(第81章)魔女(後編)

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第81章)魔女(後編)

蓮とニックが、犯行現場周辺で腕を組み物思い耽っていると、後ろから
「今!ようやく日本の地球防衛軍の上層部達に掛けあって!
なんとかアヤノの面会許可を貰った!ジェレルも面会出来るそうだ!」
「ありがとうございます!ゴードン上級大佐!すぐにジェレルさんを連れて彼女の面会に!」
と言い2人はカウセリングセンターに通じる廊下を歩いて行った。
 その途中、蓮は何個もの荷物を抱えて歩く、4人の国連の職員に出くわした。
蓮はすぐにゴジラ型のバッジと手帳を懐から取り出し
「失礼ですが!特殊生物犯罪調査部の山根蓮です!この荷物はどこに?」
「これは?えーと?『特殊生物情報部』の『怪獣・宇宙人データバンク』の新しいオフィスに!」
「えっ?新しい職員が入ったんですか?」
と蓮。
「はい!音無凛さんです!昇進したんですよ!」
「ほおーっ!それは凄いな!彼女!昇進したのか?」
とゴードン上級大佐は感心した様子で蓮の顔を見た。
「それは……おめでとう!だが……寂しくなるな……」
と嬉しいやら寂しいやらで蓮の表情は複雑だった。
「それで!すぐに彼女の持ち物を上に届けなければいけないので!失礼します!」
と言い、職員はえっちらおっちら重い荷物を苦労して運び、エレベーターに乗り込んだ。
 しかしエレベーターは満員で国連の職員と荷物が乗り込むと
たちまち定員オーバーを知らせるブザーが「ブ―」と高らかに鳴り響いた。
 それから職員が荷物を再び降ろしている様子を見ていた蓮と
ゴードン上級大佐はすぐに
「手伝います!」
と言い、今度は重い荷物をエレベーターから降ろすのを手伝った。

 アメリカ・アパラチア山脈・シェナンド国立公園。
 ゴジラの体当たりを食らい、森の中で倒れていたジラは怒りに顔を歪ませ、起き上がると
「おのれ!たかが日和見滴応で生き延びたお前達に!この私を
簡単に封印できる本気で思っているのか?」
ゴジラは食いちぎられた首筋の傷を抑えた。
しかしすでに出血は止まり、かさぶたになっていた。
ゴジラは立ち上がると、背びれが青白く輝き、口から青白い放射熱線を吐いた。
放射熱線は「ドカーン!」と音を立てて、ジラの頭部に直撃し大爆発を起こした。
 炎と黒い煙が晴れた時、ジラの目の前にガイガンの赤いモノアイが見えた。
 しかしジラは冷静に右手の死神のカマそっくりの爪でガイガンの右腕を切り裂いた。
 その瞬間、赤いモノアイの中で既にガイガン
一心同体になっている洋子の右腕に突然、激痛が走り、深い切り傷が出来き、血が流れ出て来た。
 自分の腕の出血を見た途端、洋子の顔からみるみる恐怖で血の気が引いて行くのを感じ、
「何?どうなっているの?」
さらに目の前を見ると再びジラが大口を開け迫って来た。
 洋子は戦慄のあまり、両手を組んだ。
 それと同時にガイガンも両手を組み、
まるで何かの意思に従うかのように尻尾が自然と動き、尾の先端のアサルトライフル
から青緑色のレーザーをジラの口の中に至近距離から何度も叩き込んだ。
 青緑色のレーザーはジラの口の中で何度も炸裂し、爆発した。
 思わずジラは顔をそむけた。
 洋子は安心し、両手を組むのを止め、
「封印したの?」
とつぶやいた途端、
「ゴオオン!」
と金属バッドで殴られたような、金属音が洋子の鼓膜に破れんばかりに反響した。
 実際、洋子とガイガンはジラの長くしなやかな尾に弾き飛ばされ、
宙を舞い、近くの森に一回転して、倒れていた。
 洋子は一瞬だけ死んだかと思ったが、なんとか意識ははっきりしていた。
 しかし命の危機は休む間もなくまだ続いていた。
 再びジラは森の中に倒れたガイガンの頭部を容赦なく踏みつけた。
ガイガンと一心同体になっていた洋子も無傷で済まず、
見えないプレス機か何かに何度も踏みつけられたかのような
激痛を顔面に感じ、ますます意識が混濁し、危うく気を失いそうになった。
それでも、プロレスで鍛えられた洋子は持ちこたえていた。
 洋子は顔面に何度も続く激痛に耐えながらも力を振り絞り、死に物狂いで左腕を振り回した。
ガイガンの左腕も洋子の左腕の動きに合わせて、振り回した。
幸運にも左手に装備されていた青緑色の巨大なカマが、
ジラの左脚のつま先から膝までバッサリと切断した。
「ブシュウウッ!」と切断された左脚から血とドス黒い塵が噴水のように噴出し、
ジラはバランスを崩し、周りの木々をなぎ倒し、地面に倒れた。

 東京・銀座『デビルズ・ウィッチ・アタック』
と言う名の小さなカクテル・バーの店で、2人はお互い注文したワインを飲んでいた。
長い沈黙の末、白髪の老人が口を開いた。
「君は?魔女は実在すると思うかね?」
この突飛な質問に山岸は思わず
「えっ?いないと思います……」
とすぐに魔女の実在を否定した。
老人は急に笑い
「そうかね?もし?凛さんが『天使の子』であり『魔女』だとしたら?」
山岸は苦笑し
「さすがにそれは無いでしょう?」
白髪の老人も赤ワインを飲み、ほろ酔い気分で笑い、
「そうかね?数年前に封印された筈の
『死神』が復活し!今!アメリカで『天使の子』……
いや!『魔女』とゴジラと新たな怪獣が戦っていると言うのに……」
その白髪の老人の話に興味を持った山岸は
「その『天使の子』名前は?新しい怪獣の名前は?」
「まだ分からぬ!」
「もしかしてさっきあなたが言った?凛ちゃん?それで!」
「いや!彼女では無い!恐らく君の友達だ!」
「友達?まさか?怪獣もゴジラの仲間とか?」
すると白髪の老人は無言で頷いた。
 山岸はテーブルに置かれたばかりの
注文した白ワインのグラスを手に取り、
白ワインを半分飲み、しばらく店内に流れるジャズの曲に聞き入った。
 店内でアルバイトとして働くバーテンダーの若者は客が飲み終えた空のグラスをタオルで拭きながら
「まさか?おじいさん!あの『魔女伝説』を信じるつもりかい?」
「ああ!信じるとも!」
すると山岸はバーテンダー
「あの超常現象番組の『魔女伝説』ですか?」
「うん!数年前からこの東京でキングギドラデストロイアが現れた場所の周辺とか?
最近では北海道の網走厚生病院のテロ事件でも魔女が目撃されたってネット上の
オカルトマニア達の間でホットな話題になっているよ!
怪獣が魔女の使いだったとか?色々説はあるけど!」
と言い、拭き終わった空のコップを背後の棚にしまった。
 それから山岸は子供の面倒をみなくてはいけない事を思い出し、
若いバーテンダーと白髪の老人に別れを告げるとドアを開け、
「カランカラン!」と言うベルの音と共にバーの外へ出て行った。

(第82章に続く)

では♪♪