(第39章)宇宙的恐怖

(第39章)宇宙的恐怖
 
ゴジラは砂煙を上げて突っ込んで来たリヴァイアサンの口の中に直接、
今までよりも一番強烈な破壊力を誇る放射熱線を叩きこんだ。
凄まじい爆発音と共に巨大な口の内部にある巨大な毒矢は花の様に円形に弾け飛んだ。
リヴァイアサンはその勢いで遠くに弾き飛ばされた。
更にゴジラは追い打ちを掛ける様にもう一度、放射熱線を吐いた。
放射熱線はリヴァイアサンの頭部の三角形の強固な兜の深いヒビのある場所に正確に命中した。
同時に強固な兜は瞬時に砕け散り、脳の一部を爆破した。          
リヴァイアサンは苦しみと激痛の余り、甲高い咆哮を上げた。
そしてバタンと砂煙を上げ、砂浜に倒れ、僅かに身体を痙攣させた後、動かなくなった。
よし、これでよし。たとえあの攻撃で死んでいなくても仮死状態なら時間は十分稼げる。
必ず、命を掛けてでも助ける。
同時にゴジラの背びれと全身が今までよりもさらに強く美しく青白く輝いた。
さらに地面の岩は徐々にヒビが入り、砕け、ゴジラの立っていた周囲は大きなクレーターが出来た。
ゴジラは勢い良く両腕を広げた。
ぐううおおおおーおおおーおおん!
ゴジラの背びれと全身の青白い光はさらに強さを増していた。
余りの高熱で周囲に蜃気楼が発生し、風景が歪んでいた。
同時に両掌、両足、脇腹の皮膚が大きく裂け、赤い血が次々とにじみ出た。
ゴジラは口を大きく開けた。
やがて口の周囲に青白い粒子が集まり始めた。
そして青白い粒子は巨大な光の槍に変わった。
死ぬなあああああっ!生きろおおっ!
ゴジラは青白い粒子状の光の槍を放った。
粒子状の光の槍は真っすぐ初代ゴジラのクローンが取り込まれた
虹色に輝く円筒状の怪物に向かって飛んできた。
そして粒子状の槍は初代ゴジラのクローンの頭部に直撃した。
やがて虹色に輝く円筒状の生物の全身は青白い光に包まれた。
虹色の無数の球体に覆われた虹色の円筒状の生物に取り込まれた
初代ゴジラのクローンはぼんやりとした輪郭の灰色のスーツを着た人間の男が言った
言葉を真に受けた初代ゴジラのクローンは必死にゴジラに助けを求めた。
嫌だ!死にたくない!ゴジラ助けて!助けてええええええっ!
 
次の瞬間、目の前に青白い光が射した。
目の前にはボロボロで同時に両掌、両足、脇腹の皮膚が大きく裂け、
赤い血を流し、口を大きく開けたまま座り込んでいるゴジラが見えた。
頭の中にゴジラの力強い咆哮と言葉が流れ込んだ。
死ぬなあああああっ!生きろおおおおっ!と。
初代ゴジラのクローンは心の底から何かが熱い思いが湧き上がるのを感じた。
そう!僕はまだ生きたい!生きて!僕はゴジラに恩返しをしたい!
既に初代ゴジラの両目はオレンジ色に力強く輝いていた。
 
やった。当たったぞ。
そう思いゴジラはそのまま砂浜に座りこんだ。
完全に力を失い、全身はおろか指一本さえも動かせなかった。
しかし初代ゴジラのクローンを取り込んだ虹色に輝く円筒状の生物には変化は無かった。
くそっ。失敗か?
しばらくして虹色に輝く円筒状の生物に再び変化が起こった。
突如、背中から無数に生えた虹色の触角と両胸と両腹部から生えた4本の
青い昆虫の外骨格に覆われた触手をバタバタとくねらせ、大きくもがき苦しみ始めた。
既に名状しがたい言葉は怒りと苦悶に満ちた名状しがたい不気味な言葉に変わっていた。
ゴジラはその様子を静かに見守っていた。
 
大戸島の大戸町病院。
病院の個室で島上冬樹はようやく睡眠から覚めた。
「気がついたかしら?」
島上冬樹が目を開けると目の前に胸元まで伸びたブロンドの髪とふっくらとした顔が見えた。
音無凛だ。
「なにをしているのかね?」
「貴方が心配で様子を見に来たの」
凛はにっこりと笑った。
島上冬樹は静かに笑みを浮かべこう言った。
「何故?あいつらイースの種族は私達の邪魔をするんだ?
門にして鍵であるヨグーソートスが目覚めれば!
全人類は凶暴な宇宙人や怪獣達、放射線放射能等のあらゆる恐怖を超越した存在になるんだ!
しかもあの忌まわしい旧支配者クトゥルフがいるルルイエが浮上する前に早く手を打たなければ!
我々人類は破滅する!」
「それはどういう事?」
凛は大きな目をぱちくりさせた。
島上冬樹は全身を震わせこう言った。
「あいつらは……恐ろしい存在だ……私は酷い悪夢を見せられた。」
それだけ言うといきなり黙り込んだ。
長い沈黙の後、山岸が何か思いつめた様子で入ってきた。
「……」
「どうしたの?」
しかし山岸は暫く黙っていたがやがて口を開きこう言った。
「島上冬樹さん。落ち着いてよく聞いてください。
貴方は旧支配者のクトゥルフに強力なテレパシーで洗脳されていました。」
「なんだと?何を言うのかね?君は?」
「貴方を襲ったアメリカ人の男から聞きました。
「貴方は自覚症状が無いまま奴らに都合のいい様に利用されていたんです。」
「嘘だ……嘘をつくなああっ!」
島上冬樹はいきなり声を荒げた。
「本当です。だからお願いですから落ち着いて聞いてください。」
「……」
「貴方は私達と初めて会った時、嬉しそうに
『全人類やミュータント達が呉爾羅族に変身すれば放射能放射線物質に汚染される恐怖。
凶暴な怪獣や宇宙人の恐怖から解放される』といっていましたね?」
「ああ。」
「でも貴方が一番の最優先で解放されたいのは旧支配者クトゥルフ
もたらす宇宙的恐怖ではないでしようか?」
「そうです。それのどこが悪いんですか?」
「悪いとは言っていません。
「しかし本当にそれでいいのでしようか?」
「なにがいいたいのか?分かりませんが……」
 
(第40章に続く)