(第40章)プラントデッド兵団

(第40章)プラントデッド兵団
 
クエントと烈花は若村を一人残してセキュリティルームを出た。
烈花はドアの内側のドアノブと
外側のドアノブをハンドガンで破壊し、閉じ込めた。
流石に彼女も少し心配した。
それから2人はまたドアを開け、中央の部屋に戻った。
中央の下部の鉄の扉を開け、中へ入った。
そこはやや太いT字型の通路だった。
2人がT字型の通路を少し進むと床や壁に大量の血液が飛び散っていた。
更に右端と左端の床に頭、両腕、両足、胴体がバラバラに
食い千切られた2人の男性の遺体が転がっていた。
2人は遺体からハンドガンとショットガンを手に入れた。
更に2人の名札にはそれぞれ『キーガン・ハルパス』
『アーノルド・ベルモット』と書かれていた。
同時にT字型の通路の奥からまた10歳の少女の『R型』の姿があった。
「こっちに来てよ!殺してあげる!!」
やがて2人は目の前でバチンと大きな音と共に
真っ白な光で視界が眩み、一時的に何も見え無くなった。
また真っ白な光で視界が見え無くなっている間、
キイーンと耳鳴りが続いた。
やがて2人が視界を取り戻すと『R型』の姿は忽然と消え去っていた。
「今のは?」
「恐らく……『R型』の思念が実体化したのだろう……」
「思念の実体化?テレパシーの様なものですか?」
「気お付けろ!まだこのT字型の通路に『R型』の強い思念を感じる!
それは完全な憎悪と怒りの思念だ!強く感じる!!」
間も無くして左側の細長い通路の下部の白い壁がバゴオン!
と音を立てて崩れ、大量の瓦礫が周囲に飛び散った。
大量に舞い上がる埃の中、穴の開いた壁からゾロゾロと
無数のプラントデッド達が現われた。
もはや何かの観光旅行をしているのではとついクエントと烈花は思った。
つまりそのぐらいの数だったと言う事である。
クエントはマシンガンを。烈花もハンドガンの引き金を引いた。
やがてそれぞれ持っている2人の銃口から火が噴き続け、
マシンガンやハンドガンの弾丸が発射され続けた。
今回、烈花のハンドガンのみ弾の節約の為、フルオートでは無く
三点バーストと言う一回引き金を引く度に三発ずつ弾丸が発射される
システムに改造しておいたのだった。
勿論、地下の巨大BOW(生物兵器)との戦闘に備える為である。
そして銃火がそれぞれの銃口から噴き出す度にプラントデッド達は
「うわあああっ!」「ああああっ!」と呻き声を上げ、バタバタと倒れた。
しかし他のプラントデッド達は一斉に真っ赤に輝くつぼみを大きく開き、
無数の牙を剥き出して飢えた虎の如く猛然と噛みつこうとした。
烈花はハンドガンで確実に真っ赤に輝く
つぼみ状の頭部を次々と撃ち抜いて行った。
同時にプラントデッドの頭部がスイカのように弾け、
仰向けに倒れて行った。
また何匹かはクエントに向かって緑色の触手状の蔦を振り上げると
10対の真っ赤に輝く鉤爪で防弾アーマの付いた胸部を切り裂いた。
幸いにも防弾アーマのお陰で胸部の傷は浅く済んだ。
しかし何度か切り裂かれれば直ぐににでも
防弾アーマはボロボロになりそうだった。
クエントはマシンガンの引き金を引き続けた。
そして何匹かはクエントのマシンガンによりハチの巣になった。
烈花はさっき手に入れたショットガンで至近距離から
次々とプラントデッドを撃ち抜いた。
撃ち抜かれたプラントデッド達は四方に千切れた四肢を飛ばし、
大量の血を撒き散らし、吹っ飛ばされた。
そしてほとんどは呻き声を上げ、次々と倒れて行った。
プラントデッドの群れと闘ってから1時間余りが経過した。
やがてあの壁を突き破って出現したプラントデッドの群れはマシンガン、
ショットガン、ハンドガンで撃破され、
気が付くと目の前にはおびただしい数の
プラントデッドの死体が幾つもの小山となって積み重なっていた。
そして床のほとんどは真っ赤な血で染まり、大きな池が幾つもあった。
「終わりましたか?」
「いや!まだだ!」
烈花は素早くクエントにT字型の通路の物陰に隠れるよう指示した。
彼は烈花の言う事に従い、直ぐに物陰に隠れた。
同時にチン!と言う音がして
T字型の通路の奥のエレベーターのドアが開いた。
そしてエレベーターから多数のプラントデッドが出現した。
しかもそのプラントデッドの群体はさっきとは違っていた。
どうやら変異体なのか?と2人は思った。
しかし次の瞬間、プラントデッド達が
まるで軍の兵士の様に太い触手状の蔦の
短い両腕と10対の真っ赤に輝く短い爪でそれぞれアサルトライフル
サブマシンガンを構え、引き金を引き、連続射撃を仕掛けて来た。
流石のクエントと烈花は意表を突かれ、
大慌てでT字型の通路の物陰に隠れた。
彼らが放ったアサルトライフルサブマシンガンの弾丸は驚く程、
正確に2人の間を連続で抜けて、
中央の白い壁や鉄の扉を撃ち抜いて行った。
「おい!植物ゾンビが銃を撃って来たぞ!どうなっている??」
「分りません!まさか?此処までの進化とは……」
更に2人は物陰からプラントデッドの群体を見た。
すると全員、驚くべき事に通常の人間同様に
分厚いアーマや防弾チョッキを着用していた。
またお互い低い呻き声を上げ合い、会話しながら
T字型の通路の奥の短いバリケードに隠れた。
続けてカバーポジションを取り、
まるで軍隊の様な統率力をまざまざと見せつけた。
間も無くしてカランカランと音が聞えて来た。
しかも2人のそれぞれ左側と右側に隠れている烈花の背後で同時に聞えた。
2人は素早く振り向いた。
すると二人の背後の床に小さな球体は2個ずつコロコロと転がって来た。
続けてパアン!と言う大きな音と共に2人の目の前で白い光が炸裂した。
その2つの球体はまるで風船のように粉々に破裂した。
更に爆風と破片が2人同時に襲い掛かった。
「うわあああっ!手榴弾!くそっ!」
「いでえええっ!痛いっ!」
クエントと烈花は目の前の爆風と
全身に突き刺さる破片の痛みに耐えられなかった。
2人はほぼ同時に宙に吹っ飛ばされ、
中央の廊下の白い床の上に投げ出された。
同時にバリケードの裏でカバーポジションを取っていたプラントデッド達が
立ち上がり、一斉にマシンガンとアサルトライフルの連射で攻撃して来た。
「うわわわっ!ちょっと!タンマ!タンマ!」
慌てて烈花は飛び交う銃弾を白い床の上に伏せてかい潜り移動した。
そして全身の激痛で動けないクエントを捕まえると背中に何発か銃弾を
浴びつつも渾身の力で身体を引っ張り、クエントの左側の物陰に隠した。
その間にもマシンガンやアサルトライフルの銃弾は休みなく飛び続けた。
それからしばらく動けないクエントに代わって彼の
サブマシンガンを手に取り、引き金を引き続けた。
そして何匹かのプラントデッドの真っ赤に輝く
無数の牙の付いたつぼみの頭部を撃ち抜いた。
更にお返しと言わんばかりに烈花も同じ
榴弾を5ついっぺんに投げ付けた。
そして5つの手榴弾は放物線を描き、プラントデッドが隠れている
バリケードの内側に正確に転がって来た。
やがて炸裂し、プラントデッド達は「うわああああっ!」
「ああああっ!」と声を上げ、頭部や四肢を吹き飛ばし、
バラバラとなり、血液を周囲に撒き散らし、倒されて行った。
そしてようやく痛みの引いたクエントも
烈花からサブマシンガンを受け取り、応戦した。
やがてお互いの大量のサブマシンガンアサルトライフル
ハンドガン、手榴弾、が何度も直線や放物線を描き、飛び交った。
その末にようやくエレベーターの奥のバリケードに隠れていた
プラントデッドは一匹残らず駆逐された。
そしてようやく耳鳴りのキイーンと
言う音や激しい銃声はピッタリと止んだ。
 
烈花とクエント、若村達が中庭から療養所クリオネに乗り込む数時間前。
同じT字型の通路の処置室の四角い部屋の奥に仰向けに倒れた状態で
完全に動かないリサ・アルミケラの姿があった。
間も無くして一人の黒い革のレザースーツの女性が入って来た。
背中には黒い細長い剣の鞘が吊るされていた。
その女性は直ぐにリサに近づくとその場で屈んだ。
女性は下腹部が大きく破裂し、顔や床を真っ赤な血で濡らし、
既に死んでいると思われるリサの姿を青い瞳でじっと見た。
その時、女性はリサの口から僅かに
ひゅーひゅーと呼吸が漏れている事に気付いた。
更に彼女の胸に優しく触れると微かに心臓が動いていた。
どうやら皮肉にも人を殺すウィルスに命を救われたようだ。
女性は無線を取り出し、連絡した。
「こちら!ジル・バレンタイン!知り合いの女性が生きているの!」
「了解医療チームを送るよ!」とジョンの声が無線から聞こえた。
 
(第41章に続く)