(第65章)血族

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第65章)血族

 アルカドランの廊下の分かれ道で、北村と医師達と看護婦は、
サンドラを乗せたベッドを運ぶ為に右の道を選び、警備員2人は、
両肩を取り押さえられたマークを再び地下研究所の
狭い部屋に閉じ込める為に左の道を選び、別々に分かれた。
マークは警備員の2人に
「彼女は無事だろうな?」
しかし2人の警備員はマークの言う事を無視した。
マークは数時間前に睡眠薬を大量に飲み、一時的に意識不明になったが、
奇跡的に生還し、周りにいた救命救急士や看護婦を、
隠し持っていたコルト・ガバメントでドアを開けさせるように脅し、
その部屋から脱出したのだった。
そして北村、他の医師、看護婦をコルト・ガバメントで再び脅し、
美雪を助けに行こうとしたが、運悪く、跡から追って来た
2人の警備員に取り押さえられ、現在に至るのである。
 相変わらず地上では怪獣の吠え声やミサイルやアサルトライフルの音、
警報器の騒がしい音が聞こえていたが、マークは逃げる事も出来ず、
警備員の2人に取り押さえられ、なす術も無いまま閉じ込められるかに見えた。
しかしマークは2人の警備員のほんの僅かな一瞬の隙を突き、
自分の肩を掴んでいた1人の警備員の腕を掴むとそのまま投げ飛ばした。
 2人目の警備員は慌てて自分の拳銃を取り出そうとしたが、
マークはその隙を与える間も無く警備員の鳩尾に強烈なパンチを食らわせ、
2人共、床に倒すと、すぐに2人の警備員の腰から、
奪われたコルト・ガバメントを取り戻し、直ぐに美雪が閉じ込められている
部屋へ向かって、まるで疾風のように走り去った。
 それから2人の警備員は立ち上がり、逃げたマークの後を全速力で追った。
 マークは荒い息を吐きながら一人で美雪が閉じ込められている狭い部屋に自力で辿り着いた。
 美雪は黄色い催眠ガスのせいか、まだ狭い部屋の隅で気絶していた。
 そんな美雪をマークは両手で優しく抱え上げると、すぐに狭い部屋から出て、
「よし!GBT計画の為に彼女を急いで連れて行かないと!
それに北村もローランドもいない今はかなり好都合だからな!」
と言うと、急いで警備員に見つからない内に走り去った。
 数時間後、マークと美雪がいなくなった狭い部屋の
ドアの前に洋子と先程の気持ち悪さから解放された凛が現れた。
凛は狭い部屋の開けっぱなしのドアから、自分の母親と男性らしき僅かな匂いを嗅ぎ分け、
「これ……ママの匂いだわ!」
洋子は怪訝な顔で
「えっ?」
と言い狭い部屋の匂いを嗅いだが、彼女にはカビと鉄の匂いが混じったしかしなかった。
しかし凛はクンクンと鼻を鳴らし、狭い部屋の外へ出て「こっちよ!」
と言い、陰気な廊下の先を再び自分の母親と誘拐犯らしき男性の匂いを辿り、歩き始めた。
その後を洋子はおっかなびっくり彼女にピッタリくっついて行きながら
「あなたの嗅覚は犬並みね!今まで知らなかったわ!」
「あたしも今まで自分がこんなに鼻がいいなんて知らなかった!」
と嬉しそうな表情で答えると、洋子を連れて先へ進んだ。
 凛は心の中でもしかしたら?これも怪獣の血に由来する力なのかも知れないと思った。
しかし凛は母親の美雪以外の匂いである男性らしき僅かな匂いが気になり、
もしかしたら自分の母親を誘拐した犯人かも知れ
ない!その誘拐犯が……何か……マズイ事をしようとしている……と、
言いようのない不安に駆られ、さらに早足で洋子を連れて陰気な廊下の先へ先へ進んで行った。

 ゴジラは、大きく咆哮を上げ、背びれが青白く輝き始め、
口から放射熱線を吐いた。放射熱線はジラの腹部に直撃した。
 ジラは大爆発と共に弾き飛ばされ、木々をなぎ倒し、うしろに倒れた。
しかしジラはすぐさま立ち上がると咆哮を上げ、再生した右腕を振り回し、
ゴジラの右肩をバッサリと切り裂いた。
 ゴジラの右肩から血が流れ出し、片手で右肩を抑え、膝をついた。
 そこにガイガンが咆哮を上げ、ジラに飛びかかり、巨大な鉤爪で身体を真っ二つにしようとした。
 しかしジラは目にも止まらぬ素早さで逆三角形の
頭部の真上1cmで両手で巨大な鉤爪を受け止めると、
そのままグルリと身体を捻り、ガイガンを投げ飛ばした。
 しかしガイガンは地面スレスレの所で素早く一回転し、両足で地面に着陸すると、
長い尾を再びジラに向け、「パパパパパ!」とリズムカルな音を立てて、青緑色のレーザーを放った。
 米軍のステルス爆撃機もV字型に編隊を組み、一斉に3体の怪獣に向かってミサイルを放った。
 ミサイルが「ヒュー」と空気を切り裂く音が聞こえ、3体の怪獣に直撃し大爆発を起こした。
 ジラは炎と黒い煙の中から口が耳まで裂けんばかりの大口を開け、
目の前を飛行していた米軍のステルス爆撃機に噛みつき数機を破壊した。

 マークは美雪を抱え、陰気な廊下を歩きながら自分が考え出した計画について考えていた。
 それは過去にゴジラをテレパシーでコントロールする国連のTプロジェクトを応用した方法だった。
 Tプロジェクトでは、ゴジラの後頭部にテレパシー増幅装置を打ち込み、
テレパシー能力を持つ人間の女性が送るテレパシー脳波で自由に
ゴジラをコントロールするのだが、マークの目的は全く違っていた。
 美雪は、ケーニッヒギドラと言う宇宙怪獣が人間に変身した覇王圭介の血を輸血し、
狙撃用のライフルでサラジア共和国のエージェントに腹部を撃たれ、
重傷を追いながらも奇跡的に生還している。
またインファント島で双子の小美人から貰った十字架のお守りには、
怪獣の能力を引き出し増幅させ、精神と肉体を同化させる働きがある事が、
一か月前に既に国連や日系企業のデータベースから分かっていたので、マークは、
そのインファント島のお守りの十字架を利用して彼女の体内に眠る怪獣の血を覚醒させ、
本当に普通の人間でありながら怪獣に近い血族を持つ彼女の脳波に怪獣(例えばゴジ
ラやケーニッヒギドラ)達がどう反応するのか、
更にその怪獣と人間の間に種を超えた深い絆が本当に存在するのかどうか、
ずっと知りたがっていたのである。
それからマークは、一か月前に日系企業のTGRAT社と
MWM社に働きかけ、あらかじめ準備させておいた真っ赤な血液と
蜂蜜の様な液体に満たされたプールのある広場に辿り着いた。

 暁とオレンジのノスフェラトゥになったジョアン・ハスチネイロは
既にアメリカのチェサーピーク湾の浜辺に到着していた。
 ジョン・ハスチネイロは、日に当たり、かなり熱くなった浜辺の白い砂を静かに歩き始めた。
「とりあえず!まだ肉体は必要だろう!後は私と同じ血を持つ、M塩基破壊兵器のジラと同化すれば!
私は死竜として復活できる!ここは海と同じ方法で移動した方がいいだろう!」
と言うと急にノスフェラトゥの身体は崩れ、
暁とオレンジ色に輝く楕円形のUFOに似た飛行物体に変化し、
アパラチア山脈のジラとゴジラガイガンが戦っているシェナンド国立公園へ飛び立った。

(第66章に続く)

では♪♪