッパ人医師のカートは
「分かった!それだけではまだ足りない!2人の患者には心筋を保護して回復さ
せるaβ遮断薬(ベータブロック)のアーチスト、それとデストロイアによって
血栓が出来るのを抑えるパナルジン!2人の患者は淡や鼻詰まりも酷い!
ムコダインと、デストロイアによる液状化を防ぐ為に、体内にある余分な水分を排出さ
せて浮腫みを取るルプラックとアルダクトンAも一緒に投与してくれ!頼んだぞ!」
と言うとあわてて別の患者のベッドを診に走り去った。

アフリカ人の医師は隣にいた看護婦達の協力で、それらの薬を点滴から投与した。
それから山岸と友紀はようやく普通の治療方法では歯が立たない微小体デストロイアを一匹残らず駆逐する事が出来る医療の切り札であるGメ―サー治療の為に、ベッドで運ばれて病院内の廊下を進んでいた。
そのGメ―サー室のドアの前では治療を受けようとする大勢の患者や、
医者、看護婦で廊下は溢れんばかりにごった返していた。
突然、山岸と友紀の一列前のベッドで患者の身体が激しく痙攣を始めた。
周りにいた看護婦や医師達はあわてて
「大変だ!」
と大声を上げた。
友紀と山岸を見ていたヨーロッパ人の医師のカート先生が、
痙攣を起こした患者を診る為に目の前の患者のベッドに向かった。
患者の耳から白い液体の様なものが流れていた。
その患者の隣にいた日本人の医師が
「駄目だ!もう手遅れだ!」
と言うとその患者のベッドを右の部屋に向けた。
その患者は荒い息を吐きながら
「どこに……連れて行く……」
するとアフリカ人の医師が
「何をしている?!列を外れるな!」
と怒鳴った。しかし日本人の医師が
「残念ですが……ここでは他の大勢の患者や医師や
看護婦の命が危険にさらされます!止むをえません!」
と言うと別の部屋に運んだ。
患者は悲痛な声で
「何処へ……連れていく?助けてくれ!」
と隣のアフリカ人の医師に英語で何度も訴えた。
アフリカ人の医師は大声で
「Gメ―サー室まであと1mだ!あと1mで患者の命が助かるんだ!」
と反論しながら患者が入った右の部屋の中に入っていった。
しかし日本人の医師は
「早く外へ!もう間に合いません!手遅れです!」
と言うと何人かの医師や看護婦はアフリカ人の医師の身体を押さえ、無理矢理連れ出そうとした。
しかしアフリカ人の医師は
「離せ!まだ望みはある!」
と言って必死に抵抗したもののとうとう部屋の外に連れ出された。
その刹那、患者がいる部屋の中から
「頼む!置いていかないでくれ!助けてくれ!見捨てないでくれ!」
と声が聞こえた瞬間、絶叫と苦悶の声が長い間、部屋の中から聞こえ、やがて静かになった。
周りにいた看護婦や医師や患者達はぎょっとして右の部屋の方を見た。
しばらくして右の部屋のドアのガラスの窓に白い液体がペンキの様にベッタリと付いていた。
近くにいた医師達はあわててカーテンでそのガラス窓を隠すように
閉めた。1人の看護婦はペンキの様な白い液体を見て、愕然としながら両手で顔を覆い、
その部屋の中で何が起こったかを悟った様に
「そんな……人が……」
と声にならない悲鳴を漏らし、隣にいた日本人の医師に寄りかかりその場で泣き崩れた。
日本人の医師は
「終わったんだ!大丈夫!大丈夫ですよ!」
と言った。
その途端の医師はその看護婦をやさしく抱きしめた。
しばらくして悲しみに耐えられなくなった看護婦は
「ワーッ!」
と激しく泣きだした。アフリカ人の医師は悔しさと怒りで「クソ!」と怒鳴ると
壁に両手の拳を叩き付けた。

ジュニアはデストロイアの攻撃により、遠くへ吹き飛ばされ、東京の巨大な工場に落下して行った。
幸いにもそこは、ミクロオキシゲンやオキシジェン・デストロイアの汚染で
大気中が慢性的な酸素不足に陥る可能性を考慮して、
CCIや国連が協力して造った「酸素製造工場」だった。

ジュニアはすぐに工場の巨大な酸素ボンベを破壊すると、新鮮な酸素を大量に吸収した。
ジュニアは生き返った様に立ち上がった。
そこへ無酸素状態でも何故か平気なゴジラとミニラが一進一退を繰り返しながら接近していた。
酸素ボンベにより力を得たジュニアはようやく口から青白いハイパー・スパイラル熱線を放った。
しかしデストロイアも紫色のオキシジェン・デストロイアレイで応戦した。
無紫色の光線と青白い光線が互いにぶつかり合い、
やがてジュニアの吐いた青白い熱線が押され始め、少しずつ短くなっていった。
デストロイアはラッパの様に口を変化させ、紫色の光線もその変化と共に威力が
大きくなり、たちまち熱線は無力化させられた。
ジュニアは威力が大きくなった紫色の光線を危うくかわしたが、
頭に直撃しそうになったので両手でガードした。
肩や腕が溶けて蒸発しそうになったが何とか持ちこたえた。
凛と同化したジュニアはデストロイアを攻撃した。
しかしデストロイアは目ま苦しく形態を変化させると、
翼を槍の様に変化し、ジュニアの両手両足を貫いた。
ジュニアは悲鳴を上げた。
同化していた凛の両手両足からも血が流れた。
さらに凛の両腕は熱い酸に付けられた様に皮膚が焼けただれていた。
続いてデストロイアの頭部から紫の鞭の様な光線が現れ、
飛びかかって来たゴジラとミニラを一振りで軽く弾き飛ばした。
紫色の鞭はジュニアの頭部も切り裂いた。
ジュニアと凛の頭部が裂けて血が流れた。
凛は痛みのあまり絶叫した。

(第34章に続く)