(第40章)愛する者達。

(第40章)愛する者達。
 
大戸島病院・島上冬樹の病室。
「貴方や他の人達は放射能放射線物質に汚染される恐怖や凶暴な怪獣や宇宙人の恐怖に怯えています。
しかし中には放射能放射線物質に汚染される恐怖や凶暴な怪獣や宇宙人の恐怖に真剣に向き合い、
必死に闘い続け、拒否し続ける事を選択した善人な人達もいる筈です。
多分、偉大なるイースの種族達も自分の種族の未来を守る為に
旧支配者クトゥルフがもたらす宇宙的恐怖に真剣に向き合い、今必死に戦っているんです。」
「そうですね。しかし」
「私は心の底から愛する人を守る為に……旧支配者クトゥルフがもたらす宇宙的恐怖と闘います!」
山岸がそう言った瞬間、凛は心臓の鼓動が高まるのを感じた。
同時に彼女の黒い瞳は徐々に深紅色に変化し、犬歯が黄金の牙に変形した。
「ははっ!何を言い出すかと思えば、山岸雄介さん、落ち着いてよく考えてみなさい。
人間は集団では怪獣を何匹か追い払えても旧支配者のクトゥルフの前に
個人の力だけではどうしようもありません。
宇宙的恐怖と闘うだけ無駄です。
貴方は心が崩壊し、狂い死ぬか、惨殺されるか、どう転んでも絶望しかありませんよ?」
「闘って無駄な筈はありません!僕は例え得体の知れない敵に襲われようとも
彼女と子供を守り抜く事に決めました!」
彼の力強い言葉を聞いた凛は嬉しさの余り、両目に涙を浮かべた。
さらに山岸は凛の深紅色の瞳やピンク色の唇からチラリと見えた黄金の牙を見ると優しく微笑み、こう言った。
「それに僕はキングギドラに似た深紅の瞳と黄金の牙がある凛ちゃんの表情は凄く魅力的だから、
その凛ちゃんの表情を守りたい!自分が死ぬ事になっても!」
凛は山岸の不意に口走った褒め言葉に思わず両目に涙を浮かべたまま照れ笑いを浮かべた。
「やれやれ、君達の精神の強さには驚かされるよ。」
 
大戸島の無人島。
次の瞬間、円筒状の生物の全身が白い炎に包まれた。
背中から生えた虹色の触角や両胸や両腹部から生えた
4本の青い昆虫の外骨格に覆われた触手をバタバタとくねらせた。
ゴジラは人間の想像が及ばない様な高温と激痛で苦しみのたうち回っている円筒状生物を冷静に観察した。
やはり、思った通り、あれはヨグーソートスでは無かった。
あれは邪悪な死霊獣の一種だろう。
やがて初代ゴジラのクローンを取り込んだ巨大な虹色に輝く円筒状の生物の肉体は徐々に虹色の光を失った。
円筒状の生物の肉体は背中から生えた虹色の触角や両胸や両腹部から生えた
4本の青い昆虫の外骨格に覆われた触手の先端に至るまで純白の業火で焼き尽されていた。
最後に断末魔の甲高い叫び声と共に円筒状生物の肉体は真っ黒な塵となり、爆発し、崩壊した。
同時に初代ゴジラのクローンが現れ、そのまま地面に落下し、仰向けに倒れた。
やがて初代ゴジラのクローンはフラフラと起き上がった。
グウオオオオン!
僕は大きく深呼吸した後、強烈な咆哮を上げた。
すると失っていた3列の背びれや両腕は切断面からビキッと音を立てて元通りに再生した。
ゴジラはその姿を見て安心した表情をした。
よし、これで彼は大丈夫だ。
例の毒も自らの生命力で解毒も出来ている。
あとは……。
ゴジラは放射熱線により強固な兜を砕き、脳の一部を爆破され、仮死状態のリヴァイアサンを見た。
リヴァイアサンは砂浜に倒れたたままピクリとも動かなかった。
まさか?あれで死んだのか?
ゴジラは半信半疑になった。
だが急にリヴァイアサンは名状し難いおぞましく甲高い鳴き声を上げて起き上がった。
やはり、駄目だったか……
 
大戸島病院の病室では山岸の話は続いていた。
「僕は彼女を心の底から愛しています。」
「だが、今まで我々人間は肉食の怪獣達に餌にされ、建物ごと踏みつぶされ、
今まで殺されて来たじゃないですか?
ミュータントもX星人やカイザーによって操られ既に絶滅寸前じゃないですか?
そんなちっぽけな存在が旧支配者のクトゥルフに勝てる訳がない……。」
島上冬樹は首を左右に振りそう反論した。
「Gコロニ計画が成功しなければ我々は旧支配者クトゥルフに滅ぼされてしまいます。」
「Gコロニ計画は奴らが……」
「違う!我々人間の計画だ!断じて旧支配者クトゥルフの計画では無い!」
島上冬樹はいきなり声を荒げた。
「いいですか?2030年の現在までクトゥルフ族は星辰の変化が引き起こした地殻変動によって
ルルイエと共に眠りについています!いずれ彼らは星辰が正しい位置に戻り、
輝かしい復活を遂げ、再びこの地球の支配者として返り咲く事になる。
これが何を意味しているか分かりますか?」
「人類の滅亡ですね?」
山岸は疲れたのでカメラを構え直しそう言った。
ちなみにカメラの録画スイッチ入れてあった。
そこに蓮が病室に入って来た。
「一体?何を怒鳴り合っているんだ?」
島上冬樹は病室のリモコンを手に取り、テレビを付けた。
テレビには大戸島テロに続いて別のニュースが流れていた。
「大戸島近海の無人島で正体不明の虹色の円筒状の怪獣が出現しました。」
アナウンサーは緊迫した表情でニュースの原稿を読み上げていた。
「この虹色の円筒状の怪獣の正体は何なのか?現在国連は調査中とのことです。」
「円筒状の怪獣?違うぞ。ヨグーソートスは沸騰するように泡立ち光り輝く
無数の触手を備えた不定形の生物の筈だ。
畜生!MJ12の地球防衛軍の司令官共は何をしているんだ!
結局は不完全な儀式だったのか。
さらにニュースの続きが流れた。
「えー先程、円筒状の生物は突如、内部から焼き尽くされ、完全に消滅しました。
さらに不思議な事に内部から初代ゴジラに類似した怪獣が出現したと言う情報が入っており……。
この奇妙な現象に国連や地球防衛軍の関係者は動揺を隠せずにいます。」
「なんだって!Gコロニー計画の要であり唯一の鍵が。
マズイ!マズイぞ!このままでは人類は滅亡してしまう!」
「島上冬樹さん。」
「何も言うなよ……Gコロニー計画は断じて旧支配者クトゥルフの計画では無い。
我々人間の計画だ!
私もMJ12のメンバーも奴のテレパシーに洗脳されていない!
ヨグーソートスの召喚も!我々人間の計画だ!」
「本当にそうでしようか?」
すかさず山岸はそう言った。
 
(第41章に続く)