(第44章)歪み始めた生命

ゴジラの自作小説を載せます。

(第44章)歪み始めた生命

轟天号ではジェレルが
火砕流が!4体の怪獣に到達するまであと2分足らずです!」
ゴードン大佐は
「マグマの方はどうなっている!」
ジェレルは
「マグマは現在!地下鉄の長いトンネルを進んでいます!
このまま行き止まりにぶつかれば!間違い無く地上へ噴火します!」
ゴードン大佐は
「とにかく!4体の怪獣の場所から一番近い地下鉄駅はどこだ?」
ジェレルはマグマが移動している東京の地下鉄の地図を映し出し、
地下鉄の赤い印に指をさしながら
「ここです!あの地下鉄の駅のトンネルから先程ゴジラとケーニッヒが取っ組み
合いで争った為、トンネルの天井が崩れて行き止まりになっています!
恐らくここから噴き出す可能性が高いです!」
と答えた。東京の廃墟で発生した火砕流は行く手にある建物や木々を次々と高温で焼きつくし、
なぎ倒しながら進み、猛スピードで確実に4体の怪獣達のいる場所へ向かって行った。

ゴジラはミニラの一連の行動に強い疑問を感じずにはいられなかった。
人間に酷い目に遭わされたのにどうして人間を守ろうとしているのか?
と激しい怒りがこみ上げる半面、息子のミニラの
無事だけでは無くケーニッヒギドラに立ち向かうミ二ラを見て
「立派な怪獣に成長したな!」と言う喜びが交ざり合い複雑だった。
いずれにせよ、ケーニッヒに滅多打ちにされるミ二ラの様子を見て、
ゴジラはケーニッヒに対して激しい憎悪が生まれた。
その憎悪がゴジラの傷ついた身体を突き動かし、ケーニッヒに襲いかかった。
しかしケーニッヒは黄金の光線をゴジラの首筋に向かって放った。
ミ二ラはゴジラを助けようとケーニッヒの目の前に立ちふさがった。
その時、ゴジラがミニラを守る為に抱きかかえた。
そこにモスラが力を振り絞って2体を突き飛ばし、
代わりに黄金の光線を食らい大爆発した。
またもやケーニッヒの意識に美雪の顔が浮かび上がった。
更にその瞬間、彼の脳裏に次の光景が浮かんだ。
火星の酷い砂荒しと共にデスギドラが現れた。
その先に黄金色のキングギドラらしきものが見えた時、戦慄が走った。
それは自分だった。
自分は無表情で口から火の玉の様な物を放った。
すると身体が黄金色に輝き、翼が七色の宇宙怪獣は、ケーニッヒが狙った
黒い宇宙怪獣を突き飛ばして代わりに火の玉を食らい、大爆発を起こした。
その後、彼はためらうこと無く黒い宇宙怪獣を同じ火球で焼き殺した。
ケーニッヒは
「そんな……母と父は俺が殺したのか?」
しばらくしてケーニッヒは
「うわああああぁぁぁっ!」
と暗闇の中で絶叫した。そして現実ではケーニッヒは突然、激しく苦しみ出した。
美雪の意識も彼と全く同じ映像を見ていたので同じ様な戦慄と激しい悲しみに襲われ、
思わず
「もうやめて!」
と叫び、両手で顔を覆った。苦しんでいたケーニッヒの動きが止まり、
小さい声で
「誰だ…俺の意識に入り込んだのは?」
さらに
「もうやめて!お願い!」
と声が聞こえた時、
ケーニッヒはハッとして
「み…ゆ…き??」
とつぶやいた。

真鶴の病院では美雪の姉の杏奈が、個室で意識不明のまま眠っている
美雪のベッドの上でいつの間にかうたた寝をしていた。
そこへ2人のFBI捜査官と仮設研究所で美雪と覇王が出会った男、
CCIの官房長官らしき男が入って来た。
うたた寝をしていた杏奈は人の気配に気付きあわてて起き上がった。
「誰ですか??あなた達は!!」
と思わず大声を上げた。
その時、神宮寺博士も入って来た。
杏奈は
「神宮寺さん??」
と驚いた様に声を上げた。
謎の男が
「あなたが美雪さんのお姉さんですね?」
杏奈は
「はい、そうですが……」
神宮寺博士は
「実は一緒に真鶴の仮設研究所へ来てほしいのです!
覇王圭介と美雪さんについて話があります」
と言うと杏奈を個室の外へ促し、杏奈は真鶴の仮設研究所に連れて行かれた。
そこでその謎の男がある怪獣のDNAの写真を見せながら
「……とても言いにくい事ですが……」
杏奈は
「なんですか?この怪獣はケーニッヒギドラ?」
謎の男は
「はい!それと左は妹さんと付き合っていた覇王圭介さんのDNAです!」
杏奈は動揺して訳が分からずに
「あの怪獣と彼と何の関係があるんですか?まさか?覇王さんがX星人で、
この怪獣をM塩基で操作していると言うの?」
しかし謎の男は首を振って
「いえ!違います!覇王圭介さんのDNAはケーニッヒギドラのDNAと極めて類似していたんですよ!私も正直目を疑いました。覇王圭介さんのDNAは確かに人間の男性の形をしています!
でもまぎれも無く怪獣のものなんです!」
と少し興奮気味にしゃべった。
更に
「何故彼がこの地球で人間に変身してまであなたの妹さんの
美雪さんと付き合ったのか?それが最大の謎ですね!」
杏奈は動揺してはいたが少し笑いながら
「そんな馬鹿な事があるんですか?第一怪獣と人間は生物学的に違いますよ!」
と冷静に指摘した。
すると神宮寺博士は
「確かにジャーナリストの杏奈さんの指摘は正しいです!
しかし最近この地球の生態系に急激な変化が現れている!
地球温暖化環境ホルモンつまり内分泌かく乱物質と疑われている
数多くの化学物質による環境汚染によって普通の生物が怪獣化するだけでは
済まなくなってきているのかもしれない……
地球温暖化や数多くの化学物質から、人間と怪獣との境界線が崩壊しつつあるのかも知れない……
このまま人間と怪獣の境界線崩壊が進めば!人間に変身する怪獣が激増する危険性もある!
宇宙怪獣のケーニッヒギドラは、人間に類似したDNAを持つ事で、
人間に変身する他の怪獣との来るべき過酷な生存競争に備えたのでは?」
杏奈は
「それじゃ……もうすでにこの地球の生物の性そのものが歪み始めていると言う
事ですか?」
神宮寺博士は頷き
「かなり深刻な問題です……新種のケーニッヒギドラが
地球環境の生態系に順応したら?」
謎の男は
「つまり突然現れた新種のケーニッヒギドラや他の人間に変身する怪獣達によっ
て、新人類のミュータント、カイザーに代わる形が現れ、次第に人類自体の種の
存続が難しくなると言う事ですね!まあ……仮にケーニッヒギドラ、
つまり覇王圭介が美雪さんとの間に子供を作れればの話ですがね!」
と笑いながら返した。杏奈はその衝撃的事実にただ唖然と2人の会話を聞いていた。

(第45章に続く)