(第18章)秘密を守る者と暴く者

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第18章)秘密を守る者と暴く者

 東京湾の海底で青白い光が炸裂し、濁った「ゴボボッ!」と
言う爆発音が聞こえた。大量の気泡と共に、ドス黒い塵が辺り
をまるでイカかタコの墨の様に海水を染め、海水を切り裂く様な
「グオオッ!」という吠え声が聞こえた。
 それから「グギェーッ!」としわがれた別の声が複数聞こえた。
 やがてドス黒い海水を突き破り、全身が茶色で3つの首と赤い翼に
4つの足を持つ怪獣の大群が現れた。
デスギドラであろうか。
姿は過去に東京に現れたデスギドラよりも一回り小さかった。
 そのうしろから青白い背びれをもつ怪獣が現れた。
ゴジラだ !
 ゴジラはそのデスギドラに類似した怪獣を追いかけ、
海底の岩山を高速で泳いでいた。
 しかしそのデスギドラに類似した怪獣は突然、
何かゴジラ以外の危険を目の前に感じたかのようで、
急に大群の編隊が乱れ 、いきなりゴジラの方に方向を変更し、
一斉にゴジラに向かって火球で攻撃した。
 ゴジラはその大量の火球攻撃をまともに受け、しばらく立ち往生した。
その隙にデスギドラの大群は再びバラバラに逃亡した。
 ゴジラはようやく爆風から逃れ、激しく首を左右に振り、
周りを見ると怪獣の大群は1匹残らず姿を消していた。
いやたった一匹だけ逃げ遅れた怪獣がいた。
 逃げ遅れた一匹は先程のゴジラの放射熱線により、
重体を負っているらしく、3つ首の内、中央の首は吹き飛ばされ、
片方の赤い翼には大穴があいていたゴジラはフラフラと泳ぐ怪獣を
しばらくじっと見ていたがやがて力尽きたらしく、
「バアン!」と大きな音を立て、ドス黒い塵になり死んだ。
いや元々死んでいるから正しくは『2度目の死を迎えた』と言うべきだろう……。
 それからゴジラは、目の前の真っ暗闇の海底の洞窟で蠢く
自分と同じ背びれとワニの様な頭部らしき黒い影を睨みつけた。
その黒い影は洞窟の奥深くに消えて行った。
その様子を見たゴジラはすぐにその影を追って洞窟の奥深くに入り込んで行った。

 東京港区のコンテナ室の現場に着いた蓮と凛はそれぞれの車から降り、
迷路の様に並んだコンテナの僅かな隙間を歩き、2人バラバラに現場を捜索した。
その時、凛の耳に
「助けてくれぁ!」
と男の悲鳴が聞こえた。
さらに
「俺は何も知らない!ただ樟運佑妨曚錣譴燭世韻澄」
凛が良く耳を澄ますと今度は
「ええ!そうでしょうね!この樟運佑慮い瓠」
と言う声が聞こえた。凛は耳を研ぎ澄まし、
その2人の声が聞こえた方に慎重に拳銃を構え、歩いて行った。
 男の絶叫が狭いコンテナ室内に木霊した。
 凛はあわててその声の方に向かってひたすら拳銃を構え走り、
コンテナの隙間から抜け、四角いコンクリートの床で固められた
スペースに出ると人影が見えた。凛はすぐに黒髪で3つ網の女性の姿をその目に焼き付けた。
 そこに凛に遅れて蓮が現れ
「待てえっ!」
と大声で言うと、すぐにその場から逃げ出した女性の後を追ってまた別のコンテナの隙間に消えた。
 凛は倒れているX星人に雇われたスパイと思われる男性の所に駆け寄った。
 しかし男性はもう手遅れで、恐怖に歪み、真っ青な顔のまま完全に硬直し死んでいた。
男性の下腹部が裂けていた。
凛が触れると、死後硬直から間もないのに、
まるで冷凍庫に長時間入れたかのように
体温は触れた自分の手が瞬時に悴むほど冷たかった。
 恐らくノスフェラトゥに襲われ、凍死体にされたのだろうと容易に想像がついた。
息切れしたまま駆け寄って来た蓮は
「ハァ……ハァ……畜生!逃げられた!100m走には自信があったのに……」
凛は残念そうな表情で
「この男の人……死んだわ!」
蓮は舌打ちし
「また……ノスフェラトゥか?」
ここ最近、ロシアやカナダを始め、この日本の東京、
北海道のみならず、世界中で不可解な凍死体が頻繁に発見されるようになっていた。
 
 東京港区のコンテナ室の現場で蓮と凛が発見した男の凍死体の司法解剖の結果、
死因はやはり凍死であった。
内側の内臓が完全に凍り付き、外側の皮膚は柔らかい事が分かり、犯人は
ノスフェラトゥによるものであると断定された。
凍死した男性の現場付近から、樟運佑ら貰ったと思われる
レーザー銃や衣服等が押収された。
過去にも世界中で発見されたほとんどの凍死体から、
M塩基と樟運佑裡庁裡舛検出されている事から、ノスフェラトゥが、
樟運佑笋修離好僖い慮?鯢?犬覦戮了人だと推測された。
 逆にノスフェラトゥの青黒い塵と化した死体も
やはり世界中で多く発見されていた。
 つまりそれだけノスフェラトゥと樟運佑梁侘が
世界中で増加している事を裏付ける重要な証拠となった。
 もちろんその情報は世間では公表されていないが
世界中で頻発している謎の凍死事件や人間が塵になる怪事件のニュースを
見ていた人々は言い知れぬ不安を感じていた。

 謎の老人から勾玉をもらった洋子はすぐ蓮の家の近所にある
ローソンで醤油を買って蓮の家に戻った。
 謎の凍死事件や人間が塵になる怪事件のニュースを偶然、
蓮の自宅で見ていた友紀は
「なんだか……嫌な事件ね……」
と言いながらチャンネルを変えようと
リモコンを持とうとした時、ふと床に水色のカードが落ちているのが見えた。
友紀はそれを拾い上げると
「洋子ちゃん!これ!床に落ちていたわよ!」
と言うと買い物袋を置いた洋子の目の前にその水色のカードを差し出した。
洋子は
「あっ!大変!これをなくしたらヤバいわね!」
と言い、その水色のカードを受け取った。
友紀が机に置かれた水色のカードを見ると
「山根瑠璃」と書かれ 、その下には「B/AB型キメラ」と書かれていた。
友紀は首をかしげ
「キメラって?」
「血液型キメラの事よ!瑠璃ちゃんはね!B型が80%で
AB型が10%。彼女の血液に混じっているのよ!」
「不思議ね……」
と友紀。
洋子は寝室のふすまを指差し
「今夜!遅くなりそうだから……先に寝室に寝かせたの!
今!スヤスヤ寝ているわ!」
とヒソヒソ声で言うと、そのキメラカードを
大切そうにタンスの中にあるカードケースに入れた。
「それなら!血液占いは当てにならないわね!」
と友紀。
洋子は苦笑しながら
「そうね!A型かAB型どっちの占い結果を見たらいいのか分からないから!
将来!凄~く血液型占いに悩むわね!」
と答えた。
ちなみに山根瑠璃は尾崎と山根優香との間に
生まれた女の子で蓮とは腹違いの妹である。

(第19章に続く)