(第45章)影の中に潜む光と光の中に潜む影

(第45章)影の中に潜む光と光の中に潜む影

狼の形をした砦の様な遺跡で、尾崎とゴードン大佐は顔を静かに上げ周りを見渡した。
すると壊れかけた超合金の壁がはがれ、壁は龍の鱗の様な模様と共に黄金色に輝いていた。
ゴードン大佐は
「……信じられない……」
とその黄金の鱗の壁に触れた。触れた手には金箔の様な粉が付いていた。
尾崎と杏子はその場に倒れている凛を起き上がらせた。
またすぐ傍に友紀が駆け寄ろうとしたが、女性FBI捜査官や
米軍のカプライに制止された。友紀はそこから大声で凛に向かって
「凛ちゃん!大丈夫なの??」
と心配した様に言った。
倒れていた凛はフラフラと立ち上がろうとして
「大丈夫!!大丈夫よ!」
と言った。
尾崎と杏子は凛の両肩を担いで何とかか立ち上がらせた。

遺跡の地底湖に掘削機で開けられた巨大ホールに通じる大きな穴から、
何の前触れも無く黄金の光が差し込んできた。
ゴジラとジュニアはその黄金の光の中に入り、地上に向かって吠えた。
また、周りにあった不完全な形をした酷い死臭漂う怪獣の死体
の山から白い蒸気が立ち上り、死体は次々と蒸発するように消えた。

一方、黄金の鱗の様な壁から壁画らしきものを見つけた友紀は驚きの声を上げて
「これ?キングギドラ?」
とつぶやいた。
その壁画に気が付いた尾崎も
「七色の翼のキングギドラ?」
とつぶやいた。
さらにラドンらしき青と赤の翼を持った一本角の赤い怪獣と
ゴジラらしき赤と青の翼を持たない一本角の黒い怪獣の絵をはじめ。
黄金に輝くキングギドラ
赤い翼と3つ首で4つの足を持つ竜。
それに黄と黒の3つ首と4つ足の竜が書かれていた。
その絵を見た時、尾崎が
「これはカイザーギドラか?」
とつぶやいた。黒と暁色が混ざった竜が、4体のモスラにより
遺跡に、つまり中国のこの地で封印される様子が描かれた所もあった。
そしてその幾つもの竜が描かれた壁画の真ん中に、はっきりと
彫り込まれた漢文があった。女性FBI捜査官がそれを読んだ。
「影の中に潜む光と光の中に潜む影」
友紀は
「どういう意味かしら?」
と考えながら言った。
しかしその隣で男性FBI捜査官はまるで子供の様に
「凄い……この絵は一体誰が描いたんだろう?超古代文明か?
あるいは地球に来た宇宙人が残した壁画かも知れない!」
と必死にカメラのシャッターを押しながら言った。
女性FBI捜査官が
超古代文明か高度な宇宙人がこんな原始的な壁画を残すかしら?
だって漢文よ。それだったらすでに写真みたいな……」
と言い掛けた時、男性FBI捜査官が苦笑しながら
「君は相変わらず夢が無いな……それで未来の子供達に夢を語れるのか?」
しかし女性FBI捜査官は
「あたしは夢では無く!現実的な事を未来の子供達に教えます!」
とムキになって返した。
ふと誰かが咳込む声が次々と彼らの周りから聞こえた。
その声を聞いて全員が一度互いに見合い、床に目を向けると、
暁のアメーバに殺されて死体になった筈の大勢の人が激しく咳込みながら、
全員今まで眠っていたかの様に目を覚まして立ち上がった。
その常識では考えられない光景を目の当たりにした男性FBI捜査官は
「こいつは驚いた……」
と、むしろ驚いていないような表情で独り言をつぶやいた。
生き返ったビリーやジュン、楊国花が周りを見渡しながら口を揃えて
「ここはどこだ??暁のアメーバは?」
と言った。
米軍やアメリカのミュータント兵や凛の護衛や友紀も驚きのあまり開いた口が塞がらない様子だった。
ビリーやジュン、楊国花その他大勢の人々も、壁に描かれた壁画を見ると、無言でそれに見入った。
「これは?何だ?」
とビリー。
「素晴らしい壁画だ!こんな壁画は見た事が無い!」
とジュン。
「誰が描いたのかしら?」
と楊国花。
その隣で男性FBI捜査官は
「地球に来た世界最古の宇宙人か?超古代文明の人達さ!」
女性FBI捜査官は
「何でそうなるのよ……それよりあなたたち、今まで死んでたのよ!」
と呆れ返った様子で言った。

(第46章に続く)