(第19章)餌場

こんにちは畑内です。
もうすぐで夕食の準備をしなければなりませんが、
ゴジラの自作小説を載せます。

(第19章)餌場

 小笠原怪獣ランドの極秘地下研究所『アルカドラン』。
 マークは自室で机に広げた小さな地図を睨みつけながら、
10分前に北村と言い争っていた事を思い出していた。
「また!勝手な事を!どうしてジラをあの海底洞窟から離したんですか?」
マークはタバコを吸いながら
「今!奴がどこまでM塩基を持つ生物を捕食できるのか?実験しているのさ!」
北村はあきれた様子で
「それでこの数ですか?」
と『47体』書かれた電気掲示板を指差した。
マークは天井を指差し
「大丈夫さ!奴の行き先は衛星から最新のテレガイガーカウンターで追跡するさ!」
ちなみにテレガイガーカウンターとは放射線遠隔探知機の事で、
放射線に生じるイオンを増幅させ電気出力パルスとして検出する事により、
放射線がないのか調べる事が出来るガイガーカウンターの発展版である。
 過去に大戸島の井戸やゴジラの足跡をはじめ、
ゴジラの被害を受けた東京で大けがを負った子供達の身体から微量の放射線が検出されていた。
 これを使えばゴジラやジラの放つ放射線を検出し、
どんなに深い海底でも彼らの位置を特定する事が出来る。
 ローランドはパソコンの画面の放射線の数値を見ながら
「現在!奴は謎の海底洞窟を通ってハワイ島に向かっています!」
マークはローランドの隣でパソコン画面を見ながら
「どこへ行く気だ?」
「まさか?このままアメリカのアラパチア山脈に行くつもりか?」
「しかし……仮にニューヨークのマッハタンを襲った記憶があるなら!
奴は帰巣本能でポリネシア諸島のムルロア環礁の方に向かう筈!」
「いや!まだ分からない!もしかしたら?
あとでポリネシア諸島のムルロア環礁の方へ向うかも知れない!」
マークは眉をひそめしばらく考え込んでいた。
ふと眉を顰めたマークの疲れてやつれた表情を見た北村は
「どうしたんですか?」
と尋ねた。
マークは
「いや!何でも無い!」
と彼は少し笑いながら答えた。
しばらく考え込んでいたマークはようやく我に返り、
立ち上がると大きく欠伸と背伸びをし、
「さて!仕事に行くか?」
と自室の茶色のドアを開け出て行った。

 プロレスの仕事でかなり疲れたのか洋子は蓮の自宅のソファに座りこみ
「ちょっと疲れたから寝ていいかしら?」
友紀は洋子の顔を見ながら
「えっ?いいわよ!どうしたの?顔色が悪いわよ……」
洋子は心配する友紀の顔をよそに
「大丈夫よ!」
と言うとソファーに寝転び少し眠った。
 洋子は夢を見た。
 最初に見たのは「1999」と書かれた新聞の切り抜きだった。
 それから空を見上げると真っ黒いコウモリの様な
怪獣の大群が騒がしい声を上げ、月をバックに飛んでいた。
 次に場面が変わり、トゲトゲした巨大な身体に
長い槍の様な触手を持つ怪獣と甲羅がトゲトゲした
亀の様なもう一匹の怪獣がお互いぶつかり合い戦っていた。
 町は怪獣が吐き出す光線や炎により、燃えていた。
 その激しい炎は次々と隣の民家を餌食にして行った。
 消防車も来ない……パトカーがあっちこっち走り回って行った。
 人々は悲鳴を上げ、逃げ惑い、恐怖に脅えていた。
 今、京都の町は地獄と化していた。
 浅い夢を見ていた洋子の耳に、誰かが話している声と電話が切れる音が聞こえたので、
洋子は静かに目を開け、ソファーから起き上がった。
友紀は
「洋子ちゃん!起きたのね!でも!今日、
蓮君も凛ちゃんも山岸君も用事があって来られなくなったって!」
洋子は
「そう……残念ね!」
と答えた。

 X星人がM塩基破壊兵器を一掃する為、ガイガンキングギドラ
を使用した大規模な空爆を開始するまであと24日の事。
 メキシコからアメリカ全体に海底地震が頻繁に発生していた。
国連はあの謎の海底洞窟を通って移動している
ジラに類似した巨大生物の仕業であると結論付けた。

 その日の午後11時57分頃、
アメリカ人の家族がアパラチア山脈の麓にある
キャンプ場でバーベキューを楽しんでいた。
 家族の中の兄弟が友達の女の子を連れて
近くの森でかくれんぼしていて遊んでいた。
10歳位のお兄ちゃんが
「もーいいーかい」
と呼びかけると隠れ場所を探している他の二人が
「まーだーだよ!」
と返事をした。
 その声は近くの山に反響して木霊となって何度も聞こえた。
 兄弟の友達の金髪の女の子はパパの鞄からこっそり持って来た
懐中電灯を手に持ち、隠れるのにぴったりな大きさのかなり狭い洞窟を見つけた。
 女の子は懐中電灯を手に持ち、洞窟の中へ入って行った。
女の子が真っ暗闇の中を懐中電灯で照らし歩いていると
「ガコン!」と何かを蹴った音が聞こえた。
女の子が恐る恐る懐中電灯を向けるとただの小さい石ころだった。
 女の子はほっと一安心し、再び歩き出した。
 しかしその先は大きな空洞だった。天井から赤い液体が流れていた。
この先は行き止まりらしい。魚のような臭いが鼻を突いた。
 女の子がふと後ろに下がり懐中電灯で洞窟全体を照らすと……
見えたのは無数の食べ掛けの怪獣の死体だった。
女の子は
「キャアアアッ!」
と悲鳴を上げ、一目散に元来た道に戻ろうと懐中電灯で周りを照らし、
暗い洞窟の中を無我夢中で走り回った。
その逃げている背中から恐怖を煽り立てる様に
「グルルッ!」
と獣の唸る声や何かを引きずる音、「バリバリバリ!」
と何かを噛み砕く音が立て続けに聞こえた。
 女の子は両耳を抑え、息を切らし走り、
ようやく日の光のある狭い出口から飛び出し、
大泣きしながら心配している家族の元へ帰って行った。

(第20章に続く)

では♪♪