(第37章)空想と現実の狭間「怪獣世界」

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第37章)空想と現実の狭間「怪獣世界」

JBVテレビのスタジオで蓮の母親の山根優香の質問に対し、分子生物学者は
「例えば……特殊な環境ホルモン!つまり内分泌かく乱物質ですが、
過去の場合よりそれが大きな規模で作用していると疑われるのです!」
また別の分子生物学者は
ただ普通の生物が怪獣化するだけでは無く!
我々人類と怪獣の境界線が崩壊している可能性が高いわけです!」
と答えた。
「その我々人類と怪獣の境界線の崩壊とは?具体的にどういうのでしょう?」
「つまり……例えばの話ですが……人間に変身する
怪獣が急増する可能性が高いとか?」
「それはいくらなんでも飛躍しすぎているが……可能性ゼロでは無いだろう……」
「つまり?地球生物の種そのものが歪み始めている訳ですね……」
と優香は言った。
「その通りです!」
「しかし!怪獣が人間に化けるなんて……」
そこで優香は分子生物学者の他に、ゲストに招いた心理学者の方に視線を移し、
「最近心理学者や精神科医が注目している
『怪獣世界』とはどんな世界なんでしょうか?」
心理学者は
「この世界を最初に見たと報告されたのは、数年前に、ある軽い失語症
不眠症に悩んでいた患者の治療を行った精神科医からのものです!」
「確か?その人は地球防衛軍関係の方ですね?」
心理学者は無言で頷いた。
それから精神科医
「しかしながら……その怪獣世界と呼ばれている例の現実と空想の狭間の世界とは、
事故等が原因で意識不明になった際に、 脳内麻酔が分泌され、
その麻酔の作用で不思議な体験をしたものでしょう!」
優香は興味津々な表情で
「つまり臨死体験のようなものですか?」
「そう言う事です!臨死体験の際に現実と空想の狭間の怪獣世界を見ている彼らは、
恐らく僅かな意識の中で、自分に備わっている醜い側面を無意識に否定しようとして、
その責任を転嫁しようとします!つまりその怪獣世界は自分の醜さを具現化
したものなんですよ!」
しかし優香は
「でも!ひょっとしたら自分の醜い側面を受け入れた事で、
美しい側面も具現化される事があるのではないでしょうか?」
「つまりあなたが言いたいのは?美しい側面はミニラ、
醜い側面はデスギドラと言う醜い怪獣に具現化されたという訳
ですね?ケーニッヒギドラやゴジラはどうだか分かりませんが?」
それから他の精神科医
「一番強烈に印象に残っている親友や恋人の記憶が無意識に
覚醒して怪獣世界に現れるケースも良く見られている。」
「ロシアのテロリストの一人のサンドラが見た怪獣世界には、
元恋人や人質として狙っていたある娘さん、それにあなたの息子さんが出て来たと私は聞いています!」
「成程……」
「あるいは……その怪獣世界を見た彼らはもしかしたら?
バース・トラウマを追体験している可能性もあるな……」
優香は怪訝な顔で
「バース・トラウマって何ですか?」
待ってましたとばかりに精神科医
「つまりですね!バース・トラウマとは出産時に受ける精神的外傷の事です!」
「出産時に受ける精神的外傷とは?」
と優香。
「つまり幻覚状態における意識レベルで彼らの記憶が胎児の姿
までさかのぼり、その、帝王切開やその他の苦しかった状況が
イメージ化されて……人間が怪獣に変身したと言う言葉を口に
するのではないかと私は考えています!」
「また彼らが経験した爆発や、目の前に眩しい程の光が差すと言う現象についても、
出産する時の産道の拡大から出産時の胎児の記憶が影響しているのでは無いかと言われています」
分子生物学者が反論して
「しかし、精神的な話の分析はともかくですよ、怪獣は実際にいるんですからね!
街が破壊されてるんだから。
イメージを見ようが見まいが、物理的世界のことが問題ですよ!」
心理学者は答えて
「精神世界が物理的な世界に具現化する可能性もね、心理学の方では考え始めているのですよ」
分子生物学者は
「それは科学じゃなくて宗教だ!あなたたち、自分の心理のほうを疑ってごらんなさい!」
と学者達は一斉に火が噴いたように口論を始めた。

北村とローランドはそれぞれのカードキーを使いアルカドランの施設の中へ入った。
施設の内部は小笠原怪獣ランドの地下研究所施設と同じ造りだが、
最近発見されたアパラチア山脈の地下洞窟を利用し、建設された為、
地下研究所の内部は普段は真っ暗闇で閉鎖的で陰湿な場所である。
長い灰色のコンクリートのらせん階段を降りながらローランドは
「それでだ……マークはクビにしたとは言え……彼が行った
長年の遺伝子操作やG塩基に関する研究のおかげでようやく
『プロメテウス』も最終段階を迎えた!」
北村は苦笑しながら
「まさか?後悔しているのか?あいつをクビにしたことを……」
「この計画に関わる前から彼を尊敬していた!」
「確かにクビにするのは惜しい人材だ!」
と笑いながら言うと再び何重にも及ぶセキュリティをパスし、
いよいよ研究施設の中枢部に通じる巨大なドアが開いた。
そこは怪獣達が収監されているいわゆる監獄だった。
北村が首を曲げ、怪獣が収監されている特殊な檻の中を見ると、
特殊な檻の中にはイグアナに類似した姿をし、背中に赤い翼、
山羊の角が生えた竜の頭部をし、奇妙な背びれを持つ怪獣が収監されていた。
北村は安心した表情で
「ようやくアパラチア山脈で米軍と交戦していたジラを連れ戻したか……」
ローランドも
「これで!一安心だな……」とつぶやいた。
「ここには知っての通り!小笠原怪獣ランドから移送された
怪獣が100体以上も収監されています!」
ローランドは
「このⅩ星人の宇宙船に似た監獄は?」
「これは数年前に地球を襲撃したⅩ星人の大爪形態を極秘に回収し!
5年以上も研究を重ね!造り出したものです!
電磁波を使用したこのⅩ星人の高度な移送技術のおかげで
凶悪怪獣やアパラチア山脈で暴れていたジラを
運ぶのにはさほど苦労しませんでしたよ!」
「大気圏外に運び出す事も可能だろうか?」
研究員は嬉しそうな表情で
「ええ!宇宙から来たⅩ星人が作ったものですから!もちろん可能です!」

(第38章に続く)

では♪♪