(第33章)続・生と死とは?(前編)

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第33章)続・生と死とは?(前編)

 美雪はヘリの中の人間大のカプセルの中で眠っていた。
 眠っていた美雪はまた数年前の出来事を夢で見ていた。
それはサラジア共和国のエージェントに腹部を撃たれ、生死の境を彷徨っている内に、
現実か空想か区別が付かない怪獣世界に迷い込んだ時の出来事である。
 その怪獣世界では4体の怪獣が炎に包まれた東京の街並みをバックに激しい戦いを続けながら、
全身が茶色で3つ首と赤い翼を持つ怪獣、死神デスギドラが語り出した。
(人間は『科学』と言う道具で『生命』を解明しようとする。)
(しかし!目に見える物しか認識しようとしない奴らには)
(『生と死』は完全に理解する事が出来ないのだ!)
夢の中で美雪はそっと
「本当にそうかしら?」
とつぶやいた。
 それから場面が変わり、東京の街の瓦礫の下に倒れていた黄金のケーニッヒギドラが
(『生命』はたった一つしかない……失うと二度と帰って来ない……)
死神デスギドラは高笑いを始め、瓦礫の下敷きになって倒れているケーニッヒギドラを蹴り飛ばし、
(ハハハハッ!そうかな?それは人間が勝手に考えた解釈に過ぎぬ!)
(『生命』とはごくありふれた存在でありながら全く知られていない!)
(『生命』そのものが見えない力なのだ!『死』も同様だ!)
再び夢の中で美雪は
「あの時は……怖くて深く考える事が出来無かったわね!」
 さらに死神デスギドラは
(『生命』とは肉体に備わるだけではないだろう?)
「確かにそうかも知れない……」
と美雪。
(どんなに捨てようとしても……)
と死神デスギドラ。
「そうよ……」
と美雪。
(『生命』を捨て去る事は実は不可能なのだよ!『死』も同じだ!
つまり『生と死』は同一なのだ!人間達を見よ!
彼らは死んでもまた生まれて来る!)
ケーニッヒギドラは
(では?人の心とは何だ!)
死神デスギドラは
(無意味なものだ!)
美雪は思わず
「違うわ!」
と反論した。
ケーニッヒギドラは
(人の心こそ!『生命』そのものじゃないのか?)
その時、全身、黒い体に青白い背びれを持つゴジラ
(『本能』そのものが!『生命』だ!)
死神デスギドラは笑い
(生も死も見えない力なのだから!幾らでも解釈が出来る!
人の心が『生命』そのものなら!肉体が死んでも『生命』を失った事にならない!
そうだろ?『本能』も同じだ!それにしても!肉体など幾らでも生まれて来る!
『生』も『死』も同じだと貴様達も言っている事になる!)
と死神デスギドラは主張した。

 地球防衛軍本部の『特殊生物犯罪調査部』の自分の部屋で、
凛はパソコンの画面に向き合い、極秘のアクセスコードを用いて、
ある企業の極秘文章が記載されているページにアクセスしていた。
しばらくして
「ガガガ……ピーピー」
と音を立て、2つのあるデータファイルが現れた。
凛は
「うーん!ママの手掛かりは無いわね!」
と思いつつも2つのファイルの内、
ノスフェラトゥとアオシソウに関する中間報告書」
と題されたファイルを開いた。
そのファイルにはびっちりと細かい文章で書かれた
ノスフェラトゥは元々X星人によって作られた人工種族である。
知能を持った生物で、なおかつ寄生しないと能力は発揮できない。
しかもメスは女性に、オスは男性にしか寄生出来ない。
宿主のいない環境では植物型(主に胞子や種子)となって生命を保つが、繁殖は不可能。
そのいずれかの植物型の状態で宿主の知能を持った生物の死体を求めて宇宙空間をさまよう。
宿主の死体を見つけた粒状の胞子はクリスタル状の種子に変化するか、
もしくは種子の状態のまま七色の花を咲かせる。
それから青黒いゲル状の液体に包まれた根を伸ばし、
死体の体内に侵入し、宿主のあらゆる細胞を原始的な細胞に変態させ、
皮膚や姿形を極めて正確に模倣し、寄生する。」
とまで読んだ時、ふと凛の脳裏に
「でも……人間の姿形や皮膚を模倣するのにわざわざ
人間の細胞を原始的な細胞に戻す必要性があるのかしら?
まあ!あたしは生物学の専門知識は良く知らないけど……」
と疑問を抱きつつもさらに文章の続きを読んだ。
「Ⅹ星人の支配下では、どこか別の惑星の知的生物の死体に寄生させていたようだ。
繁殖は宿主の人間の細胞組織からDNAを手に入れ、人間の生殖能力を模倣し、繁殖する。
人間の女性に寄生すればその人間の女性の身体を使って子供を産む事が出来る。
しかし寄生した男女が交配を続ければ、地球の自然環境
のプロセスによって、徐々に宇宙人の血は薄くなる。
Ⅹ星人から逃れた時点でオスの数は激変していたため、
地球人に寄生している男女の比率も極端に異なる。
つまり、ノスフェラトゥはいずれ人間と同化する運命にある。
 また一部のノスフェラトゥ達は、人間に寄生せず繁殖する
肉体に変えようとウィルス実験を試みたが、失敗している。
 Ⅹ星人に、別の惑星で平和に暮らしていた自分達を人工種族の実験台
にされた事を深く恨んでいるものが多く、現在Ⅹ星人に反旗を翻す者達が後を絶たない。
 またアオシソウは死亡するとアカツキシソウとなり、本来の
ノスフェラトゥ」に成れず、猛毒のオレンジのマグマ状の物体となる。
生命力の残っている場合は、暁色か黄金と漆黒の混じったアメーバになる事が分かっている。
 ゴジラキングギドラとはかなり深いかかわりがあるようだが……いまだ調査中である。」
そこまで読んだが、凛はなかなか自分の母親の手掛かりを掴めない事に苛立ちを募らせていた。
 それから凛はまた別の「アダムとイヴに関する極秘報告書」
を開こうとしたが、パスワードが必要で中を見る事が出来なかった。
 とうとう凛は諦め、また次の日にその
「アダムとイヴに関する報告書」のパスワードを詳しく調べようと、
ファイルを自分のパソコンに保存し、アクセスコードの入ったCDディスクをパソコンから取り出し、
厳重にカギがかけられた机にしまった。
 凛は部屋の天井を見ながら
「うちのアダムは何してるのかしら?」
とつぶやいてパソコンの電源を切った。

(第34章に続く)

では♪♪