(第28章)ウリエル・バラード

おはようございます畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第28章)ウリエル・バラード

 自宅に帰って来た洋子に、高校生の頃の同級生から電話が掛って来たので、
洋子は楽しそうに高校生の頃の同級生と話していた。
「ねえ?ポイントブレザンドのモスマンって知ってる?」
電話の主の高校生の頃の同級生から
「うん!」
と返事が返って来た。
その瞬間、急に
「キィィィィィッ!」
と受話器から雑音が入った。
彼女は耳が痛くなり、受話器を耳から話した。
それから洋子が恐る恐る受話器を耳に当てると
友達の声はいつの間にか聞こえなくなっていた。
代わりに太い男の声が聞こえて来た。
「気を付けろ……気を付けろ……」
と酷く太い男の声が聞こえた。
洋子は苦笑し
「まさか?からかっているの?」
さらに太い男の声が続いた。
「邪悪な勾玉!私は全てを見ている!恐れるな!恐れてはならぬ!
『朱雀』の魂を持つ怪獣に気を付けろ!友紀と言う女に災いが降りかかる……」
その太い男の声を聞いた洋子の顔色が見る見る青白くなり、表情が引き攣った。
「恐れるな!恐れてはならぬ!さすれば世界は破滅する!」
洋子は
「誰?誰なの?友紀ちゃんの事を知っているの?」
と幾ら尋ねても返ってくる答えは
「恐れるな!恐れてはならぬ!『朱雀』の魂を持つ怪獣は
竜の仮面を被り、翼と脚を持っている……恐れるな!
恐れてはならぬ!友紀と言う女に災いが降りかかる!早く取り戻せ!」
と言う言葉の何重にも及ぶ繰り返しだけだった。
 さらに恐ろしい事に、受話器を耳に当てながらふと窓を見た途端、
髪の毛や全身の産毛が一気に逆立つのを感じ、激しい金縛りと戦慄に襲われた。
窓の外に何かいた!何なのか分からないが……
窓の中央に血のように真っ赤な不気味な2つの目が暗い木の木陰に見えた。
それから
「恐れるな!恐れてはならぬ!」
と言う言葉を最後に声が急に止んだ。
 洋子はその場に凍りついて動けないまま、
窓の中央に光る血のように真っ赤な両目に魅入られていた。
それからひときわ大きな声で電話の声が
「私の名は『ウリエル・バラード』!!」
と名乗ると
「プーッ!」
と言う発信音が聞こえた。
電話が切れたのだ……それから窓の中央に浮いていた血のように真っ赤な2つの目玉は消え、
今度はオレンジ色の巨大な1本角と、赤と黄色に縁取られた
稲妻模様の翼らしきものが一瞬だけ見えた。
 木陰の闇に紛れて正体は分らなかったが全身の大きさは3mはあったと思った。
その正体不明の『何か』はまるでフクロウのように音も無く翼をはばたかせ、
窓から静かに闇に向かって飛び去って行った。
 その途端、一気に全身の激しい金縛りから解放され、
洋子は額に冷や汗をかき、力無くベタリとフローリングの床に座り込んでしまった。

 真鶴特殊生物病院に急患が運ばれて来た。
 タンカーの上には酸素マスクを付け、メガネを掛けた女性がいた。
真鶴でミニラの研究していた心臓専門の外科医でミュータントの若夏知世である。
 たまたま同じ真鶴の病院で働いていた看護婦の話によると彼女に
「右足が腫れてとても痛い!」
と相談されてから30分後、足の表皮の血管の腫れが風船のように酷くなり、
しかも右足の一部に細胞壊死が始まっていたので、
看護婦は大慌てで真鶴特殊生物病院に連絡を取り、ここに運ばれたのである。
 精密検査の結果、病の原因はA群β溶血性レンサ球菌による
「劇症型溶連感染症」つまり壊死性筋膜炎と診断された。
 彼女の容体はかなり危険で、治療が遅れれば24時間以内に
壊死が全身に広がり確実に死に至る。
 数年前にGメ―サを使ったレントゲンの治療法を開発し、
ノーベル賞を受賞した名医の内田祥郷医師は冷静にペニシリン
抗生物質を大量に投与した。
しかし幾ら大量に投与してもほとんど効果が無く、症状は治まらなかった。
この事から祥郷は「ビブリオ・バル二フィカス」の感染も疑い、
Gメ―サーを照射して患部を治療する方法も試そうとしたが、
他の医師から彼女の体内にあるM塩基が破壊されて死に至る危険性が高いと
言われその方法は出来なかった。
 実際、数年前に東京やアメリカで大流行したデストロイア・ウィルスに感染した
ミュータント達も、M塩基が原因で治療が出来ず、多くの犠牲者を出していた。
 このままでは右足切断も考えなければならなかった。
 その時、祥郷は国連が2日前に緊急に支給された
G塩基を利用して作り出した新開発の抗生物質の存在を思い出し、
最後の望みを懸け、迷う暇も無くその謎の抗生物質を大量に投与した。
 結果、彼女の体内に巣食っていたA群β溶血性レンサ球菌は全て死滅し、症状は収まった。
それから壊死した右足の皮膚の一部を切除し、彼女は無事一般病棟に移された。

 地球防衛軍本部では再び緊急会議が行われていた。
 アヤノはヘッドホンを掛け、
NASAの宇宙ステーションに届いた樟運妖?官の通信を再生します!」
脇に控えていたジェレルがスピーカーのスイッチを押した。
「地球の諸君……我々は樟運妖?官である……ガ……ガ……
最近……『ノスフェラトゥ』の反乱軍が樟韻箴惑星から彼ら
が……ガ……M塩基破壊兵器を持って撤退し……ガ……
地球に向かって移動中との情報が……ガ……入っている……ガ……
CCIと名乗る地球人のスパイも捕えている……ガ……現在!
『M塩基破壊兵器撃滅部隊』は大量の量産型
ガイガンキングギドラを主力兵器として用意している!……以上!」
とまで聞こえると通信は途絶えた。
 他の地球防衛軍関係者達は蜂の巣を突いた様に騒ぎ始めた。
地球防衛軍の波川司令は両腕を組み
「やはり……X星人との全面戦争は避けられないか……」
それからニックは
「すでに一か月前から各国政府の判断で多くの人々が
地下の対怪獣・宇宙人シェルターに避難しています!」
新しい国連事務総長
「そろそろ日本も地下に……」
グレンは
「もうすでに!避難勧告は出されています!」
「現在!樟運佑離泪供璽轡奪廚半型船はこちらに向かいつつあります!」
「間に合うだろうか?」
と東京品川のノスフェラトゥの殺人事件の現場から帰って来た蓮が国連事務総長に聞いた。
「恐らく…間に合うだろう……とにかく5年前に建設されたあの隔離防壁も展開して
ノスフェラトゥ』達のバイオテロにも備えなければ!事態はあまりにも深刻だ!あと24日!」
と深刻な表情で言った。
それから会議は終了した。

(第29章に続く)

今日は健康診断だぁ~早く職場に行かなきゃ!
では♪♪