(第58章)怪獣には言葉は無い!それでも?助けを求める!

(第58章)怪獣には言葉は無い!それでも?助けを求める!

 ロシア語が聞こえた。
「君達!ここで何をしている!」
凛はまだ頭が混乱し
「何って?何をしているのか?分からないわよ!」
すると一人の女性が
「何……訳の分からない事を言っているのよ!さあ!立って!」
凛は金髪のロシア人の顔を見て
「あれ?ジーナさん?」
するともう一人のロシア人が
「さあ!君も立つんだ!」
と言って蓮を立たせた。
蓮は
「ここは?マジで何処だ?」
蓮を抱え上げたロシア人の男性は
「どうやって?ここに入ったのかかは知らないけど……」
と言いながら蓮と凛の両腕をしっかりと掴んだ。

 ゴジラはサンドラに鋭い牙で頭を噛み付かれながら怒りの唸り声を上げ、民家を押しつぶし倒れた。
 再びサンドラは苦しみ始め、ゴジラの頭に食らいついていた
鋭い牙を離し、その場で首を振り回し苦しんでいた。
ゴジラは隙を見て、素早くサンドラの頭部に頭突きを食らわせた。
サンドラは痛みで吠え声を上げ、ゴジラから離れ、後ろに倒れた。
そしてゴジラは起き上がり、怒りの咆哮を上げた。
サンドラはしばらくその場で悶えていたが、すぐに起き上がった。
吹き飛ばされ、蒸発して無くなったアメーバ状の腕から青緑色のヒグマの様な腕が生えて来た、
さらにそこから鋭く爪が5本生えて来た。
 しかし相変わらず背中から全身にある肉芽種の大小のコブは消えなかった。
 サンドラはゴジラに向かってその爪を振り回して来た。
ゴジラはサンドラの顔を見た。彼女の顔は幾つもの肉芽種で覆われ、
哀れにも醜く崩れていたもののラドンに類似した顔は幸いにも原形は保っていた。
 その爪は近くに立派に建っていた高層ビルを一撃で真っ二つに切り裂いた。
まるで日本刀並の切れ味である。
 アメーバ状のもう片方の腕から生えた長く鋭い爪はさらに変化し、巨大な鉤爪になった。
 ゴジラは危険を感じ、素早く自分の尾をサンドラに叩きつけ
ようとした。
 しかしサンドラは鉤爪で尾を掴んだ。
ゴジラの背中か青白き輝き、素早く放射熱線を吐いた。
放射熱線は鉤爪のついたアメーバ状の腕を吹き飛ばし蒸発させた。
しかしすぐに青緑色の新しい腕が生え、再び鉤爪となった。
 ゴジラの尾には円状にかすり傷ができ、血が出ていた。
もしゴジラの放射熱線が吐くのが遅れていたら恐らくゴジラの尾は
サンドラの鋭い鉤爪で危く切断されていたかも知れない。
 ゴジラは改めてサンドラは恐ろしい怪獣だと思った。
気を抜いたら確実にやられる……しばらくゴジラはサンドラを睨みつけ相手の様子を伺った。
サンドラも同じだった。

 眼が覚めた凛は周りを見渡し、オレンジ色のハウスを見て
「ここは?テント?」
更に蓮もオレンジ色の周りを見ながら
「何のテントだ?」
徐々に複数の男性とサンドラの
「助けて!」
「全てを抹消して!」
と言う声を聞いて目の前が真っ暗になった記憶が蘇って来た。
凛は
「まさか?……サンドラや見ず知らずの男女が助けを?」
蓮は思わず笑いながら
「助けに??ハハッ!こんな所へ連れて来て?
一体?全体?どうしろと?」
しかし凛は、男女のロシア人に病室外へ連れ出され、廊下を歩いている間、
真剣な表情で隣にいた蓮に小声で
「もしかして?怪獣化したサンドラの他にこのウィルスで死んだ怪獣達が居たんだわ!
だから?今までそうだった!最初はゴジラジュニアに!次は……」
と少し考え、
「中国の遺跡の地下研究所でウィルス実験体にされて廃棄処分になった黒い竜!
バガンの同族!ケーニッヒギドラの父親人間に例えたらあたしのおじさんに当たる存在かしら?
それで今回はサンドラと他の見ず知らずの怪獣達から助けを求められたわ!」
蓮は
「なに?話しているんだ?怪獣には言葉は無い!」
凛は
「それでも?助けを求められたわ!」
と反論した。
サミーは
「君達?何を小声で話しているの?」
ジーナが
「着いたわよ!君達はここで待っててくれ!」
そこはガーニャとレベッカが取り調べをしているテントからに近い休憩用のテントだった。
凛はジーナとサミーが完全に居なくなるのを待った。
数人の警備員らしき人影がオレンジ色のテントから見えた。
その時、凛は素早くテントから飛び出した。
蓮は
「待てよ!何処に行くつもりだ!」
と言ってすぐに後追った。
それに気づいた数人の警備員が
「コラ!待ちなさい!」
と言って懐中電灯を抱え、後を追った。
しかし凛と蓮は素早く雪だらけの茂みに隠れ数人の警備員をやり過ごし、再び走り出した。
そのあとを蓮が続いた。

(第59章に続く)