(第34章)耐性

(第34章)耐性

地球防衛軍本部の特殊生物病院で友紀と山岸はようやくGメ―サー治療を受ける事が出来た。
一緒に2人のベッドに付き添っていたアフリカ人の医師も一緒にGメ―サー治療室の中に入って行った。
しばらくすれば2人の患者の体内にいる
微小のデストロイアは全て駆逐されて命が救われるはずだった……。
しかし日本人の医師が2人の患者の異変にいち早く気付いた。
その2人の患者の体内に感染していたデストロイア達はほとんどが死滅したかに見えたが……
突然爆発的に増殖を始め、Gメ―サーのゴジラの遺伝子のコピー情報を自らの体内に取り込み始めた。
医師達は
「大変だ!すぐに中止しろ!!」
しかしアフリカ人の医師が
「そんな……これで彼らの命が救われるんですよ!」
と言い掛けた時、Gメ―サーのスイッチは切られ、治療は急遽中止された。
日本人の医師が信じられない様に
「そんなバカな……Gメ―サーに対して耐性を身に付けたのか?」
とつぶやいた。

地球防衛軍本部の「特殊生物病院」で2人の男女が地下の遺体安置所の中に入って行った。
そこに偶然居合わせたアフリカ人の医師が
「何しているんですか?ここは立ち入り禁止です!」
と怒鳴りつけた時、その男女は手帳らしきものを見せた。
アフリカ人の医師はあわてふためいて
「失礼しました!FBI捜査官ですね!お待ちしていました!」
と言うとテーブルに安置されていた遺体の入った棺を開けた。
その途端女性FBI捜査官は
「酷い……」
とつぶやいてあわてて目を背けた。
男性のFBI捜査官も同じだった。
アフリカ人の医師は
「どの死体もこのような酷い状態です!」
と答えた。女性のFBI捜査官は
「死者数は??」
アフリカ人の医師は
「分からない!!でもかなりの死者が出ています!しかもデストロイアはGメ―
サーに対する耐性を身に付け始めた様で……
大勢の患者の治療はかなり困難を極めています!どうすれば……」
と深刻そうに返した。

東京では、ようやく力を得て立ち上がったミニラが放射熱線で両脚の槍状の翼を打ち砕いた。
その直後ミニラは苦しそうに膝を付いた。
デストロイアは無言でジュニアの両手に突き刺さっていた槍状の翼を引き抜くと、
翼を閉じて、両肩から生えていたトゲのある長い触手を円形に変化させた。
それは回転して、周りにあるビルや戦車、戦闘機を無差別に切り裂いた。
3体は危うくかわしたものの、頭部や両腕を切り裂かれた。
凛は痛みを恐れること無くデストロイアに立ち向かっていった。
3体のゴジラもそれに応える様に恐れずに立ち上がった。

東京練馬区の国連特殊生物研究所でデストロイアについて研究していた美雪は、
凛が感じている苦痛や痛みを感じて叫び、椅子から落ちそうになった。
神宮寺博士はあわてて美雪を抱きかかえながら
「大丈夫かね?美雪さん!」
と心配して言った。
美雪は頷きながら
「戦っているわ……凛は3体のゴジラと共にデストロイアと……
それにジュニアとゴジラの声が聞こえたの……」
神宮寺博士は
「それは?」
すると美雪は何か呪文の様なものをつぶやいた。
「何を??」
しかし美雪は無言のまま何も答えなかった。

吹雪が吹き荒れる東京の上空を飛行する新轟天号には、
先程デストロイアが放った紫色の光線によりドリル部分に数mmの小さな隙間があった。
そのドリル部分に赤いカニの様な怪獣が20体へばりついていた。
デストロイアである。
しかしデストロイアはそのままドリル部分から船体の天井まで登り切ると、
厳重に閉じられた出入口用のハッチを見つけた。
1体のデストロイアはそのハッチの僅かな隙間を見つけ、
そこに強引に棘状の触手を捻じ込んだ。
棘状の触手が細い紐の様なものに変化し、
まるで軟体動物の様にその僅かなハッチの隙間の中に入って行こうとした。
ハッチの隙間からカニの様な両足が伸びているのが吹雪の雪の中で見えたのを最後に、
デストロイアはその隙間の中へ消えた。
さらに他の数体のデストロイアも同じ事をやり始めた。
また別のドリル部分の傷からも微小のデストロイアが雪崩の様に轟天号の機内に侵入して行った。

地球防衛軍の特殊生物病院で、男女のFBI捜査官はアフリカ人
の医師に連れられ、大きなラボ施設に案内された。
そこには、神宮寺博士と美雪、健吉が、デストロイアの子供について調べた後、
デストロイアに殺された感染者の遺体を調べに来ていた。
検死した結果、ミクロオキシゲンによる生体組織の崩壊が死因だと分かった。
様々な患者の症例を元に調査し,具体的にまとめた結果を言った。
アフリカ人の医師は
「初期症状は主に脳や心臓等の血管にデストロイアが集まって腫瘍の様なものを
作り出します。動脈硬化もいくつか確認されています。もし心臓か脳の細い血管
が詰まったら、心筋梗塞かあるいは脳梗塞が起きる危険性が高いです!」
美雪は
「それで症状が進むと?」
と恐る恐るアフリカ人の医師に尋ねた。

(第35章に続く)