(第43章)罪と罰と

こんにちは畑内です。
久々にゴジラの自作小説を追加します。

(第43章)罪と罰

 新設アルカドランの地下研究所内にある精神科病棟に似た一室で、
美雪はベッドの上でハッと目を開け、目覚めた。
 それから寝ぼけ眼でベッドから起き上がり、
周りを見ると部屋の隅に白衣の服を着た女性がうずくまっていた。
どうやら眠っているらしい。
美雪が
「誰?」
と静かに呼びかけると、そのうずくまっている女性は機嫌悪そうな顔を上げた。
その顔を見た途端、思わず
「サンドラ?どうしてこんなところに?」
 彼女は、凛がまだ高校生の頃に起こった一連の北海道網走厚生病院テロリスト事件の主犯格である。
 サンドラは痛みに顔をしかめた。
 美雪は思わず、テロリストであり危険な人物であるにも関わらず
「大丈夫??」
と尋ねた。
サンドラは額に汗をにじませ
「背中よ!時々酷く痛むの……あの時の悪夢を見る度にね!」
悪夢とは、ゴジラ細胞を利用して作ったウィルスを自分に投与し、
怪獣化して多くの人間を惨殺したあの出来事である。
「痛み止めの薬はあるの?貰わなくて平気?」
「無駄よ……鎮痛剤じゃ何の役にも立たないわよ!」
と言うと痛みに歯を食いしばった。
「見せて……」
「駄目よ……」
「お願い……助けたいの!」
「何を言ってるの?あたしは……」
「いいから見せて!」
サンドラは美雪に背中を向け、白衣を脱いだ。
 美雪はその背中を見て思わず息をのんだ。
 背中から腰までの脊椎の一部がまるでゴジラの背びれの様に変形し、露出していたのだ。
しかも背びれに似た骨には新しい皮膚や筋肉、神経があり、完全に身体の一部と化していた。
「幾らこの背びれを切除しても新しい背びれが生えてくるの……ゴジラのDNAのせいよ。
それに耐えがたい激痛に襲われるわ……もう!これは一生治らないと医師達が言っていたわ!」
美雪はまじまじと彼女の背中から生えたゴジラに似た背びれを観察しながら
「生々しいわね……」
とつぶやいた。
サンドラは少し笑いながら
「そう……あたしはゴジラの細胞を利用して、
神の領域に足を踏み入れたから罰が当たったのね!聖書にもバベルの塔って話あったわね。」
 彼女の言葉を聞いた美雪は少し悲しい顔をすると無言になった。
 その時、何処か遠くから
「グギャアアアッ!」
と甲高い怪獣の鳴き声が聞こえた。
さらに
「グギュウアアアッ!」
と再び聞こえた。
美雪は恐怖で顔がこわばり
「今のは?何なの?」
サンドラは
「ここに収容されている中でもひときわ貪欲で凶暴な怪獣が腹をすかせているのよ!」
「何?それは?」
また
「グギャアアアッ!」
と言う鳴き声が聞こえた。
「研究員達の噂によれば!小笠原怪獣ランドに収容されていた
怪獣の半分以上も食い尽したという話よ!後、小笠原怪獣ランドから逃げ出している間にも
それ以上の怪獣を食い殺しているって話よ!」
「それじゃ?あいつは?」
「多分……またここに収容されている怪獣が餌になっているでしょうね……」
さらに別の怪獣と思われる
「グギュウアアアッ!」
と言う断末魔の声が聞こえた。美雪は思わず背筋がゾッとし、身震いした。

 千葉県・成田国際空港
凛は公衆電話で同僚の蓮に電話をかけていた。
凛が持っている受話器から
「じゃ気付けろよ!」
と蓮の励ましの声が聞こえた。
「ありがとう……」
「まさか……元地球防衛軍のM機関の司令官の新しい役職が
『特殊諜報部』の最高責任者なんてな……」
「あたしも突然でびっくりしちゃったわ!」
「それで?どんな任務だ?」
「まだ……あっちに行かないと詳細は分からないわ……」
「ふーん!どんな手を使うんだ??やっぱりハニートラップか?」
途端に凛はドキッと心臓が飛び上がり
「あんたね~」
「それで?ハニートラップってなんだっけ?」
途端に今度はガクッと凛は体を崩した。
「えーと……あまり説明したくないけど……
具体的に言えば恋愛感情に付け込んで誘惑した官僚や軍人を脅して自分の手先に
するのよ!」
「ふーん!ぴったりじゃないか?官僚や軍人を食事に誘って仕事の話や世間話とか、
イチャイチャしている所を盗撮して……その映像をネタにして連中を脅す!そう言えば?愛の妙薬とか
持っているのか?酒は強いか?」
「あなたねー!この話を山岸君が知ったら誤解されるわね……」
「分った!黙っておくよ!」
「それじゃ!あたし行かなきゃ!そろそろ出発しないと!」
「じゃあな!」
と蓮。
「それじゃ!彼と友達にもよろしくね!」
「あっ!そうだ!最後に聞きたい事があるんだ!」
「もう!何よ!早くしないと……乗り遅れちゃう!」
「君は怪獣か?それとも……人間かい?」
凛は真剣な目つきになり
「両方よ!あたしは怪獣と人類を守る為に生まれて来たんだから!」
「君の並みならぬ決意が良く分かったよ!気を付けていけよ!」
蓮の温かい言葉を聞き、凛は思わず静かに涙を流し
「ありがとう……蓮君!」
とお礼を言って電話を切ると、旅行鞄を持って飛行機の搭乗口
へ急いだ。

(第44章に続く)

では♪♪