(第74章)救助を待つ者達

こんばんわ畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第74章)救助を待つ者達

 蓮は迎えに来た国連関係者に連れられ、特殊生物病院の採血室へ向かい、傍の椅子に座った。
その時、丁度、座った椅子の隣でニックとグレンが何かヒソヒソ話をしていた。
「知っているか?アヤノがノスフェラトゥのテロリストの仲間の容疑で逮捕されたらしいぜ!」
「ああ……知っている!このままじゃ……
彼女!X星人のスパイとミュータントの殺害とノスフェラトゥ
テロリストに協力した外患援助の容疑で刑務所送りになっちまうぜ!」
「でも?外患援助って外国から武力行使があった時に適用されるんだよな?」
とグレン。
ニックは
「そう!そこなんだよ!グレン!」
と言うとさらに話を続けた。
「確か……細菌テロの行使をしたらしいとか?」
「M塩基破壊兵器で?」
「それは分からない!あとテロリスト達に食糧を手配した容疑もかかっている!
しかも物的証拠もちゃんとある!八方塞がりだよ!」
蓮が何気なく取った新聞の記事には
自民党民主党に惨敗!」
と書かれていた。
さらに隣でニックとグレンのヒソヒソ話が聞こえた。
「これじゃ!当分!あの恋愛ゲームは隠さないとな!」
「そのゲームの材料は?」
「誰も知らない隠し倉庫に全部隠したよ!」
その間、蓮はざっと記事の内容を丸暗記すると、
ポケットからひやひやバンドを取り出し、
まだ痛む虫歯のある自分の頬に当てながら、
長い事、洋子の通うスポーツジムに現れた謎の老人について考え込んでいた。
 あの老人の正体は、凛から聞いた情報によれば、
ジョン・ハスチネイロと名乗るノスフェラトゥの考古学者らしい……
そう言えば!『第3の堕天使』と繋がりを持ち、昔、
俺が生まれる前に東京に現れた『死神』あるいは『死竜』
と言う名で呼ばれたデスギドラと言う怪獣さえも利用して、
闇で暗躍する者がいるとあの老人は言っていた……
そして誰かがそのデスギドラの様なものに触れると『第3の堕天使』
の圏内にリンクして無意識に自分の自我を餌にされるとか?これはどういう事だ?
 それに洋子はあの時、老人の身体から僅かな死臭がしていたと言った……
今まで気が付かなかったらしいが……。
「これで!ノスフェラトゥもⅩ星人も貴様ら
(恐らく人類の事だろう)も『第3の堕天使』の思うがまま」
とあの老人が言っていた。その後の急にタガが外れた
ように笑い出したあのおかしな態度……。まさか?あの老人の正体が
『第3の堕天使』なのか?それにデスギドラの様なものって何だ?
しばらく腕組みをして
「確か……老人ジョン・ハスチネイロが変身した
ノスフェラトゥの全身の皮膚の色は『暁色』と『オレンジ』をしていた」
としばらく考えた末、急に蓮は椅子からバタンと立ち上がり、
「そうか!『暁色』!アカツキシソウだ!きっと!
アカツキシソウは間違いなくデスギドラと言う怪獣の一部なんだ!それに
アカツキシソウもある程度、腐って行くとオレンジ色になる!だが……」
と言うとまた椅子に座りこみ腕組みをして考え込んだ。
 その様子を唖然とした表情でニックとグレンが見ていた。
 しかし蓮はそんなことはお構い無しに、アカツキシソウはアオシソウが腐ったものだ、
何か繋がりがある筈だと再び腕を組み、さらに長い時間中、考え込んだ。

 アメリカ・アパラチア山脈のシェナンド国立公園の森の
中ではゴジラとジラの激しい戦いが続いていた。
 ジラはゴジラに向かって挑発する様に吠え、
ゴジラに似た太い両足で地面を強く蹴り、
大きく飛び上がってゴジラに躍りかかると、
太い右脚にある黒く太い光沢のある鉤爪をゴジラの胸のど真ん中に突き刺した。
 そしてジラはゴジラの胸に突き刺さった右脚に強く力を込め、
深々とその巨大な黒い鉤爪をゴジラの皮膚に徐々に食いこま
せた。ジラは残った左脚でゴジラの左腕を掴み、更に力を込め、爪を食いこませた。
 ゴジラは右腕と胸に激しい痛みを感じ、大きく悲鳴を上げた。

 洋子の脳裏に流れた夢の話を聞いた凛は腕組みをして
「どうやら……第3の堕天使の正体は
ジョアン・ハスチネイロで間違いなさそうね!洋子ちゃんの前に現れた訳ね……」
と静かに言った。
隣で聞いていた美雪は
「誰?第3の堕天使とかジョアン・ハスチネイロとか?」
しかし凛は
「そんな事よりも!早く救助を要請してここから脱出しないと
!説明は後でするわ!」
と言うと美雪の肩を掴み、立ち上がらせた。
凛は冷たい地面に突っ伏しているマークに近づき、
「あんたも来て貰うわ!」
と、彼の襟首をむんずと掴み、容赦なく立たせると、両手に手錠を掛けた。
ついでに残りの腕で反撃される事が無い様にバキッともう片方の腕の関節も外しておいた。
さらに洋子は
「あと!あの夢の中で、狭い部屋に人間の赤ちゃんが保育器の
形をしたフラスコの中で眠っていて……それで……えーと」
 凛は、洋子が次の夢の場面を思い出そうとしている間、
マークによって美雪が沈められた血液と蜜で満たされたプールの前に立ち、
再び怒りに顔を歪ませ、ポケットから銀色のカプセルを取り出し、それをプールに投げ入れた。
 やがて「ジュワーッ」とプールの水面が泡立ち、大量の白い煙が部屋中を包んだ。
 全員はあまりの煙の量に思わず両手で口を塞いだ。
 白い煙が晴れるとプールに満たされた血液と
蜜の混じった水は完全に蒸発し、跡かたもなく消えていた。
 プールの表面にはまるで溶けた様に水槽の表面が剥がれ、ボロボロになっていた。
「まるで手品ね」
と驚いた表情の洋子。
 洋子は先程思いだそうとしていた夢の続きをようやく思い出し、凛に
「それでね!保育器の形をしたフラスコの中のすぐ傍の棚に青黒い塵の入った容器が見えたの!
何かあたしと関係あるの?」
その洋子の夢の話を聞いた凛は「やっぱり」と言う表情をしたので
「何か知っているの?」
と洋子。
すかさず凛は冷静な態度で
「知っているわ!まだ核心は教えられないわ!とにかく!ここで救助を要請してみる!」
凛は洋子に疑問に満ちた口調で
「でも、本当に洋子ちゃんと『第3の堕天使』の因縁は存在するのかしら?
これだけ長い事、移動を続けているのに……何も起こらないなんて……なんだか変ね!」
と言うと、両肩の関節を外され戦意喪失したマークを入口の床に座らせ、
なんとか救助の連絡を取ろうと無線らしき物でロシアの特殊部隊に救助を要請した。
 ようやく救助隊が答え、自分達が今いる位置を伝え、救助を待つ事になった。

(第75章に続く)

では♪♪