(第53章)偽装されたラベルと資料!正しいのはM塩基?Mウィルス?

(第53章)偽装されたラベルと資料!正しいのはM塩基?Mウィルス?

サンドラに感染したウィルスのワクチンを作る為、
中国の遺跡の大きな湖の底から回収された米粒のサイズの植物が、
極秘に網走厚生病院の広場のテントに運ばれていた。
美雪はその米粒サイズの植物の細胞の表面を見た。
植物の表面は暁色では無く青黒かった。
どうやら暁のアメーバと同じ宇宙植物のようだ。
さらに神宮寺博士が白い手袋をはめ、ピンセットでその宇宙植物を注意深く摘まんで観察した。
クリスタル状の花のつぼみと根は何故か美しい七色をしていた。
この宇宙植物は休眠状態のようだった。
美雪と神宮寺博士はDNAの調査を始めた。
その準備の時、美雪は
この宇宙植物からワクチンを作れるかもしれ無いわ!」
とかすかな希望を抱いていた。
準備が整い早速、美雪と神宮寺博士はその宇宙植物に含まれるDNAの分析を始めた。
しかし意外な事にその宇宙植物からデスギドラ、デストロイアや暁のアメーバは
おろか幻覚剤であるPS45は一切検出されなかった。
美雪は
「まさか?検出されない??どう言う事なの?」
神宮寺博士が調べた結果、その宇宙植物からはM塩基に類似した物質と、
ゴジラキングギドラにそっくりのDNAのみが検出された。
どうやら幻覚を見せる能力は無いらしい。
体を侵食して人や生物を殺す事もしない事が分かった。
美雪は
「もしかして?X星人の高が言っていた……」
神宮寺博士は
「『デス・バガンバクテリア』の原種なのか?」
FBI捜査官の女は
「それなら?安全ね!」
美雪は
「それじゃ??どうしてあんな中国の遺跡の湖の底に??」
しかし神宮寺博士は何か思いついた様子で
「この原種の宇宙植物にG塩基を組み込めばウィルスのワクチンになるのでは?
ゴジラのG塩基はもう手配済みだ!」
FBI捜査官の女は心配そうな顔で
「でも……うまくいくか分からないわ……
もしかしたら大変な事になるかも?」
美雪が
「とにかくやって見ましょう!」
と少し大きな声で言うと、神宮寺博士と元FBI捜査官は頷いた。

美雪は宇宙服に着替え、白い手袋をはめ、届けられたゴジラのG塩基のサンプルを
注射器で注意深く取り出し、休眠中の宇宙植物に突き刺し、投与した。
しばらく待ったが、宇宙植物に変化はなかった。

更に一時間じっと待った……何も起こらない……拒絶反応は無いようだ……今の所は……。

更に30分待った。しかし宇宙植物はピクリとも動かなかった。

 その間、元FBI捜査官は、他にワクチンを作る手掛かりが
無いか、ガーニャ達に先程逮捕されたレベッカがいる別のテントへ向かった。
そこで彼女はガーニャと共にレベッカを取り調べた。
最初彼女は、仲間を目の前で殺され、
かなりショックで落ち込んでいるから話は無理かもしれないと思っていた。
しかしレベッカは精神的にまだ落ち込んではいるもののほとんど元気を取り戻していたようすだった。
やがてレベッカのMウィルスとM塩基の説明に
疑問を持った元FBI捜査官と、自信満々に語るレベッカの主張が対立し、
とうとうM塩基かMウィルスか、どちらの名称が正しいのかについて果てしない論争が始まった。
FBI捜査官の女はレベッカに向かって
「落ち着いて!よく考えてみなさい!塩基とウィルスはトカゲとサル程違うのよ!」
ガーニャは
「それはごもっともだ……」
と小さくつぶやいた。
するとレベッカ
「それじゃ『超小型受信機のMウィルスと生物兵器用の暁色のMウィルスは、
地球に生息するバクテリオファージの様に、デスバガンバクテリア
感染して変異していた宇宙レトロウィルスと判明した』これはどう説明するのよ!」
と彼女に詰め寄った。彼女は冷静に
「Mウィルスつまり宇宙レトロウィルスはM塩基とは別物よ!」
と反論した。
レベッカは怒りで顔を真っ赤にし、
「それじゃ『X星人のMウィルスは塩基の様な働きをする』これはどう説明するの??」
彼女は苦笑しながら
「あなた人の話ちゃんと聞いている?塩基とウィルスは全くの別物とあたしは言ったはずよ!」
レベッカはさらに顔を真っ赤にして怒り狂い
「証拠はあるの??証拠は??」
と大声で怒鳴りつけた。
 すると彼女はニッコリと笑い一枚の資料を取り出した。
その資料はあの中国に遺跡で回収した白いファイルの中のMB計画のコピー用紙だった。
 レベッカはそれを読んで恥ずかしさと怒りで顔がますます赤くなった。
そこにはMウィルスと書かれていた筈の部分が全て「M塩基」に変わっていた。
彼女は
「最初発見された時は確かにMウィルスと書かれていたわ!でも!発見された後、
ふと文字の不自然さが気になって『Mウィルス』の文字だけ、
100円玉で軽く擦って見たの。
するとそこに『M塩基』の文字が浮かんだの……
なんでそうなったのかは分からないけど……。
もしかしたらどこの誰かさんがMB計画の妨害の為の偽造工作を施したのかも知れないわ!
ついでに『塩基に近い働きをするので通称M塩基の』の部分も
100円でこすったら完全に白紙になったわ!
つまり元々書かれていなかったの!
それを誰かが書き足したのよ!
他にも凛さんが見つけた小さなカバンの裏にはりつけられた
『Mウィルスと抗Mウィルス』表示ラベルも同じ方法で試してみたら
『M塩基と抗M塩基』の表示が新しく現れたわ!
ちなみにG塩基とGウィルスも同じよ!」
次々と新たな証拠をレベッカは付きつけられ、とうとう反論が出来ず、無言になった。
しばらくしてガーニャは
「そろそろ……この辺にしてくれないか??」
FBI捜査官の女は
「ええ……いいわ!手掛かりはつかめなかったわ!」
と堂々と外へ歩き去った。
 レベッカは自分のM塩基とMウィルス同一説を否定され、
悔しさのあまり大声で泣き始めた。
 さすがのガーニャもレベッカを気の毒に思った。

(第54章に続く)