(第91章)レイ・ディスプレイ殺人の真相

ゴジラの自作小説を載せます。

(第91章)レイ・ディスプレイ殺人の真相

 洋子が目を左右に動かし、隣に眠っている凛の寝顔を見ていると
「ガラッ!」と病室のドアが開き、担当の医師が病室に入って来た。
洋子は担当の医師に
「先生!あたしと凛ちゃんはどうしてここに??」
 担当医師の説明によると、アパラチア山脈ゴジラ
ガイガンとジラが死闘の末、ゴジラガイガンがジラを食って、
ゴジラは海にガイガンは宇宙へ去ったそうだ。
 後に謎の大爆発が起こった場所から、
行方不明になっていた音無凛がその1km先の森で行き倒れているのを偶然、
オニール軍曹率いる米軍部隊に発見したと言う。
 洋子もゴジラ、ジラ、ガイガンが暴れていた場所で
血まみれの姿で倒れているのを、ロシアの特殊部隊と
音無凛の両親が見つけ、2人共ここに運ばれたのだと言う。
最後に医師は
「体調も怪我も順調に回復してきているから1ヶ月後には2人共、退院出来るよ!」
と告げると病室の外へ出て行った。
 しばらくして隣に寝ていた凛が目覚めた。
2人は視線を合わせ、
「遅いわね……」
「御免なさい……」
「ボロボロでしょ?あたし?」
「でも!大丈夫よ!」
「まるでミイラ女ね!」
少し顔を持ち上げ、全身に巻いてある包帯を見た。
それを見た凛は少し笑った。
「最後にウリエル・バラードに会った時、真実は凛ちゃんが知っているって言っていたの!」
と静かに言うと急に両目に涙を溜め、
「これで罪を償えたかなあ?」
と凛に質問した。
「大丈夫よ!怪獣世界から解放されて飛んで行くアトランティス大陸の住民達の魂を最後に見たわ!」
その答えを聞いた洋子は安心したのか、気が抜けて
「よかった!良かったわ!」
と静かに嬉し泣きを始めた。

 東京地球防衛軍本部。
 蓮は、レイに襲われて地球防衛軍本部の特殊生物病院に入院中で
もうじき退院となる尾崎のお見舞いに行った。お見舞い以外にも、
これまでのレイのディスプレイ殺人の犯行の動機等の真実を告げに行くのも目的だった。
 彼の体調は順調に回復し、かなり元気そうだった。
 蓮は尾崎のベッドの傍にある椅子に腰かけた。
「結局……レイのディスプレイ殺人の動機は何だったんだ?」
と尾崎。
「何処の病院でレイの不妊手術をしたか調べた結果、
どうやらロシアの地球防衛軍の特殊生物病院で行われたらしいですね」
と蓮。
「それで?」
「ロシア地球防衛軍の特殊生物病院側は、
上層部の何者かにかなり酷い圧力を掛けられたらしく、
医師達は患者の了承も無いまま強制的に不妊手術を行ったそうです。」
「酷い話だな……」
「その後、不妊手術に関わった看護婦や医師達が次々と変死した事も分かりました。」
「口封じか……」
「だからこれ以上は調査できませんでした。
それらの背景を考えればレイの行動も納得がいきます……
彼女は無理矢理、不妊手術を施された事で精神的にショックを受けたんだ……
それでも彼女は宇宙人の本能に従って子孫を残そうとした。
でもそれが出来ないから、結果的にディスプレイ殺人を始めてしまった」
「だが?あのM塩基破壊兵器は何処から?」
「さあ。彼女がどういうルートでそれを手に入れたかはまだ分かりません……
ただ彼女が単なる妄想では無く、理想の男性に望まれ愛され、
子供を生む夢を見ていた事は間違いないと思いますね。
あくまでも個人的な推測に過ぎないが、彼女は他の宇宙人や人間の男達を殺して、
自分だけのものにしようとした。
つまり代償です!」
「だから?他の宇宙人や人間の男達を殺したのか?」
蓮は頷くと話を続けた。
「つまり彼女は子供を作っている振りを繰り返して、
自分が本当に愛されている存在であると思おうとした。
恐らく彼女が、妄想や殺人癖を持つクローンの失敗作として、
幼少期の頃から何らかの虐待を受けたのが原因でしょう。
彼女は成人になった後も失敗作のクローン隠ぺいの為に何度も命を狙われ続けて育っています」
「君は彼女に同情しているのか?」
「彼女の事を思うと泣けてきます!何者かが彼女を悲しい怪物にしたんだ!
多分成人になった以上もう矯正は出来なかったでしょう……3年前から彼女はすでに殺人を重ねている」
「彼女が自殺をしたのは正しかったのか?」
「どの道、彼女の幻想を断ち切らない限り、一生その殺人を繰り返していたでしょうね……」
それからしばらく非常に重苦しい空気に包まれた。
 そこに尾崎の妻の優香と、一緒に帰って来た
優香の娘で蓮の妹でもある瑠璃が病室に入って来た。
瑠璃は先程の重苦しい空気を吹き飛ばすかのように
「パパ?元気?」
と笑顔で言った。
尾崎は笑顔で
「元気だよ!」
「良かった!ママも安心できるね!」
と瑠璃は母親の優香の顔を見た。
瑠璃と尾崎の笑顔につられ、蓮とゆかりも笑顔になった。
 瑠璃のおかげで蓮と尾崎はようやく重苦しい空気から解放され、病室は再び明るさを取り戻した。

 それから数ヵ月後。
 アメリカの病院では洋子の怪我は無事完治し、
そして凛も医師の精密診察を受け、最終的に何処も異常が無い事を告げられ
、2人は一緒に無事日本に帰る事が出来た。
 ちなみに覇王は日本の地球防衛軍専用の特別機で、
美雪は、ジラを調査していた神宮寺博士と一緒に国連の特別機で、
それぞれ別に次の仕事の為に日本へすでに帰っていた。
 ニックタトプロス博士は今頃、妻のオードリの待つアメリカの自宅へ帰っている事だろう。

 凛と洋子は千葉県・成田空港のターミナルに迎えに来ていた
蓮と山岸と再会した。
凛は笑顔で
「山岸君!久しぶり!」
山岸は
「凛ちゃん!洋子ちゃん!良かった無事で!」
と洋子と凛との再会を喜び合った。
凛に蓮は視線向けると
「どうして??洋子がアメリカに??あっちで一体何が??」
しかし凛は疲れた顔で
「それはまた今度の機会に話すわ!とにかく今疲れたの!」
と言うと蓮の肩をポンポンと叩き、山岸と手を繋ぎ、家へ帰る為、空港の廊下を歩き去った。
しばらくして洋子が
「さあ!帰りましょ!確か電話では新しいプロレス大会が3カ月後だっけ?」
蓮は
「ああ……そうだ!大丈夫か?体力的に?」
と日常の会話をしながら洋子と蓮はお互い右腕を組み、
2人は車で家に帰る為に山岸と凛とは反対の方向へ歩き去った。

(終章に続く)