(第1章)仮面

(第1章)仮面
 
真夜中、ニューヨーク市・マンハッタン・タイムズ・スクエア
路地にあるカラス・メリン・リーガン教会前を
仕事が夜遅くまでかかり、急いで帰路に着く
黒い上着と白いシャツを着た若い女性が早足で歩いていた。
彼女の名前はモイラ・バートン。
「あーつ、最悪だ!早く帰るつもりだったのに!」
彼女は茶色の鞄を背中に背負い、駆け足で歩き続けた。
一方、カラス・メリン・リーガン教会の
屋根の上に不気味な生物の影が立っていた。
そして不気味な生物の影は教会の屋根から飛び上がった。
続けて両肩から生えたコウモリの翼で滑空し、
モイラの目の前にドスッと着地した。
「うわわわわわっ!なんだよ!あんた!」
突然、目の前に現れた不気味な生物の影に驚き、3歩後退した。
そしてモイラはその不気味な生物の影をまじまじと見た。
頭部に赤いトサカのような物があった。
更に両耳はコウモリの形をしていた。
細長いモノアイは真っ赤に光っていた。
首筋には真っ赤で浮き出た血管のような模様と6対の
棘が付いた花弁の形をした襟が付いていた。
両肩から細長いコウモリの翼が生えていた。
胸部にも浮き出た血管のような模様があった。
胸部の中央には手術か何かで縫い合わせた様な糸が何本も横に並んでいた。
腹部には割れた腹筋の形をした6個の赤い四角いものが付いており、
腹筋の内側にはやはり6対のボルトで留められた
三角形の金属の板が貼り付けられていた。
両脚の辺りにも真っ赤に浮き出た血管の模様があった。
それと6対の棘の付いた花弁のような物が付いており、
両足は三角形の鎧に覆われていた。
両足の踵には鋭利な長い棘が生えていた。
両足は5本の爪では無く、一本の銀色に輝く巨大な鉤爪だった。
また両脚の三角形の鎧は真っ黒でやはり赤い血管が浮き出た模様があった。
不気味な怪物は細長くしかも赤い血管が
浮き出たような模様の付いた右腕を上げた。
そして真っ赤な細長い爪の一本をモイラに向けた。
しかも両腕の肘の辺りには6対の棘の付いた花弁のような物が付いていた。
すると不気味な怪物は流暢な英語で話し始めた。
「私は魔獣ホラーパズズ
パズズ?冗談だろ?あれはエクソシストの話だろ?」
モイラはつい鼻で笑った。
しかし次のパズズの行動を見た途端、モイラは背筋が凍りついた。
パズズの後頭部からするすると4本の手術用のメスが
先端に装着された細長い触手を伸びて来たのだ。
「うっ!うわああああっ!」
モイラは叫んだ後、慌てて鞄から拳銃を取り出した。
だがパズズの後頭部から伸びた細長い触手先端を
モイラに向かって素早く伸ばした。
「痛っ!痛い!痛い!痛い!」
細長い触手の先端に装着された手術用のメスは
モイラの両腕の肘と両足の膝に突き刺さった。
更にモイラの身体を軽々と持ち上げた。
「畜生!離せ!離しやがれ!」
モイラはジタバタと両腕と両足を振り回し、抵抗した。
パズズは再び英語で得意満面に話し始めた。
「おめでとう!モイラ・バートン!
君はドクター・リーパーに選ばれたのだ!」
パズズはパチパチパチと拍手を始めた。
「はあ?こいつ何を言ってやがる!」
モイラは両腕と両足を振り回し、抵抗しながらそう言った。
「これから君を改造させて貰うよ!
賢者の石と石の力を目覚めさせる薬を使ってね!」
「なっ!なんだって?」
モイラは状況の呑み込めずにいた。
パズズは後頭部から伸びた先端に4本のメスが装着された
細長い触手の他にもう3本の細長い触手を伸ばした。
2本の細長い触手の先端には注射器が付いていた。
残り一本の触手の先端には手術用のメスが付いていた。
パズズは先端に手術用のメスの付いた細長い触手を真下に勢い良く振った。
同時に破ける大きな音と共に黒い上着と白いシャツ、
下着は真っ二つに切り裂かれた。
そして大きな白い肌の丸い両乳房が露わとなった。
モイラは悲鳴を上げた。
続けて2本の細長い触手の先端の鋭利な
注射器の針が両乳房に徐々に迫って来た。
「うあ、止めろ!乳首に刺さる!刺さるからやめろ!」
「もう、抵抗しても無駄だよ。モイラ・バートン君」
その時、ヴオオオン!ヴオオオン!と大きなバイクの唸る音がした。
パズズとモイラはいきなり聞こえたバイクの唸る音に驚いた。
反射的に二人はバイク音がした方を見た。
そこに黒いジャンバーにズボンを履いた黒ずくめの人物が乗った
緑色のハーレが飛び込んで来た。
緑色のハーレは時速100kmのスピードで躊躇なく
パズズの横腹に大きな前輪を叩き付けた。
「ぐおおおおおおっ!」
パズズはそのまま吹き飛ばされ、コンクリートの地面に叩きつけられた。
その後、パズズの身体は不様にゴロゴロと転がった。
モイラも突き刺さっていた手術用のメスが外れ、
勢い良くコンクリートに落下しかけた。
だが咄嗟にモイラは受け身をしたので強く叩きつけられる事は無かった。
モイラは暫くうーんと唸った。
うつ伏せのままゆっくりと頭を起こした。
緑色のハーレに乗った黒ずくめの人物が降りた。
そして黒いヘルメットを脱いだ。
彼女は黒ずくめの人物の顔を見て驚いた。
黒ずくめの人物は三カ月以上前に病院から
失踪したある女性の姿に似ていた。
金髪を帯びた茶髪のポニーテール。
青い瞳。
モイラさえも羨ましいと思う程の美顔と美しいプロポーション
大きな両胸に丸いお尻。
見間違い様が無かった。
パズズはフラフラと起き上がった。
そして黒ずくめの女性を指さし、こう叫んだ。
「我々、魔獣ホラーをまだ狩り続けるのかね?……ジル・バレンタイン!」
「当然よ!貴方達の居場所はここには無い!」
ジルは両手で黒いジャンバーを左右に開いた。
腰にはベルトが付いていた。
更に円形のバックルについている球体の宝石が真っ赤に発光した。
一瞬で黒いジャンバーを着た上半身は深い胸の谷間と両乳房の
くっきりとした輪郭に沿って緑色の分厚い鎧に覆われた。
両肩から2対の緑色の翼が生えていた。
黒いジャンバーに覆われていたしなやかな
両腕も緑色の円形の分厚い鎧に覆われた。
また関節も灰色の昆虫に似た節に変わっていた。
ズボンに覆われた大きなお尻も一瞬で上半身同様、
真っ黒に輝くラバースーツに覆われた。
真っ黒に輝くラバースーツに覆われた長く
しなやかな両脚も緑色の鎧に覆われていた。
ジルは2対の緑色に太い触角。
燃える様な昆虫に似た複眼。
ひし形に開閉する大きな口の上顎に4対の鋭利な牙が付いた
マスクを頭部に両手で装着した。
金髪を帯びた茶髪のポニーテールは風になびいていた。
ジルは両腕を天に向かって勢い良く突き上げた。
「ウ二ヤアアアアアアアアアアアッ!」
ジルはまるで野獣のような凄まじい咆哮を上げた。
 
(第2章に続く)