(第7章)手術

(第7章)手術
 
ニューヨーク・マンハッタンの摩天楼の中心にある聖ミカエル病院の
精神科に勤務するマルセロ・タワノビッチは様々な症状に苦しむ患者の為に
全力で治療に取り組み、過密な仕事を
真面目にこなす優秀な精神科医だった。
しかも彼は他の精神科医以上に優しくどんなに患者に酷い言葉を言われても
暴力を振るわれても決して怯む事無く、患者に真っ向から対話し、
これまで多くの精神病患者達やその家族の心を救って来た。
そして彼のような精神科医になろうと多くの研修生達が集まって来た。
彼は多くの患者やその家族達からは『天使』と呼ばれていた。
マルセロは自分のディスクの椅子の上にドカッと座った。
私は優秀な精神科医の功績をBSAAの病院から認められた。
そして私は一人のBSAAの隊員の女性
の精神的リハビリを上司の医師に任された。
その女性の名前はジル・バレンタイン
彼女は元STAS隊員でアンブレラ社が開発した
Tウィルスの漏洩事故を起こし、
洋館はゾンビや怪物だらけとなった洋館や
ラクーンシティからも洋館内に設置された自爆装置の作動や
米政府のミサイル攻撃の前にどちらもヘリで脱出を果たしている。
それ以降は対バイオテロ組織BSAAのオリジナルイレブン
としてバイオテロに勇敢に立ち向かっていたそうだ。
6年前のアフリカのキジュジュ自治区で起こったバイオハザード事件の際、
宿敵のアルバート・ウェスカーと言う男に囚われ、
P30と言う薬品を用いて彼女を洗脳し、バイオテロに加担させた。
彼女はBSAAのエージェントのクリス・レッドフィールド
シェバ・アローマーにより救出された。
そしてバイオテロの主犯格であるアルバート・ウェスカーは死亡した。
彼女はP30の長期投与による副作用で肌の色が若干白化し、
黒味を帯びた茶色から金髪に変化していた。
しかし私が薬を体外に排出させる作用のある薬を幾つか処方し、
さらに自然の代謝によってP30のほとんど体外に排出された。
お陰で彼女はウェスカーの洗脳から解放された。
同時に薬による超人的な力は失った。
しかし肉体は戻りつつあってもウェスカーと言う男に洗脳され、
何の罪の無い人々にウィルスや寄生生物を与え、恐怖と混沌をもたらし、
バイオテロに無理矢理、加担させられた事実が後遺症となり、
彼女の心を長期間苦しめ続けていた。
彼女は6年経過した今こそ、だいぶ落ち着いたが。
入院当初は毎夜寝る度に罪のない人々の無念の助けを乞う悲鳴に近い叫び。
他にも許しを乞うアーヴィングと言う男に
プラーガと言う寄生生物を押し付け、
責任を取る様に迫った自分の声。
本当は自分の意思では無くウェスカーと言う男の意思である筈なのに。
彼らの声は彼女の頭の中でしつこく聞こえ続けた。
その度にジルは病院の個室のベッドの布団に潜り込んだ。
布団の中で生まれたばかりの赤ん坊のように身体を丸めた。
自分の声や助けを乞う悲鳴に近い叫び声が止むまで両手で耳を塞ぎ、
唇を噛みしめ、辛抱強く耐え続けた。
そこで精神科医である私は睡眠薬精神安定剤を使い、
彼女のトラウマの改善の取り組みを地道に進めた。
お陰で彼女の悪夢も自分の声や助けを乞う悲鳴に近い叫び声を徐々に止み、
ようやく彼女も落ち着いてベッドの上で
深い眠りに付ける様になった訳である。
代わりに奇妙な出来事が起き始めた。
ある日、一人の看護婦が夢の中での奇妙な体験を私に相談して来た。
その目撃した看護婦の名前は。
彼女はマサチューセッツ州の大学を卒業し、このニューヨーク州の都市
ニューヨークにある聖ミカエル病院に看護婦として勤務する事になった。
しかもアシュリーは元アメリカ合衆国大統領の令嬢らしい。
それ故、周囲の医師や患者達にとっては常に好奇の的にされた。
彼女は気にする事無くジルや他の患者達の世話を熱心に続けていた。
またこの病棟内では抜群のプロポーション
巨乳、金髪とかなり有名な美女らしい。
しかし私は基本そう言う美女には興味は無い。
彼女を美女として見る輩の中にはセクハラ発言を繰り返す変な奴もいた。
私はセクハラ発言をする輩には何度も注意を促した。
だが一向に改善される気配が無かった。
やれやれ人間の男とはこんなに本能に忠実なものなのか?
呆れ返るばかりだ。
そして極めつけは彼女の魅力は年齢に比べて
顔が幼く見える童顔がいいらしい。
私はそれのどこがいいのかさっぱり分からん。
それから色々脱線したので話を戻そう。
アシュリーは夢の中での奇妙な体験を説明した。
彼女によれば昨日の夜、真っ黒で
縞模様の不思議な服を着た少女が夢の中に現れたらしい。
しかも夢の中の真っ黒で縞模様の不思議な服を着た少女は
最近、ニューヨークの街中で都市伝説の様に噂されている
ジル・バレンタインの娘らしき少女だった言う
さらにその真っ黒で縞模様の不思議な服を
着た少女は静かに口を大きく開け、
口内から真っ赤に輝く独立した6本の細長い触手が発射されたようだ。
その独立した細長い6本の触手は何故か全裸の姿をした
アシュリーの周囲を撒き付くかのようにグルグルと回り始めて。
それで自分は身体の外側と内側が一気に熱くなるのを感じる中、
真っ赤に輝く繭の中に取り込まれたと言う。
最初は笑っていたがどうやら彼女は本気らしい。
そこで念の為にこの病棟に勤務する多数の看護婦達に聞き込み調査をした。
結果、この病棟に勤務する多数の看護婦(アシュリーも含む)
全員がやはり夢の中で真っ黒で縞模様の不思議な服を着た少女が
アシュリーと同じ赤い繭に包まれて人体の
改造手術まがいな事をされたと話をしてくれた。
しかもそんな彼女達に共通している事がある。
それは結婚願望のある者、
欲求不満がたまっている者の夢の中に必ず現れる事である。
更にアシュリーを言いくるめてある特殊な装置で彼女の全身を調べた。
驚くべき事に彼女の全身の細胞内から賢者の石が発見された。
もちろん私はジル以外の人間には誰一人、
改造手術まがいな事はしていない。第一のやり方と全く異なるのだ。
如何やら彼女は知らぬ間にその真っ黒で縞模様の
不思議な服を着た少女の手によって
『STPシステム』に取り込まれたようだ。
彼女はあの胡散臭いロス・イルミナドス教団が信仰していた
プラーガと言う偽神では無く真の神に選ばれたのだろう。
ちなみに彼女の全身の細胞内にある賢者の石は休眠状態である。
今回は手を加えない。
ジルの二の舞は御免だ。
マイケルは引き出しから自分の手記を取り出した。
「彼女を初めこの病院の病棟に勤務する全ての看護婦達は
『STPシステムに』に取り込まれた者は共通として現実世界
もしくは精神世界(主に夢の中の世界で)
真っ黒で縞模様の服を着た少女の幻影に遭遇する。」と。
更に手記にはこうも書かれていた。
「私は未だに『STPシステム』の使い道が分からない。
実際、私がジルの『STPシステム』を起動させた結果、彼女は失踪し、
仲間であり同じ『STPシステム』
に取り込まれたパズズを倒しているのだ」
マイケルはしばらく口を固く閉じ、深く考え込んでいた。
恐らくソフィア・マーカーが魔界黙示録の救済方法で産み出された
『ソフィア・マーカー由来の新種の魔獣ホラー』
を真魔界で生み出す一方で。
ソフィア様はこの人間界の大都市ニューヨークの人間達を
ベースに改造手術まがいの事をしているのだ。
ソフィア様は一体?何が目的でそんな事をしているのだろう?
確か彼女は自分の事をー。
『自分は外神ホラーの中の唯一のエンジニア(技術者)』
だと言っていたのを仲間のホラーが聞いていた。
成程。彼女は人間やホラーを自らの細胞を用いて
人体改造を出来るだけの高度な能力があるという事か。
きっとニューヨークの街の人々を人間に限り無く近い
新種のホラーを創造しようとしているのだろう。
しかもまだ子供の彼女はその改造手術
まがいの行為を『遊び感覚』でやっているのだろう。
特に目的も無く人類とホラーを超越した神=創造主の暇潰しとして。」
そこまで書くとマルセロは腹が立ち、パンと自分の手記を閉じた。
「けしからん!」と。
 
(第8章に続く)