(第59章)死竜復活計画

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作諸説を載せます。

(第59章)死竜復活計画

 蓮と洋子の前から、ノスフェラトゥに変身して逃げ出した謎の老人は元の姿に戻り、
東京湾に浮かぶ船の明りを眺めながら物思いに耽っていた。
「元仲間のマークとレイが、死竜復活計画の為にノスフェラトゥや地球人達に
色々妨害工作をしてくれたお陰で、全ての必要な駒は一か所に集まりつつある!
そして全ての駒が集まった時!
私のケーニッヒやゴジラへの復讐が始まる!
だが……X星人達やウリエル・バラードや朱雀の巫女も動き始めている!
死竜復活計画を急がねばならん!」
と言うと、再び老人の全身が暁とオレンジ色のマグマ状のノス
フェラトゥに変わり、ジュ~と言う音を立てて、東京湾の海に沈んで行った。
そして猛スピードで海の中を泳いで行った。
 謎の老人が向かう先はもちろんアメリカのアパラチア山脈である。

 一方洋子はプロレスの会場の東京ドームに着くと車を降り、会場の中の自分の控え室へ入って行った。
 衣装を着替え、戦う女になると身体を伸ばしストレッチを始めた。
その時、急に洋子の脳裏に
「第3の堕天使が動き出した!止めなければ人類は破滅する!
恐れるな!恐れてはならぬ!」
と言うしわがれた声が聞こえた。
洋子は上ずった口調で周りを見渡し
「何なの?どうして?あたしに付きまとうの?」
続いて正体不明の声は
「カバンの中の絵を見て見ろ!」
と言った。
 洋子はバックの中に白い画用紙が入っているのが見えた。
それを取り出してみると、出かける前に瑠璃が書いたのだろう、
ニュースでアメリカ・アパラチア山脈に現れたゴジラ、ジラ、
ガイガン似た怪獣の絵が細かく書き起こされていた。
「さあ……朱雀の巫女よ!私が全てを見届ける……行くがいい……戦いはこれから始まるのだ!」
と聞こえると太い男の声は止んだ。
 それでも洋子は警戒した顔で周りを注意深く観察した。
 その瞬間、目の前に、自宅の窓で目撃した巨大なオレンジ色
の一本角に血の様に真っ赤な両目をした『正体不明の何か』が現れた。
 洋子は再びその場に凍りつき、髪の毛や全身の産毛が一気に逆立つのを感じた。
いきなり目の前に現れたので悲鳴を上げる事さえも出来なかった。
 更にその3mの大きさの怪獣は赤、黄に縁取られた稲妻形の
模様の入った翼を広げた。
 彼女の目の前が真っ暗になり、意識がそこで途切れた。
 しばらくしてスタッフの一人が
「洋子さん!出番ですよ!」
と呼びに来たが、すでに彼女の影は何処にも無く、もぬけの殻だった。
部屋には破れた衣装が散らばっていた。

 美雪とサンドラが閉じ込められたアルカドラン地下研究所の狭い部屋の天井から、
頻繁に続く小さい揺れの度にパラパラと埃が降ってくるのが2人共気になり、
何度も天井をチラチラ見ていた。
 その時、突然、天井の排気口から黄色いガスが狭い部屋に大量に流れ込んできた。
 美雪とサンドラはその黄色いガスを吸い込み、激しく咳込んだ。
「ゲホゲホ!なんなのこれ?」
とサンドラ。
「吸わないで!催眠ガスよ……ゲホ!ゲホ!」
その時、狭い部屋の自動ドアが開き、ガスマスクと全身白い宇宙服を着た研究員達が入って来た。
 さらに研究員の人数は増え、研究員達は倒れて気を失いそうな
サンドラをベッドに仰向けに乗せ、超合金の手錠でベッドに厳重に固定した。
 美雪は黄色いガスを吸い激しく咳込みながら、サンドラが仰向けに寝かせられた
ベッドの下部を見ると、黒い袋がしつらえてあり、
サンドラ背びれがすっぽりとその袋の中に収まっていた。
 恐らくサンドラの背びれを保護する為だろうと美雪はぼんやりと考えながら
「ゲホゲホ……何をするの?ゲホ……やめなさい!ゲホゲホゲホ……彼女を放して!」
と美雪は無我夢中で2人の男に組みかかったが、たちまち身体を床に押さえつけられた。
それから美雪は、黄色いガスにより意識が朦朧とし、遠退いて行くのを感じながらも、
完全に意識を失う寸前、ガスマスク越しに研究員の話が僅かに聞こえた。
「結局マークはどうしてこのプロジェクトに関係無い筈の美雪さんなんかを誘拐したのだろう?」
「実は彼に関する記録がすでにMWM社の上層部のローランドによって全て抹消されている!」
「あとマーク本人は1時間前に睡眠薬を大量に飲んで服毒自殺を図った!
まだ死んだかどうかは分からないが多分……全ての真相は闇の中になりそうな気がする!」
その言葉を聞いた美雪は
「そんな……マーク……自殺だなんて……」
と小さくつぶやいた途端、とうとう彼女意識は途切れ、目の前が真っ暗闇に包まれた。
 数時間後、先に意識を取り戻したのはサンドラだった。
彼女は意識を取り戻した途端、急に眩しさのあまり目をつぶった。
 やがて眩しい白い光に慣れて周りを見渡すとどうやらそこは巨大な手術室らしい。
 頭を上げて、巨大な注射器のような機械が自分の下腹部に
向けられているのを見た瞬間、彼女は驚きの声を上げ
「何なの?」
とかすれた声を上げた。
彼女の周りでは、手術用のマスクと帽子を被った北村を初め大勢の
医療スタッフや研究員達が慌ただしく動いているのが見えた。
研究員達は口々に
「プロメテウス・タイラント計画の第2段階の下準備は既に終えている!」
「あとは受精卵を再び彼女の子宮に戻すだけだ!」
と言った。
 サンドラは状況が呑み込めず恐怖と不安でただただ脅えていた。
 それから北村は手袋をはめて消毒液で手を洗うと、
他の大勢の医療スタッフや研究員達を集め、天井に吊るされた特殊な機械の
上部の穴に受精卵の入ったカプセルをはめ込み、しっかり蓋を閉めた。
Ⅹ星人の北村は
「これがあなた達!ノスフェラトゥのゼイリュ族とゲンヴ族の最後の仕事だ!しっかりやろう!」
と周りの研究員や医療スタッフに期待と激励の言葉を述べるとすぐに手術を開始した。

 東京・地球防衛軍内の特殊生物病院内に担架に乗せられ青白い表情の男が担ぎ込まれた。
 その男はなんと尾崎だった。
 彼は本部内の自動販売機でジュースを買っている時、うしろから何者かに襲われた。
尾崎は得意の体術でその女の腕を掴み、一度は床に押さえつけ、あっさりと捕まえた。
 しかし尾崎がその女と直接目を合わせた時、危険を感じて
カイザー特有の念動力でその女を弾き飛ばそうとしたが、すでに遅かった。
その女と直接目を合わせた時、青い両目をしたアヤノの顔が見えたと言う。
 しかもそのアヤノらしき人物は尾崎に襲い掛かり、
下腹部から6本の触手を現した。その瞬間、尾崎は何処かに頭を強打し、意識を失ったらしい。
 尾崎は現場からこの病院に担ぎ込まれる間、偶然その場に居合わせた
真鶴の病院出身の内田祥郷医師に、間違いなくアヤノはノスフェラトゥだったと主張した。
 実際、祥郷医師が尾崎の下腹部を見ると、ノスフェラトゥに襲われた時に
必ず出来る裂けた小さい傷跡があり、その周辺の皮膚は凍傷で紫色になっていた。
 それから尾崎の下腹部を最新エコー検査で調べるとやはり
ノスフェラトゥが持つデストロイア型の微小細胞と大量の冷凍液が体内に確認された。
祥郷医師は
「これは!尾崎さんの言う通り!間違いなく!ノスフェラトゥの仕業だ!」
その間、尾崎は内側から来る激しい寒さと下腹部の鈍い痛みで
意識が遠退きそうになりながら老人の言葉を思い出していた。
『君の体内に流れているカイザーの血は所詮呪いの血に過ぎない……』
『カイザーのⅩ星人と人間を凌駕する身体能力や念動力は一時的なものに過ぎない……』
更に極め付きの老人の言葉はこれである。
『その呪いの力はやがて君の肉体や精神を侵し、原因不明の病気で苦しみやがて……死ぬだろう……』
「もしかして?あのノスフェラトゥでは無く!カイザーの血が原因で……俺はここで死ぬのか?」
と言う漠然とした不安が彼の心の中を支配し始めた頃、
突然、尾崎には、今までノスフェラトゥに襲われたジェレルや
他のノスフェラトゥの被害者に無かった症状が現れた。
 その症状は全身の激しい痙攣と痛みから始まり、
まるで肉体や精神を侵された様に意味不明な言葉を喚き、尾崎は苦しみ始めた。
 祥郷医師はその原因を突き止めようと、あらゆる検査を行ったが、
結局原因不明で祥郷医師は困り果て、とうとうカナダの大学でノスフェラトゥ
初めて遭遇して以来、現在も自主的に研究しているロシアのガーニャに助けを求めた。
 ガーニャが尾崎の病室に来る間、祥郷医師は腕組みしながら
「こんな症状は今までのノスフェラトゥに襲われた男達には無かった……」
とつぶやいた。
 しばらくして尾崎の病室に駆けつけたガーニャは、苦しみ悶
えベッドの上で暴れる尾崎を見ると、早口のロシア語で
「確かにそうです!このノスフェラトゥに襲われた人間の一般的な症状は
注入された冷凍液で体内の内臓が全て凍りついて……最終的に凍死に至る……。
しかしこれは?原因はなんだ?」
とやはり動揺を隠せなかった。
 その時、一瞬だけ尾崎の念動力が炸裂し、手術室の隅に置いて
あったテーブルが宙を舞い、騒がしい音を立て壁にぶつかった。
 しかし幸いにもその力はすぐに止み、ガーニャも祥郷医師も怪我をせずに済んだ。
ガーニャは目を丸くし
「なんなんだ?今のは?超能力か?」
と先程吹き飛ばされたテーブルを茫然と眺めた。
 尾崎の激しい痙攣と激痛は一向に収まる気配がなく、ガーニャが尾崎の顔を見ると、
彼の顔はまるでハチに刺された様に赤紫色に腫れあがっていた。
また祥郷医師が全身を見ると、どこもかしこも皮膚が赤紫色に腫れあがっていた。
「これは?アナフィラキシー・ショックか?でも?
ノスフェラトゥの微小細胞でアレルギー反応が起きたなんて私も聞いた事も無いぞ!
そもそもノスフェラトゥの微小細胞は感染しても命に関わる症状は起こさない筈だ!」
とガーニャ。
祥郷医師は
「もしかしたら?彼は薬物過敏症なのかも?」
と言いながら全身に湯たんぽや熱いタオルを当て、
さらにアレルギー疾患を抑える薬を点滴で投与し、
応急処置を済ますと、万が一を考え隔離病棟に入れ、様子を見る事にした。

(第60章に続く)

では♪♪