(第60章)ツングースの謎(前編)

(第60章)ツングースの謎(前編)

 寒く雪がちらつく網走厚生病院の広場のテントの近くを凛を追って走っていた蓮は
「何考えているんだ!馬鹿野郎!刑務所に行きたいのか?」
と散々悪態をつきながら彼女の後を必死に追い掛けた。
凛は雪がちらつき寒さで震える身体を我慢しながら蓮の方に振り向き
「少しは黙ってよ!見つかるじゃない!」
蓮は
「ああ……俺は面倒な事になる前に早く見つかって欲しいね!」
凛は
「だったら付いて来ないで!」
と白い息を吐きながら言うと再び走り出した。
しかし
「待てよ!」
と蓮も白い息を吐きながら後を追い掛けた。

 シベリアのツングース地方にとある研究所。
 再びビリーが別のシャーレのラベルを見ると
「№20・中国の深い森(詳しい場所は極秘)」
と書かれていた。
次のシャーレのラベルには
「№20・中国の深い森の地底湖(詳しい場所は極秘)」
ビリーは
「一体?このツングースの岩石の破片とどういう関係が?この
ラベルの番号は何だ?」
さらにトオルが別のシャーレを見ると
「『東京タワー付近(詳しい場所は極秘)』」
と書かれていた。
とうとうビリーは待ち切れず隣にいたロシア人の研究員に、
「そろそろ教えてくれませんか?シャーレに入った土とどういう関係が?」
ロシア人の研究員は無言で2人を巨大な資料室へ案内した。
やがてロシア人の研究員は重い口を開いて語り始めた。
「それが知りたければこちらの資料を読んでください!」
と言い、棚の中にある段ボール箱からぶ厚い資料の束を取り出した。
トオル
「これは?」
ロシア人の研究員は
ツングース大爆発に関するものです!」
とだけ答えた。

 轟天号内の巨大スクリーンでニックは、サンドラがゴジラ
長い爪で突き刺し、軽々と持ち上げ投げ飛ばす様子を見て、戦
慄とパニックのあまり
「なんてこった……なんてこった……」
と何度もつぶやいていた。
杏子も
「何なの?あの強さ?」
ゴードン大佐は
「来るぞ!プロトンミサイル発射!」
と大声を上げた。
サンドラは怒りの矛先を轟天号に向け、行く手を遮る建物やビルの残骸を
左右の爪で薙ぎ払い粉砕しながら、轟天号に向かって来た。
 轟天号の船体からは数発のプロトンミサイルが放たれた。
しかし目の前を飛んでいるサイルにはまるで眼中には無く、
ただ滅茶苦茶に両腕を振り回し、全てのミサイルを切り裂き、握り潰し破壊の限りを尽くした。
それでも怒りは収まらず、しかもスピードは全く落ちる事無く真っ直ぐに轟天号に向かって走って来た。
ゴードン大佐は戦慄している周りのミュータント兵に力強い声で
「怯むな!冷凍メ―サー発射!」
と号令をかけた。
轟天号のドリルから強力な冷凍メ―サーが放たれた。
しかしサンドラは左腕で軽く薙ぎ払い、
冷凍メーサーは大きく右に外れ、近くの建物を凍らせ瞬時に破壊した。
 もはや轟天号には荒れ狂う彼女の進撃を止める術は無かった。
グレンは
「もう!駄目だ!」
ニックは
「彼女を止められない!」
ゴードン大佐は
「クソ!もう!これまでか?移動スピードが速すぎる!
これじゃかわせない!……どうする?」
と必死に考えていた。
杏子は悲鳴を上げた。
ニックは
「もう!駄目だ!終わりだ!」
ゴードン大佐は
「あきらめるな!」
と大声を上げ励ました。
尾崎は念動力で止めようかと思い付いたが、中国での苦い経験を思い出し、一瞬迷った。
 時間はほとんど無かった。サンドラはあと数10mまで轟天号に迫っていた。

 取調室になっているテントでガーニャは妖艶な笑みを浮かべているレベッカに改めて
「本物そっくりの機械人形、何故あんなものを作ったんだ?」
と質問した。
しかしレベッカ
「そんな事?どうして聞くの?」
と逆に質問された。
ガーニャは再び怒りがこみ上げ
「いつまで!人を小馬鹿にすれば気が済むんだ!」
レベッカ
「さあ……いつまででしょう?」
ガーニャはふと
「まさか?時間稼ぎのつもりか?」
と睨みつけ、とうとうガーニャの怒りが爆発した。
「何を企んでいるんだ!何を考えている??」
と大声を上げた瞬間、「ゴン!」と言う音と後頭部に衝撃が走るのを感じ、
意識が遠のきそのまま取り調べ室の机に倒れ、失神した。

(第61章に続く)