(第78章)激変する環境と人間社会

(第78章)激変する環境と人間社会

凛は茶色のソファーに座っている山岸に
「大丈夫?折れた右腕?」
山岸は包帯で巻かれた右腕をさすり
「うん!ちょっとゴタゴタして…骨が少しズレてくっついちゃったみたい。
今!担当の医師や原田先生に大目玉を食らっちゃったよ!」
ユキも苦笑しながら
「あたしも!テロリストに胸倉を掴まれて病室ドアに叩きつけられた時、
危うく手首を折られる所だったわ!」
と言い包帯が巻かれた手を蓮に見せた。
蓮は
「酷い奴らだ…全く!」
凛は
「でも……クラス皆!無事で本当によかったわ!」
ユキは話題を変え、おもむろに新聞を取り出し4人に見せた。
その新聞には大見出しで
「死人が生き返る?!」
と書かれていた。
3人が読むとその記事には
「事故や殺人で亡くなった人々が現場や搬送先の病院で突然生き返ると言う
奇妙な現象が急激に増えつつある。生き返ったと思われる人々の証言によると、
何か黄金に光る青い植物が助けてくれたという。
この現象は日本を始め、世界中で起こりつつあり、
現時点ではその植物との死体復活の因果関係は不明だと
医療関係者はコメントしている。」
ユキは
「なんだと思う?」
蓮は
「さあ……死体を生き返らせる植物?」
凛は考え込みユキに向かって
「でも!あいつらとは違うわね……」
ユキは無言で頷いた。

CCI・真鶴特殊生物研究所では再び会議が始められていた。
ロシアのツングースから帰って来たばかりのトオル
「この『プロメテウス』の第2段階が成功すれば!
あの宇宙植物のアオシソウやゴジラ細胞に含まれるG塩基を使った新しい医療技術によって!
癌やその他の病気を癒し、もしかしたら死んだ人間を生き返らす事も可能かも知れない!」
中国人の女性は
「それだけじゃないわ!アオシソウやゴジラ細胞内に含まれるG塩基を、
穀物や野菜、豆、果物、肉、魚等に組み込めば、あらゆる害虫や寄生虫
ダイオキシン環境ホルモン等の化学物質を無力化させ、
人間や動物達も健康を維持出来る!
ついでに言えばそれによって食糧自給率や生産スピードが向上するのは間違いないでしょう!
実際小麦等の穀物に関しては、サラジア共和国の生物工学研究所で不幸にも亡くなった白神源壱郎博士
とその娘の恵理加さんの意志を継いで、
私達中国の科学者達がサボテンと小麦の細胞を融合させ、砂漠でも育つ植物の種子に、
ゴジラ細胞に含まれるG塩基を組み込ませ、砂漠でもゴジラの自己再生能力により長い期間、
枯れないスーパープラントが実用化されつつあり、
現在試験的にですが、既にゴビ砂漠の一部が穀倉地帯になりつつあります!」
すると元内閣官房長官の野中剣士は
「アオツキシソウが食料や医療研究の為に利用されるなら?アカツキシソウの利用は?」
ビリーは
アカツキシソウは主に生物兵器として利用されるでしょう!」
ロシア人の男性は
「もはや!地球防衛軍自衛隊のメカニックな兵器よりも
遥かに高率的で有効な生物兵器が多く生まれるかもしれませんね!」
トオル
「それは?具体的にどんな?」
ロシア人の男性は誇らしげな顔で
「少なくとも自衛官や隊員、ミュータント兵カイザー兵に代わって
アカツキシソウを人間の素体に寄生させ、突然変異を起こさせ!
さらにゴジラやアオシソウに含まれる多種多様の生物の
DNAを掛け合わせた「究極の怪獣兵士」が誕生する事によって、
未だに続いている紛争や内戦、テロ、怪獣の襲撃に即時対応する事が期待出来るでしょう!」
そこにトオル
「銃弾や爆弾で瀕死の大怪我を負っていても、
G塩基によって瞬時に傷口を再生させ、
また放射能やあらゆる化学物質に曝されても死なず、強靭的な体力と身体が維持出来ますね!」
そう強い口調で言った。

病室で凛とユキのやり取りを聞いていた山岸は
「えっ?あいつらって?」
凛はあわてて
「いや!なんでもないわ!」
と返した。しかし蓮は2人が何を話しているか?何となく察しがついていた。
そこに原田先生と長野先生が入って来た。
原田先生は
「よかった君達!無事だったのか?」
原田先生は急に泣き出し
「よかった!よかった!本当によかった!」
とかすれた声で言った。
しかし長野先生の顔は明らかに怒りを帯びていた。
「山岸さんには言いましたが……」
3人は色々ゴタゴタがあってすっかり忘れていたが、
実際、避難所から無断で脱出した事をこの場でぼんやりと思い出し、
あとから来た山岸とユキの両親と共に、3人共々大目玉を食らう羽目となった。

ようやく山岸とユキの両親や先生の叱責から解放され、落ち着きを取り戻し、
反省している間、ふと病室の外で2人の男女がヒソヒソと英語で言い争う声が聞こえた。
どうやら元FBI捜査官の男女の声らしい。
男性は
「彼女は長野さんから真実を知るべきだ!」
しかしその中に混じって洋子の母親の声が聞こえた。
「でも!今!彼女にその真実を知らせたら?余計!彼女が苦しむことになるわ!
お願いします!そっとしておいてやって下さい!」
また父親らしき声が聞こえ
「そうですよ!お願いです!そっとしておいてやって下さい!」
すると元FBI捜査官の女性の声が聞こえた。
「ご両親の言う通りよ!だって!自分の正体がレベッカのような恐ろしい姿なんて!」
しかし元FBI捜査官の男性は女性の言葉を遮る様に
「でも!今の機会に真実を知って置かないと!この先一生苦しむことになるかも知れない!」
女性は
「それは……そうだけど……」
さらに男性はわが意を得たとばかりに
「それに!彼女だって知りたい筈だ!自分が何者か?何故?ここにいるのか?」
するとユキの両親も元FBI捜査官の女性も黙りこみ無言となった。

(第79章に続く)

今日の変更はここまでです。
あとシーズンⅣはあと4章で完結です。
では♪♪