(第41章)音無凛、日本の諜報員になる

こんにちは畑内です。
久しぶりにゴジラの自作小説を載せます。

(第41章)音無凛、日本の諜報員になる

地球防衛軍本部「特殊生物犯罪調査部」。
蓮はパソコンのキーボードをいじり、「帝洋パシフィック製薬」について調べていた。
その隣で凛が
「本当にあたしのママの手掛かりがここに?」
と期待と不安で胸を躍らせている中、突然、天井のスピーカーから
「音無凛さん!『特殊諜報部』にすぐに来てください!」
と女性らしきアナウンスが聞こえた。
「特殊諜報部?」
「どうして?あたしが?」
それから凛は蓮の部屋を出て、エレベーターに乗り、対テロ対策センターの案内掲示板を見た。
凛は
「えーと……」
と言い「特殊生物犯罪調査部」の矢印をなぞり
「特殊生物密輸取締局」から「特殊生物病院」「特殊生物医療機関」を探したが、
「諜報部」らしきものは見つからなかった。
「きっと『犯罪調査部』じゃなくて『特殊生物情報部』にあるのかな?」
と「特殊生物情報部」の『怪獣・宇宙人極秘データバンク』
までなぞったが、やはり諜報部は見つからなかった。
ちなみに『怪獣・宇宙人極秘データバンク』とは、
怪獣の目撃情報や怪獣関係の取引、宇宙人達の情報、
世界中の特殊生物研究所から送られたサンプルや研究データを分析する場所である。
怪獣・宇宙人に関する情報や、怪獣や宇宙人の出現と地球人
が起こした何気ない犯罪とに何か関わりがある場合、それが彼
女と蓮が所属している『特殊生物密輸取締局』に回ってくる仕組みである。
凛は特殊生物情報部の『怪獣・宇宙人データバンク』の先の
矢印を指でなぞりようやく『特殊諜報部』と書かれた文字を見つけた。
「あっ!あった!えーと」
と言い、特殊諜報部のボタンを押した。
それからエレベーターが開き、『特殊諜報部』と書かれた自動ドアをくぐった。
そこには元地球防衛軍M機関の司令官だった波川玲子が座っていた。
「元司令がこの特殊諜報部の責任者?」
波川は
「ええ……そうです!」
と答えた。
凛は恐る恐る
「用件は?」
「あなたの捜査の腕、正しくはもう少し特別な理由もあるけれど、
それを見込んで……アメリアパラチア山脈で諜報活動をして欲しいんです!」
「つまり?日本のスパイになれってことですよね?」
波川元司令は無言で頷いた。
「でも……あたしは経験がありません……映画なら見た事ありますが……」
「『特殊生物犯罪調査部』の上層部もすでに許可しています!」
「あたしよりも……蓮君の方が……」
「彼の仕事は、あなたの諜報活動で得た情報を集めて、
こちらに送ることです!今言った特別な理由というのはね、
これまでときどき確認されてきたあなたの、怪獣の血に由来する力よ。
音無美雪さんの、つまりあなたの母親の行方も分かると思いますよ……」
「確証はあるんですか?」
凛は恐る恐る尋ねた。
波川元司令は
「ここに有力な情報があります!」
と言いスクリーンにある映像を流した。
その映像には、ヘリのプロペラの僅かな隙間に数人の黒服の
男と髪の短い女性が見えた。
「これは……小笠原怪獣ランドの監視カメラが撮影したものです!」
「と言う事は?ママは生きているの?」
波川元司令は頷くと
「このヘリの型を調べ、その行き先を調べたところ、
アパラチア山脈の極秘研究所に着陸したと言う事が分っています!」
凛は
「さっきおっしゃったあたしの力は、自分の出したいときに出せるものではないんです。
ミュータントのようなことはできません。」
と言ったが、波川は
「上層部がミュータントよりあなたを推薦しているのよ。」
と答えた。
しばらく考えていた凛は決意した口調で
「やります……ママを助ける為にやります!これは個人的な気持ちでもありますけど」
波川元司令は僅かな笑みを浮かべた。
「それではすぐに出発の準備を!細かいことはこちらで用意しましょう!以上!」
凛は感謝の意を示すように深々と頭を下げると、特殊諜報部
の自動ドアをくぐりエレベーターに乗って自分の部屋に戻った。

ジラは飢えた様な咆哮を上げ、何かを訴えていた。
気になって様子を見に来たローランドは
「何を訴えているんだろう……」
と首を傾げた。
しかしジラは、檻を新設した際に出た大量の鉄屑を、
カマキリに似たギザギザの棘のある爪で、のこぎりの様に何度もギー
コーギ―コと切断し、それを監獄の壁の隅に自分で舐めて、すり鉢状に貼り付けて行った。
北村は驚いた表情で
「何を作っているんだ……」
ちなみにここは、ジラが住み着いていた洞窟内に新アルカドランを建設したのであった。
その方が、無理やりどこかへ連れて行くより、管理が容易だからである。
実際、怪獣ランドでも移動の事では多くの関係者が大変な思いをしたものである。
ジラは全ての鉄屑や切れ端を舐めてのりの様に張り付けることを何時間も飽きる事なく続けていた。
やがてすり張り状の巣が完成すると、今までM塩基を持つ生
物から奪った幾つかの肝臓をマンホールに似た形の穴に入れて行った。
ジラは中に入り、肝臓を中に入れ、胆汁らしき汁を巣の内側に何時間も塗りたくった。
北村は巣を作り続けるジラを見て
「一体?なんで巣を作るのだろう?繁殖の為か?しかし?」
一方、そのジラを遺伝子操作で創り出したマークは狭い部屋に閉じ込められていた。
「このままじゃ……10日以内にⅩ星人が地球に来る!そうな
れば……奴は恐ろしい力でM塩基を持つ生物達を殺し始めるだろう……」
マークはベッドに座り込み、頭を下げ考え込んでいたが急に何
かを思い出した様子で頭を上げると
「いつ……だっけかな?確か?北村とローランドに黙って奴の
遺伝子を調べた時に……遺伝子を調べた時に……
あいつは『巣を作って休眠をする』と言う研究データがあったぞ!
ただ……その研究データをあいつらは知っているだろうか?
もし?奴らにこの研究データだけ知られていないとしたら!
これはチャンスだ!とにかく奴が休眠に入る前にコンピューターウィルスを何とか作成して!
ジラに関する研究データを全て一つ残らず削除してしまおう……」
と思い立ち、ポケットに隠し持っていた手の平サイズのノートパソコンを取り出しながら思わず
「とは言うものの……ここは私が全く知らない場所だ……うまくウィルスを送れるかどうか?」
とつぶやいた。

(第42章に続く)

では♪♪