(第35章)地球の旧支配者

(第35章)地球の旧支配者

 「これは何の冗談だ?」 
 そう、部屋の中にいた半ば腫瘍に 覆われた成人男性の姿をした怪物は一匹だけでは無かった。
6匹の異形の怪物が現れ、たちまちSPB(スピーシ・バック)を包囲した。
旧支配者クトゥルフは大昔にジュラ紀に怪獣を大量発生させ、 進化は安定し、原始アオシソウは死滅した。
しかしこの大戸島でゴジラのDNAを持つ共生型のアオシソウが発生した。
旧支配者クトゥルフはそれを持つ女性の遺骨を島上冬樹達を操り、捜させた。
そして女性の遺骨から発見した共生型アオシソウのDNAを利用し、
感染した人間を呉爾羅のDNAを持つ生物に変身させるウィルスをMJ12や島上冬樹に作らせた。
 その一方で今度は秘密結社ドラクルやアメリカ政府の一部の関係者を操った。
そして彼らにメガギラスの化石を探させた。
 そして原始アオシソウのDNAを利用してBウィルスを作らせた。
 つまりあいつは、恐らく2種類のウィルスを利用して
ダゴンやハイドラ、(深きものども)に当たるX星人以外の新しい眷属か。
 あるいは自らの同族を創造するのが目的だろう。
  スノウは黒いサングラスを掛けた。
 「ここで撃滅する!全員武器を構えろ!」
 ダグラス・ゴードン上級大佐は全隊員に号令を掛けた。 
ニック、グレン、杏子、ジェレル、尾崎の隊員はそれぞれの武器を構えた。
アヤノは何故か武器を構えず、笑みを浮かべていた。 
この瞬間を待っていたわ。
いよいよ偉大なる異形の神『呉爾羅』に変身する。
あたしはあらゆる恐怖を超越した神に近い存在になるのよ。
アヤノは両腕を大きく広げた。
しかし、何も起こらなかった。 
なんで?変身して!お願い!お願い! 
だが幾ら心の中で叫び声を上げても、彼女は人間の形態を保ち続け、 
 呉爾羅に変身する兆しが全くなかった。
異形の怪物は接近すると両腕を伸ばし、鋭い5本の爪でアヤノの両肩をがっしりと掴んだ。 
無数に生えた牙のある大口を大きく開くと長い舌を伸ばした。 
異形の怪物は舌の先端の鋭い槍をアヤノの左胸に突き刺した。 
 ズルズルと音を立てて、何かを吸い出そうとした。
「うっ!がっ!はっ!」 
彼女は素早く両手を前に勢い良く突き出し、 異形の怪物の胸をドオン!と押した。
そして異形の怪物が一瞬ひるんだ隙に身体を大きく捻り、回し蹴りを食らわせた。
異形の怪物は横に一回転して、近くのロッカーに叩きつけられた。 
アヤノは素早く両手でマシンガンを構えると引き金を引いた。 
 異形の怪物はたちまち蜂の巣になったあとようやく力尽き、全身が黒く変色した。
床には赤い血とバラバラになり黒くなった腫瘍細胞が残された。
スノウは冷静な表情で腰の二つのホルスターから 2丁のメ―サ拳銃を取り出した。
目にもとまらぬ速さで2丁のトカレフS2000を構えると両方同時に引き金を5回引いた。
 彼が使用している9mmメ―サバラベラム光弾は
普通の拳銃で歯が立たない怪獣も、2,3発食らえば、
数秒で失神あるいは即死させる程威力を高めた対怪獣用銃弾である。
杏子は手前にいた怪物に向かってメ―サー・アサルトライフルの引き金を引いた。
メ―サ光弾は怪物の胸や腹部を連続で撃ち抜いた。
 しかし5本の鋭い爪が杏子の腹を深々と切り裂いた。 
 「あああっ!」
さらにもう一匹が杏子の背後に接近し無数に生えた牙のある大口を大きく開くと長い舌を伸ばした。
ダアン!と銃声がした。
目の前には尾崎がメ―サスナイパーライフルを構えていた。 
彼が放ったメ―サ光弾は異形の怪物の額を狙い違わず正確に撃ち抜いていた。 
 異形の怪物は床に倒れ、全身が黒く変色した。 
 「大丈夫か?」
尾崎は杏子に肩を回した。
「怪我人が出た!医療兵!」
アヤノは2人の元に急いで駆け寄った。 
「大丈夫か傷は?それにどこか具合が悪いのか?顔色が……」
尾崎はアヤノの明らかに土気色になった顔を見るなりそう言った。
「傷は浅いし、動脈まで達していないから大丈夫よ。  顔色もなんでもないわ。」
アヤノは杏子と尾崎の所に駆け寄ると医療セットを使い、  黙々と杏子の腹の傷の止血を始めた。
おぞましい叫び声が聞こえ、ニックとグレンは心臓が凍りついた。
「なんだ?今の叫び声は?」 
暗闇から異形の怪物が現れた。 
しかも今まで遭遇した異形の怪物とは形が異なって両腕はナイフ状に変形していた。
「形が違うぞ!気を付けろ!」 
その怪物はニックを青い複眼で捉えると猛ダッシュで接近して来た。 
 「うわあああっ!こっち来んな!」 
ニックは恐怖に歪んだ表情でメーサー・アサルトライフル
引き金をバッテリーが尽きるまで何度も引き続けた。
異形の怪物は全身を連続で撃ち抜かれ、蜂の巣になった。 
だがその程度の攻撃では倒れる事無く、あっという間に
 ニックとの距離を縮めた。
「グレン!グレン・クラーク!助けてくれ!助けてくれ!」
ニックの助けを求める叫び声を聞きつけた 
グレンが現れ、メ―サ・カッターガンの引き金を2回引いた。 
メーサー・カッターガンの刃の形をした弾は
異形の怪物のナイフ状に変形した右腕と左腕を切断した。 
両腕を失った異形の怪物はおぞましい断末魔の絶叫を上げると床に倒れた。 

大戸島近海。
 初代ゴジラのクローンの両腕の皮膚には大きな
青い腫瘍が急激に両腕の皮膚に広がりつつあった。
 僕は気が遠くなりそうな激痛と共に死の恐怖に駆られた。
初代ゴジラのクローンは急に起こった頭痛や腰の激痛を始め、
激しい死の恐怖の余り、起き上がったままの姿勢で意識を失った。
ゴジラは突然の出来事に目を丸くした。
 なんだ?同族の身に一体何が起こったんだ?
初代ゴジラのクローンは両肩から両腕にかけてやはり無数の青い腫瘍に覆われていた。
全身は虹色の球体の形をした腫瘍に覆われた。 
背中からは虹色の触手が生えていた。
さらに両胸と両腹部から4本の青い昆虫の外骨格に覆われた触手が生え始めた。
意識を失った初代ゴジラのクローンの全身は巨大な虹色に輝く胸部に取り込まれた。
更にドックンドックンと心臓が動き出し、不気味な鼓動が聞こえた。
初代ゴジラのクローンの姿はまるで虹色に輝く円筒状の生物だった 。 

(第36章に続く)