(第44章)モンスター

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第44章)モンスター

洋子の自宅で瑠璃は夕食のカレーライスを食べた後、子供部
屋の机に1時間も向き合い、一心不乱に色鉛筆で絵を描いていた。
その様子を心配して来た洋子は、彼女が描いたばかりの
4枚の絵を見て驚きの余り、口をあんぐり開けた。
1枚目の絵には色鉛筆で、何処かの街の高層ビルの窓から虹色
の光が差し、その光の中に友紀と2人のサングラスの男が描かれていた。
ちなみに高層ビルの周りには必ず三角型のⅩ星人のものと思われるUFOまで描かれていた。
 他3枚の絵には巨大な球状のⅩ星人の大爪形態UFOの断面図が描かれていた。
 洋子が断面図を見ると、絵の中央に一体のゴジラに似た怪獣が大きく書かれ、
他にⅩ星人も怪獣の姿も無く、赤色の色鉛筆で床や壁のほとんどが塗りつぶされていた。
 洋子は瑠璃が描いた4枚の絵を机に置き、描きかけの瑠璃の
絵を見ると、茶色の鉛筆でビルか何かの瓦礫で固められたすり鉢状の物が描かれていた。
「これなーに?」
と洋子は尋ねた。
瑠璃は
「へーんな仮面の怪獣のマイホーム!」
と答え、巨大なすり鉢状の巣らしき物を描き終えると、
その隣に自由の女神の周辺を泳ぐゴジラを描き始めた。
洋子は気軽な口調で
「どうしてこんな想像画を描くの?」
と尋ねた。
瑠璃は急に沈んだ声で
「……怖いの……だから描くの……」
と答えた。
 さらに洋子は別の想像画の絵を見た時、恐怖のあまり大きく目を見開いた。
 瑠璃が描いた絵は、顔面蒼白な顔の女性が受話器を持っている姿と、
大きな窓越しの木陰から、血の様に真っ赤な2つの目
と巨大な一本角と稲妻模様の翼を持つ、あの24日前に彼女が
目撃した正体不明の「何か」と類似していた。
その隣で瑠璃は急に半ベソになり
「あたし怖い……」
と怯えながら自由の女神の周辺を泳ぐゴジラの背びれの絵を青い色鉛筆で描き続けた。

 ローランドと北村はジラに今日2回目の餌を与えていた。
 今度のメニューはM塩基を組み込まれ巨大化したワニ怪獣である。
ジラの
「グギャアアアッ!」
と言う咆哮とワニ怪獣の
「グギュウアアアッ!」
と言う哀れな断末魔の絶叫がほぼ同時に監獄内の隅々にまで響き渡った。
ジラは今まで捕食した多くの怪獣達と
同じように肝臓のみを滴出し、死骸と化したワニ型怪獣に噛みつき、
原形を留めずに分解して、高エネルギーを吸収すると、血を床にボタボタ垂らしながら、
奪った肝臓を完成させたばかりのすり鉢状の巣の中に投げ入れた。
 そのジラの捕食の様子を強化ガラス越しで見ていたローランドは
「最近になってM塩基を持つ怪獣達の肝臓を頻繁に集めているな……」
とつぶやいた。
北村は腕時計を時々確認しながら
「まさか巣を作って休眠する気か?」
と答えた。
「可能性は無いとは言えません……もしかしたら休眠に必要な
栄養分を確保する為にM塩基を持つ怪獣達の肝臓を集めているかも?」
とローランド。
「もうすぐ!MWM社の上層部達とアメリカ大統領のエバートさんが到着する予定の時刻だな!」
と北村。
 その言葉通り、アルカドランのヘリポートに着陸した一機のヘリから、
大きな黒い縁の眼鏡をかけた白髪のアメリカ大統領
エバートと数人のMWM社の上層部が降りて来た。
 すぐにローランドと北村はアルカドランの内部の控え室に案内した。

 CCI殊生物研究所を出発した車は真鶴の高速道路を走っていた。
車内では長い間、全員無言だったが、山岸がおずおずと
「あっ……ありがとうございます……」
2人は返事をしなかった。
やがてガーニャは
「どうしてあんなことを?」
山岸は急にうつむき
「御免なさい……迷惑をかけて……」
「私達はともかく!連中にそれを言っても誰も許しちゃくれないよ」
「君?彼が言った意味わかるね?」
「はい!分ります!」
「君?あの極秘の研究所に忍び込んで、もし一歩間違えていた
ら!君はあの連中に口封じに殺されていた所だったよ!」
「君は連中の恐ろしさを知らなすぎる!」
と2人は重々しい口調で言った。
 山岸は元FBI捜査官とガーニャの言う事に思わず身を縮め、
今頃どこかで死体になって転がっていたらと想像するだけで、身体の芯が凍りつく思いに駆られた。
山岸は隣に座っていたガーニャにロシア語で
「人同士の付き合いって難しいですね……」
ガーニャは山岸のロシア語に驚きつつも嬉しそうな顔をしながら
「どうして?」
山岸は
「だって!本音を隠さなきゃいけないんでしょ?」
と沈んだ声で言った。
 それから車は無事、真鶴の高速道路を降り、東京の街を走っていた。
ガーニャは、沈んだ表情で長い間黙り込んでいる山岸の様子を心配し
「何か?悩み事?」
と尋ねた。
山岸は恥ずかしそうに
「悩みと言うか……僕は本音を隠すのが苦手で……僕には凛ちゃんを守るのが無理な気がして……」
しばらく全員、沈黙していた。
山岸はガーニャに
「そう言えば?ジーナとサミーさんは?」
ガーニャは
「彼と彼女はロシアからオーストラリアの方の地球防衛軍に異動したよ!
僕はノスフェラトゥの事件を追う為にロシアの地球防衛軍に残ったんだ!」
「皆!バラバラになったんだ……」
「まあね!でもすぐ会える」
と車の黒いシートに腕を組みながらガーニャは答えた。
ガーニャの言葉を聞いた山岸は思わず
「これも連中の陰謀ですか?」
と口走った。
ガーニャは苦笑し
「そんな……馬鹿な!」
と返した。
それから山岸は真剣な表情で
「なんとか凛ちゃんには会えないんですか?」
「彼女は急用が出来てアメリカに渡る!」
山岸は驚いた表情で
「いつ?」
「今日だ!しかし……残念ながら会わせる訳にはいかない!」
「どうして?見送りは駄目なんですか?」
「場所が極秘だからだ!それに彼女には君が彼らに捕まった事は秘密にしている!」
「どうしてですか?僕は彼女のことを知りたいんです!そうしないと彼女を守れない気がして……」
「駄目だ!もし君が彼女の秘密を知ってしまったら!君や友達
が危険に晒される事になるし!元の生活に戻れなくなるかもしれない……」
「彼女自身がパンドラの箱だからな……開けたら二度と閉じられない……」
2人の真剣な言葉を聞いた山岸は無言となった。

(第45章に続く)

では♪♪