(第90章)ミセスG

おはようございます。
畑内です。
今日は最後まで載せます。

(第90章)ミセスG

 現実と空想の狭間の怪獣世界。
 洋子の意識は何時間も真っ暗闇の空間の中を彷徨っていた。
気が付くと、目の前に、オレンジ色の角と血の様に赤い2つの目と、
黄色に縁取られた赤い稲妻模様の漆黒の翼を持つ、
蛾に似た怪獣、ウリエル・バラード事、バトラがいた。
 ウリエル・バラードは四角いギザギザの口を開き、
「ようやく……長い時を経て、アトランティス大陸
過去の住民達の怨念は解放され、お前の因縁は完全に昇華された!
もう二度とお前の周りに同じ事が起こる事はない!安心して元の平穏な現実世界へ戻るがいい!」
「本当に解放できたの?」
と洋子の意識。
「真実は音無凛が知っている……これで!私の役目は終わった!」
「もう会えないのね……」
「それは分からない」
と言うとウリエル・バラードは踵を返し、
黄色に縁取られた赤い稲妻模様を持つ漆黒の翼を堂々とはばたかせ、飛び去って行った。
 洋子の意識は急にゴジラウリエル・バラード事バトラ、
ガイガンと別れるのが物凄く寂しくなった。
最初はここに来る時は訳が分からず、あんなに怖くて行きたくなかったのに。
それから洋子の意識は更に闇が深くなり、
とうとう怪獣達の別れを名残惜しみつつ、彼女の意識は完全に途絶えた。

 洋子が次に「ハッ!」と意識を取り戻したのは現実と空想の
怪獣世界では無く、現実世界の病院の病室だった。
 その証拠に自分の全身に包帯が巻かれているのが見え、
それと同時に重い包帯の感触も伝わっていた。
久しぶりに感じる現実世界の物質的な感触である。
 洋子は全身に包帯が巻かれたまま目だけを左右に動かし、病室内を観察した。
 自分の隣のベッドにブロンドの髪の女性が静かに眠っていた。
地下研究所アルカドランで行方不明になった音無凛である。

 東京・地球防衛軍本部。
 レーザ銃で自殺を図ったレイの後頭部から流れた
血液は床の埃と汚れだらけのカーペットを染め、みるみる血だまりになった。
「まさか?こんな事になったなんて……」
とジェレルは座りこみ、彼女の冷たくなり、真っ白になったレイの顔をじっと見た。
「俺達のせいなのか?」
とガーニャ。
「自業自得だ!」
とゴードン上級大佐
「一体?どういう事だ?何がどうなっているんだ??」
と蓮は、自殺したレイが倒れている床のカーペットをじっと見ながら頭の中で
「確か『MJ12』はTVの架空の組織の筈だ?どういう事だ?何かの暗号か?」
とまた深く考え込んでいた。
 その時、ジェレルは自殺する前に彼女が投げ捨てた4冊のファイルの内、
1冊のファイルに小さなメモ用紙が一枚挟んであるのに気が付いた。
 そこには『MJ12』とそのメンバーの一人と思われる
『ミセスG』と言う謎の人物に関するメモが書かれていた。
それは僅か3行程度の文章だった。
「MWM社と協力している『MJ12』の主なメンバーは
アメリカ政府、米軍、CIAの関係者の孫や息子達と『ミセスG』である。
彼女は美しく可憐で期待のメンバーである。」
「それ以上の情報は無しか?」
と小さなメモ用紙を読み終えたジェレルは、
そのメモ用紙を蓮やゴードン上級大佐、ガーニャに知らせず、
静かにズボンのポケットに入れた。
 レイの遺体や、アメリカの国防総省ペンタゴンから盗まれた
4冊のファイル、他の遺留品を全て調べた結果、
レイが犯行に着用していたアメリ地球防衛軍の服のポケットから、
アヤノの実家から盗まれた衣服の繊維やベルトの破片が幾つも検出された。
 その為、地球防衛軍内で再び軍法会議が行われ、
アヤノの主張が事実とようやく認められ、無実が証明された彼女は薄暗い独房から解放された。
 3週間の休みを経て、アヤノは対テロ特殊部隊の
『スピーシ・バック』の医療兵に復帰する事が上層部により決まった。
ちなみに他にも内閣の関係者を装う為に使用したと思われる
内閣関係者の服が地球防衛軍本部内の使用されていない倉庫の中から発見されていた。
その事から、他にも複数の関係者に化けて内閣で何らかの情報を得た疑いがあるものの、
本人が死んでしまい有力な証言が無いまま国際警察の捜査は難航していた。

 地球から大気圏外を浮遊しているマザーシップ内、
黄金に輝く何本もの柱に支えられた巨大ドーム状の部屋に、
丸いテーブルを囲んで、X星人統制官のザクレスと参報のランデス
その他大勢のX星人達が座って会議をしていた。
「あたし達の要求通り、マーク・アーヴィンとレイ・グリードは死んだわ……」
とピンク色の扇子を左右に振りながらザクレスが言った。
隣にいた参報のランデスは恐る恐る
「それで?その後のノスフェラトゥのゲンヴ族とゼイリュ族から我々に引き継がれた
『プロメテウス・タイラント計画』で、例のサンドラと言う
ノスフェラトゥの女の胎内を利用して完成させた『UZ-2』はどうなるんですか?」
「既に完成した『UZ-2』の原型を取り出し、
サンドラは地球防衛軍本部の要求した通り、時期と状況を見て彼らにお返しするわ……
その後それの研究を続けるわ!一番の目的の、
M塩基破壊兵器を製造する地下研究所のアルカドランも破壊され、
その実験で誕生した媒介兵器のジラも無事抹殺された事だし、
そろそろ我々はX星に帰還する事にしましょ。ただ……」
「ただ??なんですか?」
「今回投入された最新のガイガンの事よ!」
「あのガイガンブラックボックス内に記録されていた奇妙なデータの記録かしら?」
「ええ、ガイガンは何故か計算外の捕食に似た行動をしているわ。
人間かノスフェラトゥらしき何者かと会話していたと
思われる奇妙な記録もある……しかも全て原因は不明なのよ!」
「まさか?ガイガンに不備でも?」
「そんな筈はない!厳密で高度な電子計算機を取り付けたのよ!
それが……突然原因不明の故障を起こす筈がないわ!」
「これからガイガンの頭部に内蔵されている記録データを取り出して
次の戦いに備えて不備のないように原因を突き止めないと!」
と幾分真剣な表情でX星人統制官のザクレスは言った。
そして、X星に着くまでガイガンのデータ記録を調べ、原因を突き止めようとしたが、
結果は現在も『原因不明』のままである。

(第91章に続く)

では♪♪