(第38章)嘘と真実

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第38章)嘘と真実

 地球防衛軍・特殊犯罪調査部。
 蓮は自分の部屋で、最近立ち上がった医療機関『帝洋パシフィック製薬』について調べていた。
 この医療機関は数年前に帝洋コルツェンとパシフィック製薬が合併し、
『帝洋パシフィック製薬』になった。
 片方の『帝洋コルツェン』は経済不況で経営が悪化しており、
かなり大勢の関係者が派遣切りやリストラでやめさせられたようだ。
 一方、『パシフィック製薬』も、
ファロー島で捕まえたキングコングが逃げ出し東京中も暴れまわると言う事故により、
資金はたちまち借金で底をつき、経営は困難を極めていた。
だからこの2つの企業は不況を乗り越える為に合併したと言うのが主な理由である。
 実際、裏では政府やあのノスフェラトゥのMWM社が関わっているに違いない。
だからこそ蓮は、高校生の頃大ゲンカをした凛にせめてもの罪の償いを果たすべく、
この製薬会社を調べれば彼女の母親の行方が分かる筈だと確信していた。
 その時、ふと思い立ち、数時間前にアメリカのアパラチア山脈
現れたジラがどうなったのか気になり、
自分の部屋のテレビを点けると、丁度、日東テレビのニュースには
音無美雪の姉で最近ゴードン上級大佐と結婚した音無杏奈が午後のニュースを伝えていた。
「今朝午前6時30分頃、ロシアか中国、アメリカ、
日本のいずれかの国に特殊な隕石らしき物体が落下したもようです!
落下は確認されておらず、国連が調査中でまだ情報が入っていませんが、
Ⅹ星人が送り込んだ尖兵ではないかと言う見方が強まっています!
世界中の地球防衛軍は警戒を強めています!
今後の情報に注意してください!
何か不審な物体を発見した際は……国連に連絡し!
一切その物体には触れないでください!緊急用アドレスは…」
「そうか……いよいよだな!」
と蓮はつぶやきながらテーブルに肘を乗せ、ため息をついた。
それから杏奈は
「次のニュースです!」
「さあ……出るかな?」
と蓮は期待した顔でテレビに釘付けになった。
「夕方に出現したジラに、米軍はクラスター爆弾による攻撃を開始しましたが、
ジラは謎の虹色の光と共に姿を消しました!
また再びジラがニューヨークやアパラチア山脈に出現する危険性が高いと判断され、
新たに地球防衛軍は警戒を強めています!」

 警視庁の地下駐車場に車を止め、警視庁の中へ入って行った
凛は、『特殊犯罪調査部』の手帳とゴジラの形をしたバッジを見せ
「特殊生物犯罪調査部の音無凛です!」
警視庁関係者は
「はい!連絡はこちらに来ています!」
と言い、彼女を老人の所に案内した。
 彼女は尋問室のガラス越しに、逮捕された坊主頭の老人を見据えた。
老人は静かな口調で
「私の顔を見て何を感じるかね?」
「あなたは……友達にウソをついています!」
凛も静かな口調でも怒りを抑えているように見えた。
「いつ?気付いたかな?」
「友達から電話で聞いた時よ!」
「答えを言ってごらん!」
「それは……あなたとアトランティス大陸の人々とは無関係だと言う事よ!」
「そうとも……私とアトランティスとは関係は無い……」
「あなたは最近この地球に来たノスフェラトゥと言う宇宙人よ!」
「嘘と真実を見極める自信があるかね?」
途端に凛は怒りに顔を歪め
「あたしの友達をストーカーして嘘を言って!不安と恐怖を煽って!何のつもり!」
「ストーカー?はて?宇宙出身故……その言葉の意味が分らぬが……彼女を試したのよ!」
「なんで??試したの?」
「先程!言った様に彼女は嘘と真実を見極められるかどうか、彼女が怪獣の血筋を持つ君達の様に
空想と現実の狭間の世界に耐えうる存在なのか?それを試させて貰った!」
「目的は?」
と凛は質問した。
しかし老人は
「何だと思うかね?」
凛は静かに
ノスフェラトゥの反乱軍やⅩ星人に付いて何か知っているの?」
「もちろん知っている!Ⅹ星人の過去についてもね!これから君に言う話が真実だ!」
老人は語りだした。
「かつて……Ⅹ星では宇宙人同士の戦争の結果、都市は廃墟と化し、
現在は地下に巨大都市を作っている!
 僅かに生き残った彼らは、Ⅹ星に自生していたアオシソウの遺伝子を基に、
超小型テレパシー受信機の役割を果たすM塩基を作り、
自らに組み込む事によって感情を抑制し、統制官の英知に従う!
そうする事で戦争を起こせなくした筈だった。
 しかし歴代統制官達は権力におぼれ、その支配技術を
他の惑星の宇宙人の軍事企業に売り飛ばし!
さらに悪用して、他の惑星に生息する怪獣や地球人や私達を、
自分達の家畜や生物兵器として利用を始めた。
 だから我々ノスフェラトゥはごく最近、Ⅹ星人によって
生物兵器に改造されていない野生のギドラやバガンを利用して反逆を起こした……」
しかし凛はまだその老人の話が信用出来ず、疑惑の目でその老人を睨みつけていた。

 洋子は夕食を買いに近くのコンビニに出かけていた。
 夕食のおかずを幾つか買い、レジで会計をすませていると、
すぐ隣に外国人とのハーフのような40代位の男性が本を一冊レジのカウンターに置いた。
髪は金髪だった。
 突然、店の自動ドアが開き、覆面の男女がロシア製の拳銃トカレフを店員と洋子に向け、
「金を出せ!」
「出さないと撃ち殺すわよ!」
と脅した。
2人組のコンビニ強盗である。
洋子と店員の2人は背筋が凍りついた。
 しかし洋子の隣の40代の男性は何事も無い様子で、
手にしていた旅行関連の本を開き、拳銃を向けて脅しつけている
2人組の強盗に少年の様な笑顔を浮かべ、こう言った。
「結婚式を挙げるとしたらさ……どこの教会がいい?」

(第39章に続く)

では♪♪