(第80章)魔女(前編)

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第80章)魔女(前編)

メガネを掛けたオタク風の男が一人で銀座の街中を歩いていた。
山岸雄介である。
 やがて彼の目の前に一軒の『デビルズ・ウィッチ・アタック』
と言う名の小さなカクテル・バーの店が現れた。
 山岸が木で出来たドアを開けると「カランカラン!」と来客を知らせるベルが鳴った。
 来客のベルの音を聞いた若いバーの店員はドアの前に立っている山岸に
「いらっしゃい!」
とにこやかに話しかけた。
山岸も愛想笑いを浮かべ、バーカウンターの白髪の老人が座っている席の隣に腰を下ろした。
老人は山岸に向かって頬笑み
「君がここに来る事は分かっていたよ!」
再び山岸は愛想笑いを浮かべ
「また神のお告げとか?」
「信じているのかね?神と天使と悪魔を?」
山岸はそう老人に尋ねられ曖昧に
「多分……良く分かりません!半信半疑です!」
と蚊の鳴くような声で答えた。
続けて
「えーと何を話したらいいのかな?」
「気持ちを落ち着けなさい……」
と何を話すべきか迷っている山岸に白髪の老人は優しくアドバイスをした。
「あの?ゴジラや怪獣は『神』ですか?それとも『悪魔』ですか?
だとしたら?凛ちゃんが……あなたが昔……その……
真鶴の避難所で話した様に『天使の子』が凛ちゃんだったら?ゴジラも?『天使』なんですか?」
「それは……難しい質問じゃな!」
と顎鬚を触りながら曖昧に答えると、
山岸が来る前に注文して置いた赤ワインのグラスを手に取り、それを飲んだ。
山岸は
「あなたが昔、凛ちゃんのお父さんを『悪魔の子』と呼んでいた事を元信者から聞きました」
「成程!『悪魔の子』ルシファーの事か?」
山岸はウンと無言で頷いた。
すると老人は赤ワインを飲みながら
「今や!この新しい世界もすっかり世間になじんでしまったのう……」
と白髪の老人はしばらく物思いに耽り始めたので、
山岸はカウンターのバーテンダーに白ワインを注文した。

 もうすでに朝日が昇っていた。
 青緑色に輝くガイガンの姿を見たジラは
「フッ!モスラ族のバトラめ!巫女に機械獣を雇ったのか?笑止!」
とせせら笑いを浮かべた。
 洋子が目を静かに開けると目の前に赤い画面が見え、
そこにジラとゴジラの様子が見えた。
 ジラは再び咆哮を上げ、朝のひんやりとした空気を
激しく震わせてガイガンにまっすぐ突進して来た。
 しかしガイガンは冷静に腹から股間までの巨大な
回転カッターを回転させ、そのまま突進して来た
ジラの逆三角形の頭部と胸から腹まで「ズバッ!」と音を立てて切り裂いた。
 ジラの鮮血が辺りに飛び散り、ジラは悲鳴を上げ倒れ込んだ。
 ガイガンのコンピューターは自分自身の体内に謎の緑色の高エネルギー反応を確認し、
「謎の高エネルギー。判別不能
「制御不能!!」
と連続して表示された。
その文字を見ながら
「おねがい!」
と勾玉をギュっと握りしめ、洋子が言った。
 それから起き上がったジラは、
切り裂かれた頭部と胸と腹から鮮血をまき散らし、再びガイガンに襲い掛かった。
 一方、地上では軍隊が怪獣達を退治すべく続々と
3体の怪獣が戦っている森に集結して行った。
そしてオニール軍曹は双眼鏡でガイガンゴジラ、ジラを観察した。
 ガイガンに襲い掛かる途中、真横からゴジラの黒い巨体が全速力でジラに体当たりした。
「うーむ!どうすれば?少し厄介だな……」
とつぶやいた時、ガイガンのモノアイ付近に人影があるのが双眼鏡のレンズの中に映り込んだ。
「あれは?誰だ?」
と眉をひそめ、じっとその人影を観察した。明らかに誰がどう見ても人間としか思えなかった。
「まさか?いや!あり得ない!人間がいる筈が無い!」
とさらに双眼鏡をガイガンのモノアイの中の人影に合わせた。
 どうやら女性らしい。
 オニール軍曹は何か思い当たった様子で
「まさか?あの例の噂の『魔女』か?」
とつぶやいた。
 過去に、ゴジラジュニア、デストロイア
北海道網走厚生病院に現れた正体不明の怪獣の頭部やその周辺に、
女性らしき人物が浮いているのが世界中の人々の間で目撃されていた。
 しかも北海道網走厚生病院の窓ガラスを割り、
正体不明の怪獣と繋がれた女性の姿をマスコミがカメラに収めていた。
 それはたちまち超常現象番組で公開され、
『魔女伝説』として世間では噂がまことしやかに囁かれていた。
 もちろんオニール軍曹は『魔女』等と言う
非科学的なものは信じる気は毛頭なかったのですぐに
彼は思い過ごしかあるは幻覚だったと判断し、
すぐに双眼鏡を膝に降ろし自分の部隊が待機している場所にあるき去った。
 果たしてこの怪獣周辺で目撃される女性らしき人影は本当魔女なのか?謎は深まるばかりである。

 蓮とニックは、ノスフェラトゥの犯行と思われる、
宇宙人に殺害された警備員の遺体を医療スタッフが
タンカーで運んで行くのを見送ると、
すぐに犯人の手掛かりが無いか現場周辺を調べ始めた。
そして死体があった所に二人分のタンポポアサガオの入った花瓶を見つけた。
ニックは
「いつも疑問に思うけど……どうして?
犯人は人間や宇宙人を殺した後に花瓶や大掛かりな花畑を作ってディスプレイをするんだろう?」
「死者を弔う為……いや!むしろ!一種のコレクションとして集めている感じがしますね」
タンポポの入った花瓶を手に取った。
「まさか?その為だけに宇宙人や人間を殺して死体の周りに花を飾ってコレクションをしていたのか?」
「ひょっとしたら?本来の目的はそうかもしれない……」
「おいおい!最悪だぜ!こんな所で死体の展覧会なんて冗談じゃないな!」
「……犯人のノスフェラトゥはフェチシストかも!」
「つまり?花と男の死体に執着しているのか?」
「多分。あくまでも心理分析の中の憶測に過ぎませんよ!」
「もしそうならコレクションの為にまた同じ犯行を繰り返す可能性が高いな!」
「そうですね……凍死体にしろ!M塩基破壊兵器にしろ!
男の死体をコレクションする為なら何でもやりかねない……花は植物の生殖器なんですよ」
と腕を組み、蓮が言った。

(第81章に続く)

では♪♪