(第21章)メタモルフォーゼ

ついでにもうひとつゴジラの自作小説を載せます。

(第21章)メタモルフォーゼ

米軍兵士達は大歓声を上げ、
「やったあっ!」
「これで奴もおしまいだ!」
「ジラは199年に倒した経験があるからな!」
「日本の地球防衛軍の手を借りなくても我々の戦力だけで十分だ!デスギドラによくは似てはいるが……
あの怪獣も何かと交戦して弱っていた様子だったし!これで一石二鳥だな!」
とお互い喜び合うのも束の間、黒い煙が晴れ、視界がはっきりしてくると、
そこには米軍の一斉攻撃を受けた筈のジラが直陸姿勢で立っていた。
しかも攻撃で負った傷さえも瞬時に新しい細胞が形成され、元通りに再生していた。
 24日前にCCIの海底カメラで見た姿とはかなり違っていた。
逆三角形の頭部にナイフの様な鋭い牙は確かに以前目撃した特徴と一緒だが、
全身デスギドラに似た茶色の鱗に覆われ、やがて身体を起こすと背びれが以前は
3列だったのに今度は5列に増えていた。
 しかも前方の5列の背びれの形はそれぞれ山羊の角のような形になっていて、
付け根の部分は太い管の様になっていた。
中央から後方の背びれは巨大で真っ赤な翼の形に変化していた。
 ジラの目もホオジロザメの様な何処を見ているのか分からない真っ黒な瞳ではなく、
真っ赤で、ジロリジロリと周りの様子を伺った。
 またジラに首を掴まれた3つ首と赤い翼に4つの足を持つ怪獣の姿も明らかになっていた。
茶色の身体に背中の真っ赤な翼はボロボロで穴だらけだった。
 その怪獣の頭部の立派な山羊の様な太い2本の角はへし折られ、
弱り切った鳴き声で吠え、哀れにも助けを求めていた。
ニューヨークの上空を飛行していた尾崎は
「この怪獣の体内を分析した結果、微量のアカツキシソウを確認!
どうやら……海底で生き残ったデスギドラの同族の
『レッサー・デスギドラ』のようです!奴らは数年前に東京に現れた
デスギドラより知能が低いので『餌』を求めて常に海底で大群を成して行動しています!」
と他の6機のドックファイターにその怪獣の分析結果をまとめた画像を送った。
別のドックファイターに乗っていたニックは
「なんだか……ジラの背びれの形と目がデスギドラの頭部と翼にそっくりだな……」
とつぶやいた。

 アメリカ・アパラチア山脈の麓の真っ暗闇の洞窟内にタトプロス博士の声が木霊した。
「来て下さい!皆さん!」
4人が駆けつけると地面の裂け目から流れ出ている赤黒いゲル状の物質が見えた。
「これは?」
と神宮寺博士。
「さあ……分かりません……」
とタトプロス博士。
それからタトプロス博士はそれをスプーンですくい取り、試験管になみなみと注いだ。
神宮寺博士は
「少しいいですか?」
と断り、タトプロス博士から試験管を受け取ると、2回軽く振った。
赤黒いゲル状の物質の中に僅かに青黒い液体が混じっているのが見えた。
「早速!帰ってこの物質を分析してみよう!」
宮司博士はそのゲル状の物質をポケットにしまった。
 タトプロス博士がナイフで怪獣の白骨死体の右太股の骨にナイフで小さく穴を開けると、
骨の内部はスカスカで穴からは黒い塵がサラサラと流れ出た。
 タトプロス博士は試験管で研究サンプル用に採取した。

 ジラが直陸姿勢でほぼ無傷で立っている様子を目の当たりに
した米軍兵士は
「そんな筈は……もう一度だ!」
と大声を上げ、ジラの周りを飛んでいたヘリや戦闘機は再びアサルトライフルや爆弾で攻撃した。
 さっきよりも大きい爆音が空気を激しく振動し、黒い煙と火柱が立ち上った。
 しかし米軍がジラにいくら攻撃を仕掛けても、瞬時に新しい細胞が形成され、
たちまち元通りに再生してしまった。
 一番米軍のライフルや爆弾でダメージを受けていたのは
ジラに首を掴まれて動くに動けないレッサー・デスギドラの方だった。
米軍の軍曹が
「どうなっているんだ……」
と驚きを隠せない様子で見ていた時、突然、ロウアー・マッハタンの近海から
「グオォォッ!」
とジラとは別の咆哮が聞こえた。日本のゴジラだった。
 ゴジラはジラのいるロウアー・マッハタンに向かって海の上を
「ザバザバ」波を立たせながら移動した。
 ジラもトライベッカ方面から方向を変え、
弱ったレッサー・デスギドラをニューヨークの道路に引きずりながら、
ゴジラが上陸したロウァー・マッハタンの方へ向かい、そこでゴジラ待ち伏せした。
 ついに出会った2体はお互い睨み合い、こう着状態に陥った。

 美雪はマークに付き添われて小笠原怪獣ランドの地下研究所
『アルカドラン』に案内されていた。
 マークはパソコンをいじり、赤黒いゲル状の物質の入った試験管の写真と、
巨大なジラに類似した怪獣の抜け殻を映し出した。
美雪は信じられない顔で
「まさか?」
「これらはハワイ島の洞窟内で発見されたものだ!」
美雪はジラに類似した怪獣の抜け殻の写真をじっくりと観察した。
 逆三角形の頭部に赤黒い歯茎からワニかサメに良く似た
巨大なナイフの様な鋭い牙がびっしりと並んで生えており、
背中には透明な翼の形をした背びれが生えていた。
尻尾は鞭のように長くかなり長かった。
 全長は約80mもあった。

(第22章に続く)

では♪♪