(第89章)昇華

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第89章)昇華

 地下研究所アルカドラン爆破まであと1時間。
 オニール軍曹はジラの頭部に浮かんでいる人らしき顔を見て、気味悪そうに
「なんだ?あの顔は?なんだかしゃべっているみたいで不気味だな……」
そこに若い米軍兵が現れ、オニール軍曹に
「戦車隊とステルス部隊残念ながらほぼ全滅です!」
と報告した。
しかしオニール軍曹は無言でまだ双眼鏡でジラ、ゴジラガイガンの戦い行方を観察していた。

 地下研究所アルカドランから脱出を果たした美雪、覇王、キエフ隊長率いる
『ウラヌス部隊』は地上のシェナンド国立公園の森の中で雑草をかき分け、歩いていた。
 その時、急に彼女の首にかけていた十字架のペンダントが何かに共鳴するように黄金に光り輝いた。
 しばらくして彼女の脳裏にゴジラガイガンが耳まで裂けた口を開け、
ジラに襲い掛かる映像が流れた。
そしてジラの逆三角形の頭部の頂上に一人の女性と思わしき顔を見た時、美雪は背筋がゾッとなった。
まさにその瞬間、誰かに右肩を叩かれ、
「キャアッ!」
と悲鳴を上げ、驚き、我に返り、背後を振り返った。
その背後には心配した表情の覇王が彼女の顔を見ていた。
「どうしたんだ?大丈夫か?」
すると美雪はうわごとのように
「目覚めるわ……あともうすぐで……」
と覇王に何度も訴えた。

 シェナンド国立公園の森の中ではガイガン
ゴジラとジラの長きにわたる死闘に決着がつけられようとしていた。
ガイガンと同化している洋子の意識は今まで聞いたウリエル・バラードと凛の話を思い出し、
「凛ちゃんと……ウリエル・バラードは……あたしがこれをやり遂げられると信じている!
だから!辛いけど!やらなきゃ!罪を償わなきゃ!
あたしのせいでこんな事になって御免なさい……待ってて!
今怪獣世界から解放してあげるわ!永遠に!」
洋子の首にかけていた勾玉は再び青緑色の光を取り戻し始めた。
 ジラはガイガンのモノアイ全体が青緑色から黄色と朱色に変化したのを見ると
「お前も死ぬぞ!朱雀の巫女の様に破滅するぞ!」
ガイガンを睨みつけた。
しかし洋子の表情は決意の表情に満ち溢れ、こう言い返した。
「でも!あのアトランティス大陸の住民達はそれを望んでいるわ!」
 それを聞いたジラは身の危険を感じ、すかさず、口から火球を吐き、
洋子の意識と同化しているガイガンに先制攻撃を仕掛けた。
 しかしガイガンは跳躍し、身体を回転させ、火球をかわすとジラの右胸を
左の巨大な一本の鉤爪で容赦なく深々と切り裂いた。
 ジラは痛みのあまりその場に倒れた。その時、
洋子の首にかけていた青緑色に光る勾玉が
青緑色から朱色と黄色に変化し、2体の怪獣の身体に変化が現れた。
 ゴジラの背びれから生えた翼と、ガイガンの青緑色の帯状の烏に似た翼が、
ほぼ同時に洋子の首にかけた勾玉と同じ、朱色とオレンジに変化した。
 さらにゴジラのオレンジ色の目がみるみる真っ赤に充血した。
 続いてゴジラガイガンも身体がジラよりも一周りも二周りも巨大化し、
両腕と両足は筋肉が増え太くなった。
 ゴジラガイガンの口はジラと同じく耳まで裂け、
牙を剥き出し、ガイガンゴジラは天に向かって
「グギャアアアオオオオ―オン!」
と大きく吠えると口を大きく開けた。
 その大口はジラの逆三角形の頭部を丸ごと飲み込むほど大きくなっていた。
 洋子の身体にも異常が現れた。全身が巨大化して皮膚は裂け、血が流れた。
しかも触手のあるノスフェラトゥの姿となった。組織はガイガンと融合し、
自分が完全にガイガンと一致したと思われた。
 その刹那、再びジラの頭部にアトランティス大陸の住民達と
百虎の巫女が現れ
「ありがとう……」
と洋子の意識にお礼を述べた。
その感謝の言葉は洋子の心に響き、涙を流した。
ジラは
「貴様とケーニッヒの取り込みを果たせぬまま!やられてたまるか!貴様はその体に所詮耐えられぬ!」
そして
「グオォォオン!」
と大きく咆哮を上げた。
「お前は一人、こっちにはゴジラがいるわ!!誤算ね!」
「バキッ!」と言う音と共にゴジラはジラの逆三角形の頭部に喰らいつき、
ガイガンはジラの右肩に噛みついた。
ガイガンゴジラはジタバタもがくジラを軽々と持ち上げ、
「バリッ!バリッ!バリッ!」と何度も鋭い牙で噛み砕いた。
 ドス黒い塵と大量の血が辺り一面にブチまけられ、木々は鮮血とドス黒い塵に不気味に染まった。
ジラは
「悪意を持つものがいる限り、いくらでもこちらに手があることを忘れるな」
洋子は
「いつでも立ち向かうわ!」
 とうとう「バキャアッ!」と不気味な音を立て、
食い千切られたジラの四肢は四散し、木々をなぎ倒し、森の中に落下した。
 ゴジラはジラの胴体を、ガイガンは右肩の一部を「ゴクッ!」
と喉を鳴らし、呑み込むと
「グオォォオオオン!」
と再び天に向かって咆哮を上げた。
 その時、洋子の意識はまるでジラをゴジラガイガン
一緒に食べたかのような奇妙な感覚にとらわれ、
とうとう自我を失い、気が付けばガイガンゴジラの咆哮と共に
「うわああああああっ!」
と絶叫していた。
 ゴジラガイガンの全身を覆っていた朱色と黄色の光は徐々に収まり、
変化した両腕、両足の筋肉は元の正常な筋肉に戻り、身長も元の大きさに戻った。
洋子も人間の姿に戻っていたが、全身傷だらけだった。
 ガイガンのコンピューターはプログラム外の行動を理解できず、
「血液=鉄」
「肉=柔らかい」
食物連鎖
と次々と表示された。
そしてガイガンのコンピューターは「解放=救出完了??」
と表示した。
洋子の意識もようやく落ち着きを取り戻し、
「多分……永遠に……」
とつぶやいた。
「任務完了!帰還!」
と赤いモニターに表示された。
ガイガンのコンピューターは
「私は生きているのか?」
と洋子の意識に質問した。
洋子の意識はどうガイガンに答えてやればいいのか分からず
「もちろん……生きているわ……」
洋子は徐々に目の前が暗くなり、海へ帰る為ガイガンと洋子の意識に背を向け、
木々をなぎ倒し歩き始めたゴジラの青白い3列の背びれが並んだ背中姿を見送ると、
とうとうそこで目の前が再び真っ暗になった。
 その一連の様子を双眼鏡で目の当たりにした米軍兵達とオニール軍曹は
「信じられない……」
一人の若い米軍兵は顔を恐怖で真っ青にし
「……悪魔ですね……」
とつぶやいた。
その時、別の若い米軍兵が
「オニール将軍!すぐ近くの森の中に女性が一人倒れています!」
オニール将軍は
「何??おい!早く安全な場所へ避難させるんだ!場所は?」
「1km先の森です!」
その時「ドカアアン!」とゴジラとジラとガイガン戦っていた森のすぐ近くで、
突然、謎の爆発が発生し、地底の土や木々が柱となって吹き飛んだ。
オニール将軍は
「なんなんだ??あの爆発は??」
と双眼鏡を当て、その黒い煙と炎の柱を見た。
「何をしているんです??女性を早く救出しないと!」
と若い米軍兵は森の中を脱兎の如くに走り去って行った。

(第90章に続く)

では♪♪