(第66章)GBT計画

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作を載せます。

(第66章)GBT計画

 地上で爆弾が爆発したような「ドーン」言う大きな音が轟き、
陰気な廊下全体が大きく揺れた。
 凛と洋子はその激しい震動でバランスを崩しそうに
なったがどうにか壁に手を付け、体を支えた。
洋子は涙目で
「なんなのよ!」
と大声を上げた。
凛は母親の行方の心配をしつつも
「地上で怪獣達が戦っているわ!
もしかしたら?全員避難しちゃっているのかも?」
「ここは何なの?」
間もなくして赤く非常灯が付き、「ビィーッ!ビィーッ!」
と騒がしく警報が鳴り始めた。
凛は騒がしい警報に負けない強い口調で
「ここは生物兵器の開発の為に建設された極秘施設なの!」
「極秘??ちょっと!あたし?まさか?とんでもない場所に来ちゃった訳?」
と洋子は目を丸くし、こちらも警報に負けないくらいの大声を上げた。
それから凛は再び大声で
「だから……正直言えば!ここは危険地帯なのよ!でも!誘拐犯に連れて行かれたママが心配だわ!」
と言いながら、陰気な廊下の角を曲がり先へ進んだが、
幾ら先に進んでも研究員はおろか監視兵さえも一人もいなかった。
 洋子が何故か携帯カメラを取り出し、辺りを撮影し始めた。
凛は
「何やっているのよ!」
と洋子を注意しようとした瞬間、再びドーン!と言う大きな音と共に廊下全体が大きく揺れ、
キイイイイイッ!と言う怪獣の吠え声が地上から聞こえた。
 更に間髪いれず再びズドオオオン!と言う激しい爆発音が洋子と凛の耳を貫いた。
 洋子は悲鳴を上げ、凛の胸に抱きつき、ガタガタ震え始めた。
 さらにドカアアン!という爆発音やグオォォオオ―オッと言うゴジラの吠え声が聞こえた。
またバチバチと何かがショートした音が地上から聞こえ、やがてドカアアアン!
とひときわ大きな爆発音が聞こえた。
 洋子は両耳を押さえ、涙目でアサルトライフルらしき音やミサイルの音、
3体の怪獣達の吠え声を聞きながら、急に怯えた様子で凛の胸に両手でしがみ付くなり、泣き出し、
「こんな戦争状態で!一体?どうやって?あたしがどうやって?第3の堕天使を止めるのよおおっ!」
「大丈夫!大丈夫よ!きっと!何か方法があるのよ……それにママは何処?」
しばらく凛は洋子の茶色の髪を優しく撫でながら必死に落ち着かせ、
とりあえず自分の母親の行方と邪悪な勾玉を破壊せずに済む方法を考え続けた。

 東京の地球防衛軍本部特殊犯罪調査部の自室で蓮は、数時間前に赤く腫れ始めた左頬に、
昨日100円ショップで買って来た冷え冷えバンドを右手で当てて押さえながら
「クソ……どうして?こんな時に虫歯になるんだよ!」
と痛みを堪えながら、パソコンのキーボードをいじり、
凛から送られた情報を整理していた。
 数時間前に、天井のスピーカーから熊坂司令官の声で、
全職員に緊急の遺伝子検査が行われるため待機するようにと連絡を
受けていたので、蓮は虫歯が幾ら痛くて治療に行きたくても外へ出られない状態だった。
蓮は
「それにしても……なんで……部屋の中で待機なんだよ……あ―痛いてぇ……」
とブツブツと文句をつぶやき、仕方がなく虫歯が痛いのを我慢し、パソコンの作業を続けていた。
それから一時間、再び天井に備え付けられたスピーカーから
「全職員は本部内にある特殊生物病院へ移動し!遺伝子検査を受けて下さい!」
と熊坂司令官の声が部屋中に響いた。
蓮は嬉しそうな声で
「よし!病院に行けるぞ!遺伝子検査のついでに虫歯を治療して貰おう!」
と思い、迎えに来た国連関係者と共に本部内にある特殊生物病院へ向かった。

 マークによって連れ出された美雪は、
真っ赤な血液と蜂蜜の様な液体に満たされたプールの中で目覚めた。
 美雪は驚き、両手で水を掻き、水面に上がろうとした。
美雪の口や鼻から甘みと鉄の味が混じった液体が入り込み、ゲホゲホむせ返り危うく窒息しかけた。
マークは
「恐らく私の考えでは……数年前に覇王圭介、
つまりギドラとバガンあるいはゴジラとのハーフであるケーニッヒギドラの血を輸血された後、
彼女の意識は怪獣の意識に合わせ、再調整されて向上している……」
 マークは、この実験でその能力をさらに向上させれば、彼女
と覇王圭介や娘の凛、バガンの仲間のゴジラの意識と繋がり、彼らの居場所が分かる筈だと考えていた。
「身体の中で眠る怪獣の血を覚醒させるには……
MWM社が極秘に東京で採取したケーニッヒギドラの
ホルモンが混じったプールに彼女を浸し、彼女を溺れさせるその際に、
生きようと言う彼女の意思に反応して、インファント島の小美人に貰ったお守りが、
彼女の生命エネルギーを増幅させる。
そして彼女は死後体験の中で、血が繋がっている彼らが見える筈だ……
突飛な話だが……筋は通っていると思う……」
 マークは「ゴジラもしくはギドラの意識が彼女の身体に入り込んでも、
特殊能力が現れる事は構造上ありえないだろうが、
その代わり、彼女の性格そのものがゴジラもしくはギドラの意識になり凶暴化して、
私に牙を向くかも知れない」と自分が考えた実験に伴うリスクも承知していた。
 マークは遠くでプールの中で溺れそうになり上がってくる
美雪をかなりの期待と危機感が入り混じった目でじっと見ていた。

 ローランドから渡された地図を覇王が見ると、
そこにはアパラチア山脈のシェナンド国立公園にある極秘研究所の場所が正確に書かれていた。
 覇王は地図を胸ポケットにしまい、白い手袋をして、
クローゼットにあるカバンのファスナーを開け、
他に美雪の誘拐事件に関する手掛かりが他に無いのかどうか調べ始めた。
 しばらくして彼のカバンから2枚の整形手術に関する顔写真を見つけた。
「なんだ?こりや?」
整形手術はどうやらニュージランドの病院で行われたらしい。
だがその2枚の整形手術の写真を見た時、覇王は驚きのあまり
目を丸くした。
 ロシア人の男の一人が
「よし!そこに案内しろ!」
とレーザー銃をローランドに向けた時、覇王は
「待ってくれ!おい!ローランド!これはどういう事だ!」
とレーザー銃を向けるロシア人の男を制止すると、ローランドにその写真を見せた。
ローランドは両手を上げながら
「なんですか……いきなり大声上げて!昨夜の飲み過ぎてすごく頭が痛いんですよ……」
「そんな事はどうでもいい!これは?なんだ?」

(第67章に続く)