(第34章)続・生と死とは?(後編)

こんばんわ夜遅いですが、
ゴジラの自作小説を載せます。

(第34章)続・生と死とは?(後編)

 ヘリの中の人間大のカプセルの中で眠っていた美雪はまだ昔の出来事を夢で見ていた。
 夢の中ではミニラが死神デスギドラに異論を唱え始めた。
「僕の友達のあの子は一人しかいないんだ!」
「そう!あたしも一人しかいない……だから……」
しかし死神デスギドラは
「人間は『生命』と『死』と言う『見えない力』から目を背けて!
ただ眼に見える物質だけにすがりつき!常に自分を偽り続けながら存在している!」
美雪はその夢の中でふと
「違う!違うわ!」
と必死に否定する自分の姿に気が付いた。
しかし彼女の声も虚しく死神デスギドラは容赦無く
「そんな彼らを本当に守りたいと思うのかな?
人間に恋するケーニッヒと同罪だな!迷妄に落ちたものよ!」
その時、ケーニッヒギドラがひときわ大きな声で
「善い人間は暗い衝動に駆られても!正道を忘れる事は無いものだ!
俺は覇王圭介!ケーニッヒギドラだ!」
やがてそのケーニッヒの声が彼女の耳から徐々に遠退いて行き、目の前が真っ暗になった。
それから
「ハッ!」
とその強化ガラスのカプセルの中で目が覚めた。
 美雪はしばらく茫然とした顔で僅かに聞こえる
「パタパタパタ!」と言うヘリのプロペラ音を聞いていた。
やがて
「また昔の夢……ここは?ヘリの中?」
催眠ガスか何かで眠らされていたのだろうか?まだ目が覚めず、寝ぼけ眼でつぶやいた。

数ヶ月前。
アダムこと、山岸雄介は、白いTシャツ姿でベッドに寝転んだまま自信に満ちた声で
「ロシアのツングースのゴダイトヒの幹から見つかった宇宙植物はアオシソウなんだって!」
 その隣に凛は同じく白いTシャツ一枚で寝転んだまま、昨日
の新聞に載せられた巨大な氷の塊の中にあるアオシソウの種子と胞子の写真を見ながら
「確かこれって?南極のボストワーク湖の地下3450mから
取り出された氷の塊から見つかったのよね?」
「そうらしいよ……」
と山岸は言うと、寝ながら凛の唇にキスをした。
「う~ん……と言う事は、南極の氷の中に長い間、閉じ込められていたのね!」
山岸は凛の顔を見つめながら
「僕達みたいに?」
凛は途端にクスクス笑い出し
「も~う~何言っているのよ?」
つられて山岸もクスクス笑いながら
「それで!その南極調査チームがアオシソウの胞子を分析したら?G塩基が出たらしいよ!」
「G塩基?凄い発見ね!」
「だからさ!そのG塩基を持ったアオシソウが宇宙から飛来していたんだね!」
「なるほどね……」
と凛は言い、山岸の胸に手を置いた。山岸は考えながら
「でも……地球温暖化で南極の氷が解けて……もしかしたら?
地上から生えてきたり、海に流れて出てくるかも?」
凛は山岸に顔を寄せ
「ねえ……そんな話よりも!アニメの話をしようよ!」
しかし山岸は一度凛から離れ、ベッドの上に座り込み
「せっかく新聞で見た大ニュースなんだ!僕は君に是非話したいんだ!」
凛は苦笑しながら自分の右腕を枕にすると
「分ったわ……どうぞ!」
「それでね!アオシソウの年代を測定したら!実は200万年前に既に存在していたんだって!」
「そう言えば?25億年前の先カンブリア紀や1億5000年前のジュラ紀と……
えーと?あとは1億3000年前と6500万年前の白亜紀の地層や
200万年前の新生代三紀の地層か
らも発見されていたっけ?」
山岸は感心した様子で
「凄いね……そこまでは僕も知らなかったな……」
凛は
「じゃ!そのもう話はおしまい!」
と言うとベッドから起き上がり、床に落ちていた下着に手を伸ばした。
その時、山岸は大きくため息をつき、
「でも?最近の新聞とか見ていると……いつも緊張を煽るような記事ばかりが載る事が続いて……
精神的に辛いんだ……だから!君が仕事合間に来てくれると僕はとても嬉しいんだ!」
その言葉を聞いた凛は山岸の顔を見てにっこりと笑った。
山岸は真剣な眼差しで
「僕は君の事が知りたい……もしもお互い結婚する事になったら隠し事はしたくないんだ……」
「もう全部知ってるじゃない。他にあたしの何を知りたいの?」
と凛は笑って、持っていた下着をポンと山岸に投げつけた。
山岸はまじめに
「全てさ!なんで君ばかりが世界中のテロリスト達に狙われるのか?」
凛はうつむいた。
「それは話せないわ……」
「どうして?」
「これ以上!あなたをテロ事件に巻き込みたくないからよ!」
「それじゃ?もし結婚して子供が出来たら?僕達はどう暮らして行けばいい?」
山岸は急にベッドから立ち上がり、
「突然テロリストが僕達の子供を誘拐しにここまで来たら?僕はどうすればいい?」
「それは……警察とかあたし達国連に任せれば大丈夫よ!」
「いや!君の正体も何も知らない僕は心配で眠れなくなる!それだけは嫌だ!」
「あたしだって!普通に暮らしたいわよ!でも……それが難しいの!」
「なんで??君が高校生の頃に中国人のテロリストが僕の家に来て、君を誘拐した出来事があったよね?
その当時、僕はなんで君が狙われたのか全く分からなかった!だから何もできなかった!
君が心を開いてくれないと僕は君を守れない!あんな事はもう二度とゴメンだよ!」
と片手を振りまわし、思わず怒鳴り声を上げた。
その山岸の激昂ぶりに凛は動揺し、どう言葉を返したらいいのか分からず、
再びベッドの上に座り込み、泣き出した。
 山岸は自分が声を荒げた事に気づき、凛の隣に座り抱き寄せると
「御免……つい怒鳴っちゃって……今の僕達は結婚前提で付き合っているけど……
君の事情が分らなきゃ僕は君を守れるか不安でたまらないんだ!本当にゴメン……」
凛は目から滲んだ涙を右手で何度もぬぐいながらかすれた声で
「いいのよ……気持ちは凄く分かるわ……でも考えさせて……」
凛は葛藤する山岸の感情を今は体で受け止めてやるほかなかった。
 
(第35章に続く)

では♪♪