(第4章)解放

(第4章)解放
 
ジョーダンの反論に触発され、ノートンまでこう反論した。
「確かに人間の脳を捕食する危険な生物だ。
だがあの目玉の異生物を強力なもう銃用の麻酔薬で眠らせれば!なんとかなる筈だ!」
どうやらこのジム、ジョナサンに何と言われようと2人はあの目玉の異生物を捕獲するつもりらしい。
ジョーダンとノートンはこう提案した。
「ではこうしよう。最初はネットの網のある部屋におびき寄せて捕獲しよう。」
「しかし捕獲できず、我々にもう一度、襲い掛かってきたら加速器の部屋に誘い、8次元の外に放り出す。」
「今、仲間が3人も殺されて、俺達が目玉の異生物に追いかけられて!
死にかけて!未だに捕獲のことしか頭にないのか?
彼らは共に実験を協力し信頼していた仲間が死んで!悲しんで!しかもアシュリーも行方不明なんだぞ!」
ジョナサンはとうとう怒り心頭になり、ジョーダンの白衣の胸倉を掴み、怒鳴り声を上げた。
「それに!あの目玉の異生物をこの極秘研究所内で野放しにできない。
奴が人間の脳をむさぼり食う事が分かっている以上、
俺達がいなくなってもこの研究所内に紛れこんだ人間を襲うかもしれない……」
ジムは怒りで頭に血が上っている自分のスタッフのジョナサンをなだめつつもそう言った。
「直ぐにでも行動を開始しないと、私は素粒子加速器の準備を始めよう」
ジム直ぐに自ら素粒子加速器の最終起動チェックを始めた。
「さて、僕も準備を始めよう!」
「了解!」
ジョナサンは一人で周囲の棚からたくさんの懐中電灯を集め始めた。
ジョナサンは周囲の棚か集めた懐中電灯を10本余り束にした後、黒いガムテープで固定した。
ジョーダンもノートンもそれに続いて対目玉の異生物様の懐中電灯を制作した。
ジムは懐中電灯のスイッチを一回、押すだけで10本全ての懐中電灯がつくように仕掛けを施した。
これはかなり強力な武器になるだろう。
体目玉の異生物の懐中電灯制作後、ジョーダンとノートンは捕獲する為に
必要な麻酔銃を取りにガラス張りの素粒子加速器のコントロール室から出て行った。
もちろん2人はほっといた。
ジムは再びキーボードを叩き、監視カメラで目玉の異生物の行方を追った。
その時、廊下で倒れているボビーとグラップの死体を見つけ、心が痛んだ。
監視カメラにはマックスが襲われた男子トイレ、素粒子加速器のある広い実験場。
大望遠鏡の展望室、先程、目玉の異生物に襲われたボビーとグラップがいる警備室。
今我々がいるガラス張りの素粒子加速器のコントロール室。
それとそれぞれのマックス、ジョーダン、アシュリー、ジム、ジョナサンの部屋。
アシュリーとジムは目を凝らして目玉の異生物とアシュリーの行方を追った。
目玉の異生物とアシュリーは何処にいるのか?
まさか?彼女の脳を利用して研究所の外へ逃げたのか?
ジムはそんな風に考え、不安が頭をよぎり、背筋が凍りついた。
ジョナサンが「おい」と声を上げた。
「なに?いたのか?」
「いや、何処にもいない。」
ジムは額に眉を寄せた。
その後、彼はこの極秘研究施設の見取り図を取り出した。
それによればあの目玉の異生物が眠っている空き研究所の天井裏にある
無数のダクトはまるでクモの巣の様に複雑に入り組んでいるらしく、
どこに繋がっているのか全く分からなかった。
その時、ジョナサンはふとノートンの部屋の監視カメラの映像が映らない事に気が付いた。
おかしいな。
ジョナサンはジムにそう報告した。
「まさか?目玉の異生物が監視カメラに気が付いたのか?」
ジムは何も映らないノートンの部屋の監視カメラを見ていた。
 
ガラス張りの素粒子加速器のコントロール室。
彼女は無事だろうか?
ふとジムはジョナサンにある疑問をぶつけた。                                                                  
「なあ、あの目玉の異生物は人間の脳を捕食して栄養分を摂取するだけなのか?」
ふと思いついたジョナサンの質問にジムはどう返答すればいいのか分からず、口ごもった。
「もしかしたら?あの目玉の異生物は高度な知能を持つ人間の脳を捕食する事で
人間の知識を取り込む能力があるのではないだろうか?」
「成程、つまりあいつはマックスやボビー、グラップの脳を捕食する事で
人間の知識を集め、この地球の人間側の知識を学習して行くのか?」
「ああ、そうか私達が8次元の扉を開けてしまったが為に
我々人類がかつて遭遇した事の無い、危険な8次元生物をこの世界に解放しまったのか」
ジムは自分達の平均的な現実世界を超越しようと試みた前代未聞の実験が
原因でボビーやグラップ、マックスを死に追いやった事に気づいた。
 
(第5章に続く)