(第26章)模倣

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第26章)模倣

 ジラが起こしたと思われる震度5強の大地震がようやく収まり、
ゴジラは大怪我した胸を押さえ、フラフラと立ち上がった。
 その時、たまたまゴジラの表情が見える所に飛んでいた
ニックは一瞬ゴジラが笑っているように見えた。
思わずニックは
「えっ?今?笑った?」
「どうした?」
と尾崎の無線が聞こえた。
「いや!なんでもない!」
ニックは心の中で
(まさかな……あんな重傷を負って笑う筈が……)
と自分の疑惑を否定していた。
 また別の角度でゴジラの表情を見ていたジェレルも動揺していた。
何故ならゴジラが一瞬だけ笑ったように見えたからである。
 しかしゴジラは静かに海へ去って行った。

 小笠原怪獣ランドの地下研究所『アルカドラン』。
 北村は小さい声でぶつぶつと資料を読んでいた。
「その赤黒いゲル状の液体中から採取した原始的な細胞の一部から、
かつて地球の白亜紀を支配していた翼竜や恐竜のDNAが無数に検出された。
また月経らしき血液も混じっている事から、グランギドラの個体は『雌』だと
すでに科学的に証明済みである。
また青色のゲル状の物質はケーニッヒギドラの身体から、
赤黒いゲル状の物質は雌のグランギドラの身体からそれぞれ分泌されているようだ。
引き続きこの2つのゲル状の物質の調査は続けられている。」
北村は深い呼吸の後、しばらく無言のまま物思いに耽り、それからおもむろに口を開いた。
「つまり月から復活したケーニッヒギドラはこのゲル状の物質に
含まれる多種多様の生物の原始的な細胞のDNAを利用して人間に化けたと?」
「恐らく……ただ宇宙怪獣であるケーニッヒギドラのDNA本体が何故?
ヒトゲノムに変化したのかが問題だな!いや!彼は多様なゲノムを理解出来たのか??」
ローランドもため息を付き
「実際1組の染色体のヒトゲノムのDNA配列はアデニン、グアニン、シトシン、チミンを含む、
30億対の塩基から成っているから……」
「おまけに3万5000の遺伝子からもなっている。」
「さらに、体のサイズの違いだ。彼が覇王圭介と
言う一人の立派な人間になるまでの道のりはかなり長いな……」
「確かに君の言う通りだ!あくまでも私の勝手な想像だが……
雌のグランギドラの幼体を例に挙げれば!
グランギドラの幼体は1億5千年前の白亜紀に飛来し、
当時、地球を支配していた数多くの恐竜や翼竜を捕食し、
その捕食した恐竜のあらゆる細胞を原始的な細胞に変態させ、
何らかの方法で自らの細胞を変化させ、正確に模倣した」
と言い、ローランドは、3つの首を持ち、全身が黄金で、
翼竜の形をした翼と恐竜の皮膚と鱗らしきものを持つ、キングギドラのスケッチを見せた。
「自分の部屋から持って来た!どうだ!我ながらうまいだろ?」
北村は無言で頷いた。
ローランドはさらに大きな声で
「もし宇宙怪獣のバガンもその能力を持っていたとしたら?」
「それならそのバガンジュラ紀辺りに地球に飛来し、
恐竜や翼竜を捕食している内に、オスのバガンはイグアナ等の恐竜の特徴を模倣して
ゴジラの形態になり、バガンのメスも翼竜
恐らくプテラノドンの特徴を模倣してラドンの形態にそれぞれ変化したと推測することは可能だな?」
「だとしたら?このバガンの変異体は、恐竜や翼竜が絶滅しても、
地球の自然環境のプロセスを利用して、
徐々に自ら捕食した細胞に含まれているDNAを定着させ、地球の環境に適応した。
そして人類が文明や水爆、原爆を作り出した現在に至るまで、
バガンの変異体はゴジララドンの形態を維持したまま適応し、種を存続出来たと言う訳ですね!」
「そう言う事だ!ゴジララドンは模倣した恐竜や翼竜
細胞組織から手に入れたDNAを持っている!
だから『卵』からミニラやベビーゴジラが生まれるんだ!」
「恐竜も翼竜も卵から生まれるからな!」
「じゃ?あの雌のグランギドラの個体は?」
「分からない……ただ月経らしき血が混じっているとなると……」
「きっと!他の惑星でこの地球と同じように哺乳類で胎生で
生まれる生物を補食した際にその生物の細胞に含まれるDNAを手に入れたからでは?」
「成程!実際ゴジラと同系のバガンと呼ばれる宇宙怪獣は、
何らかの理由で大量の核エネルギーを吸収したキングギドラ
突然変異して大量発生したという可能性が極めて高い事が分かっているからな!
今後も詳しいギドラとバガンの関係調査は続けられるだろう……
もしかしたら?X星人が人工的に作り出した
寄生生物の『アカツキシソウ』と『アオシソウ』とも深い繋がりがあるのかもしれない!」
と腕を組み、楽しげな表情で言った。

 洋子は謎の老人から貰った勾玉をネックレスにして首に掛け
(この勾玉をどうしようか?)
(凛ちゃんと蓮君に相談しようか?)
と真剣に悩んでいた。
勾玉は時折、青緑色に妖しく発光するので、洋子は気味が悪くなり、
辺りをキョロキョロ見回すとコンビニのゴミ箱が目に入った。
 洋子は周りに見ている人がいないか確かめると、
すぐに首から勾玉を外し、コンビニのゴミ箱の蓋を開け、捨てようとした。
 そこにたまたま友紀が通りかかるのがコンビニの駐車場の脇から見えたので、
大慌てで勾玉をジーパンの後ろに隠した。
しかし両手の中でまるで何かを求める様に青緑色に光るのでどうしてもバレバレだった。
それに気付いた友紀は
「こんにちは!洋子ちゃん!何それ?」
洋子はなるべく平静を装い
「何でも無い……ただジーパンの
ポケットにレシートのゴミがあったから……」
「でも!その洋子ちゃんの持っている勾玉!凄く綺麗ね!」
「うーん」と蚊の無く声で洋子は返事をした。
「どうしたの?元気が無いわね……またあの変なお爺さんに何か言われたの?」
洋子は無理やり作り笑いを浮かべ
「全然!大丈夫よ!」
と答えた。

(第27章に続く)

では♪♪