(第17章)戦車

(第17章)戦車
 
ゾイの力強い言葉に烈花とクエントは安心したのか?
クエントと烈花は「ありがとう」と口を揃えてお礼を述べた。
しかし急に洋館の大ホールに冷たい一人の女の子の声が聞えた。
「ありがとう?ふざけないでよ!あのケリヴァー達は!
あたしを裏切ったのに!汚れた大人共め!」
クエントと烈花は女の子の声が何処で
聞えたのかキョロキョロ辺りを見渡した。
ゾイは「あそこだ!」と一階の大ホールの玄関の茶色の大きな扉の前に
烈花の顔と容姿そっくりの10歳の少女が一人寂しそうに佇んでいた。
『R型』は緑色のワンピースを着ていた。
幼い少女の肌は灰色をしていた。
瞳は茶色で何処か寂しそうに鈍く輝いていた。
「ケリヴァーの汚れた大人達はあたしの気持ちを裏切った!
大人なんか!みんな同じよ!貴方達も!貴方達も同じなのよ!」
「違います!私達は貴方の気持ちを裏切ったりしません!」
クエントは躊躇なくそう言い切った。
しかし『R型』は小馬鹿にしたような笑い声を上げた。
「うふふふふっ!何を言っているの?嘘に決まっているでしょ?
どうせ!裏切るのよ!最後にあたしの力を奪う為に!殺すんでしょ?」
「俺は!あんたを殺さない!あんたを助ける!必ずだ!約束する!」
「お断りよ!はっきり言って貴方の様な偽善者の言葉には反吐が出るの!」
『R型』は烈花に向かって吐き捨てるようにそう言った。
『R型』は話を続けた。
「あたし決めたの!『子供の大事な宝を奪う事しか出来ない!
汚れた大人達を一人残らず全て排除する!我が神の戦車の名において!」
『R型』は心の奥底から凄まじい殺意が湧き上がるのを感じた。
そして殺気に満ちた茶色の瞳でクエント、烈花、ゾイを睨みつけた。
「マズイ!」
「あの子は私達を殺す気だ!」
「もう!よせ!こんな事をしても何にもならない!」
「駄目です!烈花さん!あの子は何も聞こうとしません!」
静かに『R型』は口を開き、さっきとは打って
変わって清らかな声でこう宣言した。
「あたしは汚れた大人達をこの世界から完全に抹殺し!
誰もが好きな宝物を大事にできる未来の子供達の為に!
この世界に新たな秩序を持つ!千年王国を作って見せる!
だから貴方達!汚れた大人達は全員一人残らず滅する!」
『R型』が言い終わった瞬間、ドギャアアン!
大きな音と共に全身から真っ赤な光が放たれた。
ゾイと烈花は『R型』の攻撃に身構えた。
クエントも「ああ、もうっ!」と呟いた。
『R型』は3人に激しい殺気を向け続けた。
続けて『R型』はいきなり右掌からバリバリと赤い電撃
と共にズギュウン!と真っ赤に輝く三角形の弾丸を放った。
放たれた真っ赤な三角形の弾丸はクエントの胸部に直撃した。
「ぐあああああああああああああああっ!」
クエントは身体をくの字に曲げ、そのまま吹っ飛ばされた。
「クエント!『R型』よせ!止めろ!」
しかし『R型』は烈花の話も一切、聞く事もなかった。
更に『R型』は最初の愛らしい歌声とは打って変わって
威厳のある力強い歌声でまたあの曲を歌い始めた。
I WAS RAISEB IN A DEEP DARK HOIE
(私は灰暗い穴の底で育てられた)
THE PRISONER WITH NO PAROIE
(囚人に仮釈放なんてない!)」
『R型』は右腕をブンと左右に振った。
同時に『R型』の右腕から真っ赤に輝く稲妻が水平に放たれた。
続けてドギャアアン!と大きな雷鳴と共に
真っ赤に輝く稲妻がゾイと烈花の頭部に直撃した。
「うっ!ぐあああああああああああああっ!」
「うっ!ぐおおおおおおおおおおおおっ!」
烈花とゾイは耐えられず身体を激しく痙攣させた。
しかし辛うじて2人は足を踏ん張り、
まだ大ホールの床の上にしっかりと立っていた。
THE Y IOCKED ME UP  ANB TOOK MY SOUI
(彼らは私を閉じ込め!魂さえ奪った!)
SHAME THOUAH WHAT TTHEY MABE
(恥は奴らだと言うのに)」
『R型』の右腕から真っ赤に輝く稲妻が水平に放たれた。
同時にドギャアアン!と言う大きな雷鳴と共に真っ赤に輝く
稲妻がゾイと烈花の頭部に直撃した。
「うっ!ぐおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「うっ!ぐああああああああああああああああっ!」
烈花とゾイは二度目の電撃に身体が耐えきれず足を踏ん張る力を失った。
やがて赤いカーペットの上にうつ伏せに倒れた。
I CO LLEB HIM ANB HE WILL COMIE
(私が呼んだら、彼らはやって来るだろう。)」
烈花は二度目の電撃を受けて危うく意識を失い掛けた。
しかし隣で歯を食いしばり、意識を保っていたゾイの呼びかけの
お陰で烈花はギリギリのところで意識を保った。
「死ぬな!あの子を止めるんだ!」
烈花はハッと我に返り、歯を食いしばった。
ゾイと烈花は『R型』をしっかりと見た。
しかし『R型』は茶色の瞳で蔑むような視線を2人に向けた。
『R型』はまだ意識が残っている烈花に向かって右掌を差し出した。
突然、うつ伏せに倒れていたゾイは素早く立ち上がった。
その後、うつ伏せに倒れている烈花の元へ駆け寄った。
SHE LL  AHSWER HIM LIKE HE IS THE ONE
(彼女は彼に例の奴ら見たいだと答えてやるんだ!)」
『R型』は右掌から真っ赤な電撃と共に
真っ赤に輝く三角形の弾丸を放った。
ゾイは黒い軍服を着た背中を盾にした。
真っ赤に輝く三角形の弾丸はゾイの背中に直撃した。
ゾイは背中に走る激痛で悲鳴を上げた。
「うぐああああああああああああああああああっ!」
烈花が見るとゾイの背中から赤い電撃と黒い煙が立ち昇っていた。
ゾイは背中の激痛に歯を食いしばって耐え、意識を保っていた。
しかしとうとうぷつんと意識が無くなり、やがてゾイは
烈花の隣の赤いカーペット倒れてぐったりとなった。
「ゾイ!ゾイ!ゾイ!」
烈花は掠れた声で必死に倒れているゾイに
呼びかけたが全く反応は無かった。
どうやら気絶したらしい。
烈花は「くそっ!」と声を上げ茶色の瞳で『R型』を見た。
『R型』は烈花を憎悪と殺意に満ちた茶色の瞳で睨みつけた。
対して烈花は何かを言おうと口を開きかけた。
『R型』は烈花の口から出かけた言葉を
押し潰す様に更に大きく声を張り、歌い続けた。
HIS ARMS OUTSTRE TCHEB DUT WHEN(済んだ時には)
SHES D ONE HE LL BE TORN APART
(腕をめいいっぱい伸ばされてバラバラになるんだ!)」
次の瞬間、急に自分の視界が緑色に染まった。
更に全身がナイフの刃に似た風で高速で切り刻まれて行く感覚を覚えた。
やがて全身に激痛を覚えた。
同時に彼女の視界は再び真っ暗になった。
GO TELL AUHT RHODY(ローディ叔母さんに言いに行きな)
GO TELL AUHT RHODY(ローディ叔母さんに言いに行きな)
GO TELL AUHT RHODY(ローディおばさんに言いに行きな)
EVERYBOD Y IS(誰もが)DEAD(死んだってね)」
力強い歌声が止んだ後、烈花は真っ暗な視界の中、
『R型』がキャハハハハハッ!
と笑い何処かに遠ざかるのを聞いた気がした。
烈花は完全に意識を失った。
それから一時間後、烈花の耳にゾイとクエントの呼びかけが聞えた。
「おい!しっかりしろ!烈花!死ぬんじゃない!」
「お願いですから!意識を取り戻して!」
烈花はすぐさま2人の声に反応し、瞼を開けた。
やがて烈花の視界に強い光が刺し、眼が眩んだ。
間も無くして視界を覆う強い光は収まった。
そこは大ホールの一階だった。
さらに目の前にゾイとクエントの顔が見えた。
烈花は完全に意識を取り戻し、ハッと顔を上げた。
慌てて起き上がろうとした瞬間、背中に僅かな痛みが走った。
しかし構わず烈花は起き上がり座った。
「『R型』は?『R型』はどこに?」
烈花は立ち上がろうとしたが全身が痺れて思う様に立てなかった。
そして何度も私利を持ち上げては尻餅を付いた。
「ああ!動けない!こんな事!早く止めさせなきゃいけないのに!」
 
(第18章に続く)