(第75章)父と娘の再会

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第75章)父と娘の再会

 山岸の自宅。
 山岸の奮闘によりようやく泣きやんだ瑠璃は、
山岸から貰った鉛筆とボールペンで、
新聞のチラシの裏にまた自分の趣味の絵を描き起こし始めた。
 その間、山岸は雑誌には手を伸ばさず、
机に置いてあった新聞を拾い上げるとそれを広げて読み始めた。
 新聞の記事には「ナマスヤゴミ処理場の作業員、
巨大ゴキブリに襲われ意識不明の重体。地球防衛軍本部閉鎖の為、
怪獣犯罪調査部やスピーシ・バッグ出動せず。」
と書かれ、記事には
「今日午後7時30分、ナマスヤゴミ処理場内で
2人の作業員が体長3mのゴキブリに襲われ、意識不明の重体となった。
ゴミ処理場管理者のナマスヤさんは、隣でゴミ処理場拡大に反対している
キリン農場の連中の仕業だと主張している。
キリン農場ではまだ『未許可の農薬』を使用しているとも噂されており、
国連は体調3mのゴキブリとその未許可の農薬の因果関係を調べる事にしている。
 現在閉鎖状態にある地球防衛軍に関し、ナマスヤさんは
『なんでいきなり、怪獣専門の地球防衛軍が閉鎖なんですか?
怪獣を利用したテロ事件よりも、こちらの一般の怪獣事件にも目を向けて下さい!
怪獣が現れて一番困るのは私たち一般市民なんです!』
と怒りの声を上げている。キリン農場の農場主のキリンさんは
『私がナマスヤさんから酷く疑われていますが、
早く地球防衛軍にこのゴキブリ騒動の決着をつけて欲しいです……』と冷静な対応を示した。」
ここまで読んでいた時、山岸は急に鼻に鈍い痛みと違和感を感じ、
思わず両手で鼻を抑えた。
抑えた手を見ると血が付いていた。
「ああ……鼻血が……」
とつぶやくと、ティッシュペーパーで出て来る鼻血を押さえる為、
鼻の中に丸めたティッシュを突っ込んだ。
 山岸は新聞の端に着いた自分の血をティッシュでぬぐおうと
したが、既に染み込んでいて取れなかった。

 ジラはゴジラに爪を食いこませ、恐ろしいバランス感覚で躍動感溢れる
大胆なポージングのままピッタリと静止していた。
 その大胆なポージングのままジラは前かがみになり、
まるで綱渡りをする曲芸師の様に右手の死神のカマに似た長く鋭い爪をゴジラの首筋に向けると、
殺気に満ちた赤い目でゴジラを睨みつけた。
 すかさずゴジラも負けじと殺気に満ちたオレンジ色の眼で睨みつけた。
 それからしばらく両者はその大胆なポージングのまましばらく静止していたが、
急にゴジラの背びれが青白く輝く始めた。
それでもジラは怯む事無く、ゴジラから決して視線を放さなかった。
ジラも口を大きく開き、やがて喉の奥から火の玉らしきものが形成されて行った。
 一瞬の静寂が辺りの森を包んだ。
 ジラは喉の奥に形成された火の玉を、ゴジラは青白い放射熱線をほぼ同時に放った。
 それから両者の放った火の玉と放射熱線は激しくぶつかり合い
「ズドオオオオオーン!」
と言う凄まじい爆音を立て、大爆発を起こした。
 ジラもゴジラもその凄まじい爆風で吹き飛ばされ、
先程保っていた躍動感溢れるポージングは一瞬で崩れ、2体は別々の場所に吹き飛ばされ、落下した。

 凛達は湿った陰気なプールの入口の床に全員座り込み、救助隊を待った。 
その間、凛は、休んでいる全員から少し離れ、密かに連絡を取った。
「もし、彼女が現実の2次元世界と3次元世界の空想の狭間の4次元世界、
つまり!ワームホールの怪獣世界に足を踏み入れるだけの能力があるなら?彼女を保護した上で……」
「いや!危険よ!命の保証も無いわ!幾ら命令でも友達を危険に晒したくありません!」
「ねえ?いつ?救助隊が来るの?」
と救助を待ち切れず洋子が聞いた。
「もう!切るわ!」
と言うと凛は素早く電話を切り、
「もうすぐ来ると思う!」
と笑顔で洋子に答えた。
まさにそのとき
「おーい!」
と言う大声が聞こえた。
凛、洋子、美雪は笑顔になった。
すぐに立ち上がるなり、両手を大きく広げ、
「ここよ!」
と自分の位置を知らせた。
 無事、マークと凛、洋子、美雪は駆けつけた覇王と『ウラヌス部隊』に保護された。
 その時、美雪は金髪の男の顔を見て驚きのあまり、目が丸くなり、
「覇王?あなた覇王君なの?」
その傍ら
「ダイジョウブダヨ!」
「キミハ?ドウシテ?ココニ?」
とウラヌス部隊達がカタコトの日本語で洋子にしゃべりかけていた。
凛は覇王が誰だか分からず、美雪に
「ねえ?この人知り合いなの?」
覇王は、娘の凛の顔をじっと見ている美雪に
「どうした、2人共?見つめあったりして?」
その男の声を聞いた凛は昔テープで聞いた父親の声を思い出し
「まさか?あたしの……」
「そうよ!あなたのお父さんよ!」
凛は母親の美雪の声を聞き、複雑な表情を浮かべ、
「あたしのパパ?」
「君が……俺の娘か?」
凛は感情が込み上げ、急に涙目になると
「パパ!」
と大声を上げ、覇王に抱きついた。
 覇王は静かにすすり泣く娘の目の前に座り込み、
涙で濡れた頬を優しく撫でて涙を拭き取ってやると、
「すまなかった……」
「ママとあたしを残して何処かに行方不明になって。ずっと……恨んでたの!御免なさい!」
と自分の胸の内を明かした。
覇王は
「いいんだ……水に流そう!だから人間は涙が出るんだろ?」
 凛は安心したかのように再び覇王に抱きつき、大声で泣き始めた。
 その様子を見ていた美雪も洋子も、ウラヌス部隊のロシア人2人も、
親子の再会に感動し、もらい泣きをした。
 それから彼らは、覇王とウラヌス部隊が予め確保していた脱出経路を辿るため、
プールのある広場の入口から出ると再び陰気な廊下を歩き始めた。

(第76章に続く)

では♪♪