(第80章)人工種族ノスフェラトゥの悲劇とMWM社の真の権力者

(第80章)人工種族ノスフェラトゥの悲劇とMWM社の真の権力者

 洋子は自分の正体と真実を突き止めるべく新たな決意を胸に長野先生と会っていた。
長野先生は洋子の言葉に心を動かされ、ようやく重い口を開き、
宇宙人の正体と真実について語った。
「あたし達は、地球で発見された青黒い宇宙植物を生物兵器として利用する為に、
X星人がわざわざ他の小惑星から別の種族を大勢X星に連れて来て、
その宇宙植物を寄生させて人工的に作り出されたのよ!
新しく誕生した種族の事をX星人は『ノスフェラトゥ』と呼んでいたわ!
ちなみにこの青黒い宇宙植物は微小デストロイアに類似した細胞を持っているの!」
洋子は驚いた顔で
「まさか?あの地球の東京で猛威を振るったあのウィルスが起源なの?」
長野先生は話を続け
「そうなの……それから多くの仲間達はX星人達の労働力として、
家畜運搬の労働力やM塩基や生物兵器用のアメーバ開発の実験台に利用されて、
元々繁殖力の弱い『ノスフェラトゥ』達は子孫を残せず、
男も女も子供も貧困や飢餓によって大勢死んで行ったわ……」
洋子は両手で口を押さえ信じられない声で
「そんな……酷いわ……」
それから長野先生は
「元々『ノスフェラトゥ』は労働力確保が目的として作られた生物だったから、
知能を持つ生物に寄生しないと能力が発揮できない様にされているの……
繁殖能力が極めて弱くて、しかも死体にしか寄生できなかったから、
小惑星に住む多くの種族は実験台として大勢虐殺されたわ!
だから……X星で実験台にされ、故郷の小惑星に逃れた大勢の『ノスフェラトゥ』、
はM塩基に支配されていない僅かな野生のバガンキングギドラの生き残りを……
それに対してX星人はM塩基で生物兵器として強化改造された
バガンキングギドラ達を利用した激しい紛争が今も続いているの……」
洋子は長野先生のあまりにも衝激的な発言を聞いて言葉も出なかった。

 今まで黙ってビリーやトオル、楊、ロシア人の男性の話を長い間、
聞いていたオーストラリア人が隣のドイツ人に向かって
「それで?その小惑星では今にX星人と我々種族の仲間達が内戦を続けていると?」
ビリーは突然の謎の発言に戸惑った声で
「何を言っているんだ?」
するとドイツ人は
「君達のような人間には関係の無い事ですよ!」
トオルも訳が分からず
「あなた達はまさか?」
するとそのドイツ人とオーストラリア人がイスから立ち上がり
「そうです!私達はその小惑星から逃げ出したサンドラの仲間です!」
トオルはあくまでも冷静に
「君達は?どうしてここに?」
するとイタリア人も立ち上がり
「自由と種族繁栄の為です!」
別の中国人も
「このMWM社を立ち上げたのはこの私達種族です!」
すると楊は
「それじゃ?あたし達は……」
ビリーは怒りがこみ上げ
「ただ利用されていただけか?」
イタリア人が笑い
「利用?人聞きが悪いですね!」
その3人には明らかに危険な香りが漂っていた。
若い坊主頭のアメリカ人の研究員も突然の出来事に口をパクパクさせて目は脅えていた。

 網走市厚生病院の休憩室で衝激的な発言を聞いて
言葉も出ない洋子を尻目に長野先生は淡々と真実を明かして行った。
「ごく最近!MBIのスパイの情報によれば、X星に労働力として連れて来られた
X星の反乱グループが、暁とオレンジ色アメーバ型の生物兵器や、
M塩基を製造する工場を爆破するテロ事件を起こしているわ!でもその影響で、
生物兵器の一部が外部に漏れて、家畜や生物実験用の宇宙怪獣に寄生して暴れ出して……
今は……ほとんどのX星人が避難しているらしいわ……」
洋子は驚きのあまり眼を丸くして呆然と聞いていた。
長野先生は洋子の顔を見て
「あたしが話せる事はここまでよ!」
と言うと宇宙人についての話を終えた。

 再びCCI・真鶴特殊生物研究所でロシア人の男性は
「……あなた達の立場からの協力が必要だっただけですよ!」
ビリーは震える口調で
「それでは?俺達人間は殺すのか?」
ロシア人の男性は
「いいえ……殺しはしませんよ!とにかく!
私達の本当の目的はバガン族のゴジラの細胞に含まれるG塩基やオルガナイザーG1です!
この2つがあれば、アカツキシソウやM塩基を根絶させる事が出来ます!
あなた達人類の癌やその他の病気も治療したり、死人を生き返らせる事も出来るでしょう!」
緊張と沈黙が長い間続いた。
そしてオーストラリア人は静かに口を開き
「まあ……今後の予定は年明けにでも報告しようかと思います!以上!」
と言うとドイツ人とオーストラリア人、イタリア人は席を立ち
会議室の外へ立ち去ろうとした。
しかしビリーは
「まて!話はまだ終わってないぞ!」
と大声を出した。
しかしイタリア人は振り返ると冷たい声で
「もう!会議は終わったんです!諦めてください!」
と言うと会議室の外へ出て行った。
トオルは怒りで外へ出ようとするビリーを押さえつけて
「もう!無理です!」
しかしビリーはジタバタもがき
「クソ!よくも利用したな!いつの間に!いつの間に!チクショウ!
MWM社は最初からあの南シナ海の谷間から発見された
まだ変異していない貴重なアカツキシソウやM塩基のサンプルを
全て台無しにするつもりだったのか?!
ふざけるな!勝手な事はさせんぞ!」
といつまでも罵声を浴びせていた。
その暴れ回るビリーを押さえつけながらトオル
「彼らは……一体?ゴジラを利用してM塩基や
あのアカツキシソウを根絶するなんて……
そんな馬鹿な話が本当にあるのか?」
とつぶやいた。
野中も突然の出来事にただ驚き憤慨しながら
「それでは?我々の計画と違うではないか?」
しばらくしてビリーは激しい息切れを抑え、どうにか平静を取り戻し
「済まん……つい!取り乱してしまって……」
トオルはいつも通り、他人に関心などない様子で
「いいんですよ……」
と返した。
野中は
「なんてことだ……」
とつぶやき、3人が出て行ったドアの方を見ていた。

(第81章に続く)