(第51章)小芋(スモールポテト)その4

(第51章)小芋(スモールポテト)その4
 
「もし?偽物だったら?」と言うジルの問いに
大きく深く呼吸し、目を閉じてしばらく考え込んだ。
間もなくして目を開け、パーカーは口を開いた。
「俺が全責任を取って!そいつを捕まえてやるっ!!」
「分ったわ!信じるわよ!パーカー!!」
「ありがとございまあすっ!」
それからジルは最新の電子キーピックを取り出した。
パーカーは監視カメラを避け、
牢屋のセキュリティを操作し、セキュリティを解除した。
ジルは最新の電子キーピックで牢屋の檻の鍵を開けた。
クエントはようやく檻から出た。
更にクエントはジルからサムライエッジを受け取った。
「貸したから!ちゃんと返してね!」
「ありがとうございまあすっ!」
クエントは彼女から借りたサムライエッジをホルスターにしまった。
そして全速力で走り、独房から脱出した。
更にBSAAの4WDに乗り込み、発進させた。
そして自宅であるアパートに急いだ。
烈花さん!烈花さん!騙されないでっ!
あいつとセックスしないで下さいっ!偽物だって気付いて!
そう祈りながらクエントはアクセルを全開にして少々乱暴に運転した。
しかし幸いにもパトカーにも見つからなかった。
 
ニューヨーク市内の人気の無い裏路地に
ひっそりと建っているアパートの一室。
烈花は台所でクエントが途中の店で
買って来たシャンパンのコルクを開けていた。
「あんたがシャンパンなんてね!珍しいな!勤務中だが大丈夫なのか?」
烈花は笑いながら質問した。
クエントも笑いながら一瞬だけ
「そうなの?」と言う顔をしたが直ぐに真顔に戻った。
烈花とクエントはグラスに注がれた酒を飲んだ。
烈花はくーっ!声を上げた。
「うーつ!まあー大した事は無いなぁ!」
「えーつ!これアルコール度数かなり高いですよ?酔わないんですか?」
クエントは心底、驚いた表情を浮かべた。
そして僅かに肩を落とした。
しばらくグビグビと烈花はシャンパンの酒を何度も何度も飲み続けた。
クエントは飲みきれず半分残した。
おいおい?何処まで飲むんだ??もう13杯も飲みほしたぞ!
「知らないのか?俺達魔戒法師は酒に強いのさ!」
烈花の自慢にクエントはポカンと表情を浮かべた。
「そっ!そうなんだー!!」
クエントは無理矢理納得して答えた。
クエントも負けじとシャンパンの酒を飲み続けた。
それからクエントは顔が真っ赤になった。
しかもクエントは坊主頭も相まってまるでゆでダコの様になっていた。
やがて酒で完全に酔っ払ったクエントは。
16杯目から意識が朦朧とした。
17杯目位で完全に意識が混濁した。
18杯目位でとうとうアパートの
フローリングの床に仰向けにバタンキュウと倒れた。
烈花はほんのりピンク色の肌でほろ酔いの烈花はフフフッと笑い、
すやすや眠っているクエントの顔を覗き込んだ。
次の瞬間、クエントの顔や全身の筋肉が大きく緩んだ。
間も無くして坊主頭から茶髪が生え、茶色の瞳に丸顔の
真っ赤な冴えない男の姿に戻った。
「おわあああっ!ダリン!やっぱり!!」
烈花はまさかと思っていたがいざ本物を
目にすると魔戒法師の彼女すらギョッとした。
そこにバアンと勢い良くドアが開く音がした。
烈花は二度びっくりして、いきなり開いたドアを見た。
開いたドアの戸口にはジルから借りた青いサムライエッジを
両手で構え、鬼気迫る表情で現れた坊主頭の男。
つまり本物のクエントが飛び込んで来た。
「烈花さんから離れなさい!
揉んでいるおっぱいから手を話して!って?あれえええっ!」
烈花はワイングラスを右手に持ち、
ニッコリと笑い、左手のボトルでツンツン指さした。
クエントは烈花がボトルでツンツンした方を見ると。
あの丸顔で茶色の髪に茶色の瞳の男が
豪快ないびきを上げて大の字ですやすや眠っていた。
クエントは大きく息を吐き出し、ハアーと吐いた。
「よかったあーっ!烈花さん!気付いていたんですね!!」
「まあね、妙に挙動不審だったし!違和感があったからな!
俺の知っているクエントはこんな事はしない!」
烈花はクエントを見てまたにっこりと笑った。
「とりあえずこのまま牢屋に放りこみましょうか?」
「その前に変身能力をなんとかしないと!実は変身が解ける直前にな!
全身の筋肉が大きく緩んだんだ!
そしてクエントからダリンの姿に戻ったんだ!これはどう思う?」
クエント下顎に手を添えて考え込んでいた。
間もなくして頭の中にパッと閃いた。
「もしかしたら?筋肉に秘密があるのかも?」
「つまり筋肉を緩ませておけば変身出来ない?」
「なーるほど!試す価値はありますね!」
クエントはパチッ!と指を鳴らした。
間も無くしてクエントは烈花にこう尋ねた。
「ところで貴方?何杯飲みましたか?」
18杯位、俺はほろ酔いだったが。こいつはダウンしちまった!」
烈花はあっさりと答えた。
「そう……ですか……」
しばらくして烈花はフフフッ!と笑い、クエントは何故か嫌な予感がした。
「なークエント!」
「なっ!なんでしょうか?」
クエントは全身をビクンと震わせた。
「なあー遺伝子で親から子に受け継がれるんだよな?能力と一緒に?」
「はあーそうですが!!」
「なあーなあーじゃ!本当に親が子に能力と一緒に受け継がれるのか?
ねえー精子を検査して確かめようぜ!」
「はあーどうするんですか?」
「こうするのさ!」
烈花はいきなり、Tシャツをの裾を両手で掴み、バッと脱ぎ捨てた。
続けてズボンのチャックを降ろし、ズボンを脱ぎ捨てた。
クエントは上着を脱ぎ捨て黒いブラジャーとパンツ姿になった
烈花の姿をポカンと口を開け、見ていた。
「なーにポカンとしている!早く採取用の容器を!あるだろ?」
「ちょっと待って下さい!酔っているんでしょ?」
「良いから早く持ってこおおおおいいいいっ!」       
烈花はまるで酒を煽る様にクエントに指示した。
仕方なくクエントは渋々、採取用の容器を持って来た。
烈花はほろ酔いのまま上機嫌で
眠りこけたダリンのズボンのチャックを降ろし、脱がせた。
更に青いトランクスのパンツも脱がせた。
烈花は「おおおおっ!」と歓声を上げた。
「もう!まじまじと見ないで下さい!」
「よっし!始めるぞ♪ちゃんと入れろよ♪♪」
「はいはい……分りましたよ……もおおおおおっ!」
クエントは畜生と思いつつもほろ酔い気分で上機嫌な彼女に従った。
烈花は黒い下着を脱ぎ捨て全裸になった。
「あーあーあーあっ!」とクエントは声を上げた後、心の中でこう呟いた。
なーんでこうなるんですかああああっ!ちっくしょおおおおおおっ!と。
 
秘密組織ファミリーの本部に当たる大きな屋敷の自分の部屋でジョンは
黒いスーツの胸ポケットから携帯を取り出し、右耳に当てた。
「もしもし?あー久しぶりだな!マルセロか?こんな夜中にさ!」
「大変じゃ!ジョン!
実はジル以外にも変身出来る人間の女が現われた!!」
「ふーん!ジル以外にも魔獣装甲を纏える人間の女が?一体?誰かね?」
「聖ミカエル病院の精神科医でわしの弟子のアシュリー・グラハムじゃ!
いかにも南米に生息していそうな
その姿は黒い縞模様の赤色の異形の戦士じゃ!」
「ジルの姿とは違うね。確かアシュリー・グラハムも芳賀真理と
同じく6年前の外神ホラー・這い寄る混沌の魔獣のシュブ・二グラスが
A型T-エリクサーを利用して
暇潰しの遊びの改造手術を受けていたと記憶している。」
「そうじゃ!しかも!未だにわしも信じられんが、
あの子は自力で変身しおった!
どうやら自分が担当していた精神患者が
魔導ホラーに襲われていたらしくのう。
自分が『生きたい』と言う動物的本能と
『自分の患者やその他大勢の人間の命を助けたい』
と言う強烈な人間の感情が賢者の石の力を
覚醒させる引き金になったようじゃな!
しかも患者と自分を襲った魔導ホラー一体を殲滅し、
患者の命を助けたそうじゃ!」
「実に興味深いな。あの魔導ホラーさえも封印するとは……」
ジョンは口元緩ませ、ニヤリと笑った。
 
(第52章に続く)