(第32章)生贄

(第32章)生贄
 
日本の製薬企業『御月製薬』
の北米支部の地下深くにある極秘研究所『ハイブ』。
御月カオリ社長は数人の研究員やスタッフに連れられ、
大きな実験室前に案内されていた。
そう、間もなく初期の『T-エリクサー』の投与実験を行った
クラゲ型の魔獣ホラーを利用した
非人道的な人体実験が行われようとしていた。
しかもその非人道的な人体実験の被験者として
秘密組織『ファミリー』が所有する
アメリカ遺伝子研究所から『御月製薬』
の極秘研究所『ハイブ』に異動となった
ばかりの日本人の優秀な遺伝子学者の安達由美を利用しようとしていた。
ちなみに『ファミリー』とはかつてシモンズ家が創設した組織である。
この『ファミリー』の長は
シモンズ家の現当主・ジョン・C・シモンズである。
元々、『ファミリー』は莫大な財力と世界中に散らばる
組織のネットワークを駆使し、
世界の安定を目的に世界の裏側で暗躍していた。
そして世界の安定とはシモンズ家にとって最も有益な世界である。
現在の世界の安定はアメリカを頂点と
するピラミッド型の勢力図が安定とされている。
『御月製薬』は『ファミリー』
の莫大な財力と人材の支援を極秘に受けていた。
しかし実は安達由美は『ファミリー』のスパイだった。
彼女は『ファミリー』の更なる発展と力を得る為に
『御月製薬』が極秘に開発している
魔獣ホラーを利用した生物兵器『M-BOW』。
新型の『T-エリクサー』の開発データの資料と
T-エリクサーのサンプルを盗み出そうと画策した。
彼女は事前に立てた計画通り、『ハイブ』
にある自分の研究室のパソコンを使い、
元々自分が所属していた秘密組織『ファミリー』
が所有するアメリカ遺伝子研究所に全てのデータを送信しようと
パソコンのキーボードを忙しなく叩いていた。
しかし突如、パソコンの中に組み込まれていた
セキュリティシステムが作動した。
結果、メールの送信は自動で中止され、
パソコンは強制的にシャットダウンされた。
慌てた彼女はせめて自分はあらかじめ手に入れておいた
『T-エリクサー』のサンプルの入ったジェネラルケースを持ち、
どうにか『ハイブ』から脱出しようと試みた。
しかし研究室のドアは自動で暗証番号が無効化され、
分厚いドアは開かなくなっていた。
自分の研究所内のあらゆる換気扇も停止し、完全な密閉空間と化していた。
続けて畳みかける様に研究室内に神経ガスが散布された。
たちまち安達は研究室内に充満したガスを吸い込み、
意識を失い、昏倒した。
その後、セキュリティシステムの作動を知った『ハイブ警備部隊』
が駆け付け、意識を失った彼女は逮捕された。
御月カオリ社長はクラゲ型の魔獣ホラーを
利用した非人道的な人体実験を始める前、
彼女の同僚だった研究員達に嘆かわしい出来事を伝えた後、こう演説した。
そこでカオリは妖艶な笑みを浮かべた。
「彼女には優秀な遺伝子が存在しているかも知れない!
そう信じていた!
しかし彼女の体内に存在したのは忌まわしい劣勢な遺伝子だった!
彼女の『究極の破壊の神』に逆らうかのような裏切り行為!
これは許されない大罪よ!
劣勢な遺伝子を持つ彼女は断罪すべきよ!
その為に彼女は劣勢な遺伝子を根絶する
『究極の破壊の神』の生贄とする!」と。
演説後、カオリ社長は数人の研究員に全裸の姿になった安達由美を
この大きな実験室に連れて来るように命令した。
間もなくして全裸の姿になった安達由美が数人の研究員に
無理矢理連れて来られ、大きな実験室の中に入って行った。
その様子を安達由美の同僚の研究員達は
ただ黙って大きな実験室の外の窓から冷笑を浮かべ見ていた。
一方、大きな実験室では安達由美は数人の研究員の手によって
十字架の形をした大きなベッドの上に無理矢理、座らせられていた。
更に両手首と両脚の太腿を分厚い革のベルトで固定された。
その安藤の裸体を見ていた数人の研究員達は
大きな実験室の外の窓から溜息を洩らした。
それから数人の研究員は生贄の準備を終えると
黙って大きな実験室の外へ退席して行った。
パソコンにセキュリティシステムが組み込まれていたんて……。
安達が自分の計画の失敗を悔しがる中、無情にも生贄の儀式が始まった。
同時に大きな実験室の中央の飼育籠のドアが自動で開いた。
やがて飼育籠から例のクラゲ型の魔獣ホラーが飛び出して来た。
例のクラゲ型の魔獣ホラーはしばらく安藤由美の裸体の乗っている
十字架のベッドの周囲をふわふわと漂い続けた。
『ハイブ』の研究員やスタッフ達は固唾を飲み、見守っていた。
また数人の研究員の心にはこんな疑問が湧いた。
このクラゲ型の魔獣ホラーには視覚や聴覚があるのだろうか?
あるとしたら?彼女の裸体をどういう風に見ているのだろうか?
クラゲ型の魔獣ホラーは安藤由美の裸体の下腹部付近の空中で停止した。
それはまるで獲物である彼女の姿を見つけた様に。
クラゲ型の魔獣はごつごつした2対の赤く輝く筋が付いた
真っ青に輝く傘の中央から2対の太く長い口腕を瞬時に伸ばした。
やがて2対の太く長い口腕の先端の鋭く長い牙は
安藤由美の下腹部に突き刺さって行った。
クラゲ型の魔獣ホラーは安藤由美の
下腹部に突き刺さった2対の太く長い口腕を
通して、彼女の体内から血液を少量ずつゆっくりと吸い上げた。
同時に安達は全身に強い性的快楽が貫くのを何度も何度も感じた。
「あっ!はあん!あっ!はあっ!はあっ!はあっ!はあっ!はあん!」
安達由美は小さな声で喘いだ。
彼女は座った姿勢のまま、
大きな美しい白い肌の両乳房を上下にゆっくりと揺らし続けた。
暫くして安達の両頬と深い胸の谷間は紅潮して行った。
そして全身が暑くなった。
美しいほんのりピンク色の白い肌からじんわりと汗が滲み出た。
安達は気が付けばすっかり性的快楽の虜になっていた。
もはや『ファミリー』のスパイだと言う事も
任務に失敗した事も頭から完全に忘れていた。
彼女はとても気持ちよさそうな表情をした。
荒々しく息を吐き、小さい喘ぎ声はやがて甲高い喘ぎ声に変わって行った。
「ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!」
もっと!もっと!激しく吸って欲しい!お願い!もっと激しく吸って!」
そんな彼女の思念が通じたのか?
クラゲ型の魔獣ホラーは2対の太く長い口腕を通して、
彼女の体内から血液を徐々に激しく大量に吸い上げ始めた。
同時に大きな美しい白い肌の両乳房も上下に徐々に激しく揺らし続けた。
彼女はただ荒々しく息を吐き、甲高い喘ぎ声を上げ続けた。
「ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!あっ!」
ふいに彼女の言葉と喘ぎ声は途切れた。
クラゲ型の魔獣ホラーに捕食された安達由美の肉体は
最終的に急速に水分を失い、乾燥したミイラと化していた。
同時に彼女の肉体は石像のようにバリンと音を立てて、砕けた。
十字架のベッドの上には砕けた彼女の小石と化した肉片が散らばっていた。
たがてクラゲ型の魔獣はようやく安藤由美が座っていた
十字架のベッドから離れた。
その後、捕食を終えたクラゲ型の魔獣ホラーは
再び飼育籠の中に戻って行った。
大きな実験室の外の窓では安達由美がクラゲ型の魔獣ホラーに
捕食されて行く姿を見ていた同僚の研究員達は全員、
名状し難い恐怖を感じていた。
それから彼女が捕食された後、全員、
凍りついた恐怖の表情のままただ黙っていた。
ほとんどの同僚の研究員は額や掌には冷や汗が流れ、
両掌や全身がブルブルと震えていた。
更にもっと酷い同僚の研究員、
数名は僅かにカタカタカタと歯を震わせていた。
それに対し、カオリ社長はいつも通り、冷たい妖艶な笑みを浮かべていた。
「安達由美さん!これで『究極の破壊の神』の力が証明された!
あたしは神の資格を持ち、『究極の破壊の神』の指導者となり!
劣勢な遺伝子を持つ人間共をこの世界から根絶する!
そして真に優秀な遺伝子を持つ者がこの世界を支配するのよ!」
しかし彼女の同僚だった研究員のほとんどの者は
今しがた感じている名状し難い恐怖に気を取られていた。
それ故、誰も冷静にカオリ社長の
演説の内容を理解した者は誰一人いなかった。
 
(第33章に続く)