(第39章)悲劇・そして誰もいなくなった。

(第39章)悲劇・そして誰もいなくなった
 
(『R型』の暴走の全て始まりの映像。)
『R型』から噴き出した大量の20cm余りの
プラントリーチ達は彼女に操られるように
反メディア団体ケリヴァーに襲い掛かった。
メンバー達は次々とプラントリーチに噛まれ、全身を覆い尽され苦しみ、
のた打ち回って床の上をごろごろ転がり、全身を激しく痙攣させて
あっと言う間にあるほとんどの男女問の
肉体が腐り果て、顔面や肉体は醜く溶け落ち、
頭蓋骨や白骨化が進み、男女の肉体はあっと言う間に腐り果てて
完全に崩壊後、茶色の液体となりあっと言う間に即死して行った。
男女のほとんどが地獄の苦しみを味わいあっと言う間に死んでいった。
『R型』は無表情のままただ見ていた。彼女は感情を無くしていた。
そうBOW(生物兵器)としての役割をただ淡々とこなしていた。
ただそれだけである。そして5000人余りが男女問わず
肉体が腐り果て、顔面や肉体は醜く溶け落ち、
頭蓋骨や白骨化が進み、男女の肉体はあっと言う間に腐り果てて
完全に崩壊後、茶色の液体となりあっと言う間に即死した後、
また別の変化が始まっていた。
プラントリーチの群体に全身を包まれた男性や女性達は
間も無くして無数の蔦に覆われた。
それから急檄に無数の蔦が激しくブルブルと痙攣した。
やがて無数の蔦が弾けて消えた。
そして「うおおっ!」「あああっ!」と呻く様な産声と共に
あの植物型ゾンビ・プラントデッドが次々と誕生して行った。
それはほぼ一斉に沸き出る様に現れ、どうにかウィルス感染を
免れた人々に襲い掛かり、真っ赤に輝く無数の牙で彼らの頭部や
両腕、両脚に噛みつき、バラバラに食い千切り殺した。
何人かは運良く、見つけた隠し扉で逃げ去った。
やがて2956体のプラントデッドと生き残った
数名のメンバーも全員、ここから消えた。
ようやく『R型』が我に返り、周囲を見ると誰もいなくなっていた。
茶色の液体に覆い尽され、幾つもの白骨死体が転がっている
広い床と薄暗い部屋の中にスマホでこの光景を録画している
人物と『R型』以外人っ子ひとりいなかった。
『R型』はただ悲しかった。ただただただ悲しかった。
そして『R型』はぼんやりとしたままスマホで撮影している誰かを見た。
『R型』の両目から大粒の涙に混じって緑色の小さなヒル
ボタボタと頬を伝って床にしたたった。
そして『R型』は一言こう言った。
「どうしてぇ?皆あたしの好きなテレビ番組を嫌うのぉ?」
そこで動画は止まった。
クエントと烈花は余りの凄惨な光景言葉を失った。
烈花は胸が突き刺さる様な想いだった。クエントもただ黙っていた。
『R型』は悲しみに溢れた表情でこう言った。
「分ってくれたでしょ?ねえ?若村が酷い奴!!」
「確かにそうだったな!だが聞いてくれ!
全ての世界の大人達がそんな酷い考えを持つ者ばかりじゃない!」
「違うもん!みんな!みんな!小汚い大人達よ!攻撃し!
殲滅すべき存在!壊滅させるの!」
「『R型』!いい加減にしろ!こんな事をしても何にもならない!
あんたのやっている事は若村達と同じだ!」
「そうよ!同じなのよ!攻撃したから攻撃で返すの!
闘いを仕掛けたのは大人達!あたしは応戦!」
「『R型』!これは戦争じゃない!ましてや紛争でも無い!」
「知らないもん!みんな敵!みんな敵!みんな敵!」
『R型』は素早く天井のダクトの上の中に
ジャンプして飛び込み、姿を消した。
「まて!『R型』!」
「地下で待っている!スマホのところ!次は必ず殺す!殺す!」
天井のダクトから『R型』の声がした後、あっと言う間に声は消えた。
「どうやらあのクリオネ型の巨大BOW(生物兵器)を止めないと!
その為には『R型』を説得しないと難しいですね!」
「まるで大人が悪の親玉みたいになっているのが……」
「正にアメリカがイラク北朝鮮を敵に回すようです!」
「じゃ!あとは更に詳しく!こいつから聞こう!」
それからクエントと烈花は若村を連れて記録室を出ると
細長い鉄製の通路を通り、3つの四角い部屋に戻った。
今度は左側のドアを開けて、先へ進み、
また奥のドアを開けて入って行った。
そこはやはり部屋でかなり広かった。
また警告ランプのスイッチや警報装置、武器用具を置く棚が置かれていた。
どうやらそこはセキュリティルームのようだ。
その証拠に置くのドアには洋館内やこの地下のクリオネを監視する
カメラの多数の画面が映ったテレビがあった。
スイッチによって色々なあらゆる画面に変えられるようだ。
2人はさっきの『R型』が見せたスマートフォン
映像について若村に尋問した。
「さっき記録室で『R型』が見せたスマートフォンの映像から
あの子の大好きにしていたテレビ番組を映したテレビを
目の前で壊した罪は認めるな?」
「あの子が悪いんだっ!ちゃんと約束を守らなかったから!」
すると烈花は獣のような形相で若村を見た。
「ふざけるのもいい加減にしろ!」
静かにクエントは厳しい口調でこう言った。
貴方のした事は間違っています!」
「ハハハッ!何を言っているんだ?俺達は正しい事をしようとしたんだ!
だが『R型』が言う事を聞かねえ!」
「じゃ!『R型』は!本気で悲しんで泣いていたのに!
テレビを壊すのを止めてと言っても何故?聞かなかった?
何故?あの子は純粋に好きなテレビ番組を楽しみたかったのに!
それを貴様は踏みにじった!」
「分りますね!
貴方は大人として人としてやってはいけない事をしたんです!
結果!多くの人々が死に世界も滅亡の危機に瀕しています!」
「なんだと!全部おれたちのせいか?ふざけるなっ!
俺達は子供達の幸せな未来と健康を守る為にっ!
何故?最近の子供がキレやすいか分かるか?それはゲーム脳だからだ!
ゲーム脳になると目に入って来た情報が前頭野に伝わらず直接運動を
司る運動野に伝わる。つまりシューティングゲームでは
『敵が現われたらいちいち何も考えずにボタンを押せばいい』
と思っている。
ゲームを長時間していると子供の脳のβ波はほとんどで無くなるんだ!
つまり考え事をしたりしなくなるんだ!
そしてだんだん前頭前野が使われなくなって
キレやすくなり、集中力が低下し、物忘れが多く、時間感覚が無く、
学校を休みがちになる。携帯電話も『R型』が見ている
テレビ番組も知的おもちゃも同じだ!」
「残念ですがゲーム脳が原因と言う貴方の主張には無理があります。
ゲーム脳を解消するには運動がいいとされています。
しかしながら運動をしている時でもβ波は低下します!
またゲーム中の脳波を調べたデータは極端に少ないですね。
データが少ないようでは結果として意味ありませんね。
ついでにそのゲーム脳の学者も脳神経学者では無く
運動生理学者でそもそも脳の専門家ではありません!
そもそも将棋やそろばん、カードゲーム、コンピューターや
テレビを見てゲーム脳に成ると言う貴方の主張を誰が信じるのでしょう?
「テレビゲームやテレビ番組によって子供達の脳が壊れるんだ!
そして俺はそのメディアの闇から子供達や人々を守る!
信じる者は必ず救われるんだ!ゲーム、テレビ、携帯、
知的おもちゃの全てを捨て去れば幸せになれる!
これは俺の大義なんだ!大義の為に成すべき事を!」
「それは詭弁ですよ!貴方はさっき言いましたね!
信じる者は必ず救われると?
しかし私がメディアの申し子の魔王サタンでないのと同じように。
貴方も唯一絶対神アッラーフではありません!若村秀和さん!
貴方をHCFとのバイオテロ共謀罪と『R型』に対する
児童虐待の容疑で拘束させて頂きます!いいですね!」
「ここでじっとして貰うぞ!俺達が戻るまで
自分のした事を良く反省して悔い改めるんだ!いいな!」
「ううっ……クソッ……分った!分ったよ……」
烈花の指す様な強烈で鋭い視線に圧倒され、たじたじと後ずさりした。
ふと烈花は監視カメラの映像を切り替えるパネルの上に
一本の鉛筆が置かれているのに気付き、拾い上げた。
その鉛筆の横には『シイナ・カペラ』と名前が刻まれていた。
「恐らく彼女はしばらくここでゲームを楽しんでいたようですね。」
「成程な。どうやら彼女はゲームを最前線で見るのが好きなようだな。」
「あのクソアマめ!」と若村は毒づいた。
 
(第40章に続く)