(第2章)野獣

 
(第2章)野獣
 
「ウニャアアアアアアッ!」
異形の戦士に変身したジルはまるで獣のような凄まじい咆哮を上げた。
モイラはただ茫然と仮面を被り、
異形の姿に変身したジルの背中を見ていた。
ふとモイラは異形の姿に変身したジルの背中を見ている内に。
ジルの背中の背骨に沿って青く輝く管が付いている事に気付いた。
もちろん左右は分厚い緑の鎧に覆われていた。
モイラはその彼女の背中を見ている内に最近、発売された
XBOX360の専用ソフト『デッドスペース24』を思い出した。
これは前作の『デッドスペース3』
を平行世界(パラレルワールド)にした上で
前々作の『デッドスペース2』の続きから
全く新しいストーリーが展開されているらしい。
またこの最新作のシナリオライター
日本人で畑内と言う名前の人物が書いているらしい。
それを思い出した後、今度は昭和の仮面ライダーのオープニングソング
『レッッゴー!!ライダーキック』が脳裏で再生している事に驚いた。
異形の戦士となったジルを見ていたパズズは口元を緩ませ、笑い始めた。
「馬鹿な女!己の欲望や邪心の為では無く!
人間を守ると言う神の命に背く反逆者になり下がるとは!」
ジルは再び凄まじい咆哮を上げた。
「ウニャアアアアアアッ!」                                   
パズズは後頭部から多数の細長い触手を伸ばした。
そして多数の細長い触手はジルの身体を絡め取った。
「これで動けまい!……なに!」
ジルは両腕の緑色の鎧を膨張させた。
同時に全身を絡め取っていた多数の細長い触手はブチブチと
大きな音を立てて、全て引き千切られて行った。
たちまちジルは多数の触手の拘束から自由の身になった。
ジルは甲高い咆哮を上げた。
「ウニャアアアアアアッ!」
ひし形の口を大きく開けた。
上顎の4対の鋭利な牙でパズズの首筋に噛みついた。
4対の鋭利な牙はパズズの首筋に深々と食い込んだ。
続けてパズズの肉を噛みちぎった。
パズズの首筋からどす黒い血が噴水の様に噴き出た。
ジルの闘い方は今までとは異なり、まるで野獣の様だった。
「ぐあああああああああああっ!」
パズズは首筋の激痛で絶叫した。
続けてジルは両手の高周波振動する細長い爪で
パズズの左右の胸部と顔面を切り裂いた。
パズズは吹っ飛ばされ、コンクリートの床に叩きつけられた。
「くぞっ!」
パパズは十字架の形をした長剣を取り出した。
しかもそれは反キリストの逆十字架だった。
「おのれ!反逆者め!死ぬがいいっ!」
パズズは絶叫すると逆十字架の形をした
両刃の長剣をジル頭部目掛けて振り降ろした。
しかしジルはパズズの予想以上素早く右腕を振った。
パキイン!
パズズが降り降ろされた逆十字架の長剣の刀身は
高周波振動をする細長い爪により、瞬時に切断された。
続けてジルは身体を大きく捻り、しなやかで長い右脚を振った。
そしてパズズの右頬に回し蹴りを喰らわせた。
パズズの身体は空中をクルクルと駒の様に回転し、
コンクリートの床にたたき伏せられた。
パズズは痛みで大きく獣の様な声で唸った。
ジルは仰向けに倒れているパズズを無理矢理立たせた。
続けてパズズの両肩のコウモリの翼を両手で掴んだ。
そしてコンクリートの床を踏みしめ、一気に10mジャンプした。
両腕を振り上げ、パズズを逆さまに持ち上げた。
「馬鹿な!賢者の石の力を取り込んだ!この私が……」
パズズは逆さまの状態のまま呻くようにそう言った。
ジルは天地逆さまの状態のパズズの身体をきりもみ
回転させるように左右の手を半円に大きく捻った。
ジルは容赦なくパズズの身体をバスケットボールの様に放り投げた。
「ぐああああああっ!」
パズズは天地逆さまのままの状態で身体を回転させ、吹き飛ばされた。
そのまま大きく半円を描き、頭部からコンクリートの床に衝突した。
グキリィッ!と非常に生々しくも痛々しいへし首が折れた様な音が聞えた。
ジルは両足でコンクリートの床に着地した。
再びジルはひし形の大きな口を開けた。
「ウニャアアアアアアッ!」
ジルは獣のような咆哮を上げた。
続けて右手の甲からニョキッと長く黄色い鉤爪を生やした。
両足を踏みしめ、フラフラと立ち上がった
パズズに向かって5mもジャンプした。
右手の甲から伸びた黄色の鉤爪をパズズに向け、急降下した。
「うっ!くそっ!信じられん!何故だ!何故だ!何故だ!」
ジルは右手の甲から伸びた長く黄色い鉤爪に賢者の石の力を収束させた。
そして右手の甲の鉤爪は真っ赤に輝いた。
やがて真っ赤に輝く右手の甲の鉤爪はパズズの胸部に突き刺さった。
「うっ!ぐっ!がっ!」
パズズは胸部の激痛で呻き声を上げた。
「ウニャアアアアアアッ!」
ジルは野獣の咆哮を上げた。
ジルは勢い良く右脚を振り上げた。
そしてパズズの下腹部を蹴り上げた。
「ぐああああああああああっ!」
パズズは絶叫し、身体をくの字に曲げ、3mも吹き飛ばされた。
パズズはまたもコンクリートの地面に叩き伏せられた。
「うっ!ぐあっ!ジル!ジル・バレンタイン
こっ!こっ!こっ!これから!
これからだ!これから地獄が始まるぞ!
お前に!ソフィア・マーカーは封印できない!
何故なら……ソフィア・マーカーはお前の……
うっ!ぐああああああああっ!」
パズズは断末魔の絶叫を上げた後、仰向けにコンクリートの床に倒れた。
同時にパズズの身体は爆四散し、完全に消滅した。
それから床に落ちていた十字架の両刃の長剣の持ち手と切断された
剣の刀身はシューシューと黒い煙を上げた後、一瞬だけ紫色に輝いた。
やがて十字架の両刃の長剣の持ち手と
切断された剣の刀身は完全に消滅した。
そこには何も残ってはいなかった。
「大丈夫?」
ジルは仮面を脱ぎ、うつ伏せのまま倒れているモイラを助け起こした。
「だっ!だっ!大丈夫!くそっ!足が……」
モイラは舌打ちした。
ジルが見ると脚の膝の皿から血が流れていた。
モイラはジルに支えられフラフラと立ち上がった。
立ち上がれるものの上手く歩けなかった。
どうしても痛みで足を引きずってしまう。
「しょうが無いわね……」
ジルも流石に上着とシャツが真っ二つに切断され、両乳房が露わにされ、
両腕と両脚を怪我しているモイラを残してはいけなかった。
こんな姿で家に帰ったら父親のバリー・バートンも心配するに違いない。
バリーとは洋館事件とラクーンシティ壊滅事件で
お世話になった元STARSの仲間だった。
また自分のパートナーのクリスとも家族ぐるみ付き合いだった。
そう言う事情もあり、ジルはモイラにこう言った。
「あたしの正体誰も言わないことを約束してくれるかしら?」
「えっ?どうして?凄くカッコよかったのに……
それにみんな心配しているよ!」
「ええ、わかっているわ。でも駄目なの。
貴方が遭遇したあいつも他人に知られちゃいけないの!
出来れば早急に忘れて欲しい……」
パズズの事?あいつ一体?まさか本物の悪魔なの?」
「詳しくは言えないわ。隠れ家で少しだけ話してあげる。」
ジルはモイラの右腕を自分の右肩に回して立ち上がらせた。
その後、ジルはモイラを緑色のハーレに乗せた。
ヴオオオオン!ヴオオオオン!ヴオオオオオン!
バイク音を鳴らし、モイラを乗せた緑色のハーレは
カラス・メリン・リーガン教会を後にし、走り去った。
 
(第3章に続く)