(第55章)謝罪

(第55章)謝罪
 
烈花はクエントが提案した養子縁組の意見に賛成した。
ただ自分は元々の仕事である元老院付きの魔戒法師として
多忙な一日に戻らねばならなかった。
『R型』とは離れ離れになってしまうだろう。烈花はそれが辛かった。
せっかく親子の絆を取り戻したのにまたすぐ別の世界へ離れ離れなんて。
しかしそのような話を『R型・ローズ』にすると彼女は
穏やかな口調でなおかつ愛らしく笑い、こう言った。
「大丈夫だよ!ママ!泣かないで!寂しがらないで!」
気が付くと『R型・ローズ』の両頬から涙の粒が落ちていた。
烈花も『R型・ローズ』の言葉に感動を覚えた。
彼女もまた気が付くと『R型・ローズ』をしっかりと
両腕で抱き締めて大粒の涙を流し、静かにすすり泣いた。
クエントもついもらい泣きをしてしまい泣いた。
しかも他のBSAA職員に泣いている事を指摘されると
「目にゴミが入っただけですよ!」と誤魔化した。
クエントは福祉委員の人物の養子縁組の申告について電話で話し合った。
それから大体のスケジュールも電話一本で決まった。
BSAA職員はそんなクエントの様子を見てこう考え、思った。
うーん、もしかしたら?今後も『E型・エヴリン』や
『R型・ローズ』のような子供型BOW(生物兵器)が増えて行くとしたら?
ワクチンでウィルス兵器の無力化に成功した場合、その子達は普通の
子供として保護されるとしたら?あの子達の今後の為にBSAA内で
里親、養子縁組、BOW(生物兵器)として利用された事で若村達の
ような周囲の大人達から恐れ、最悪、その子供の心や体を傷つけられた場合の
メンタルケアー、つまり心の傷の手当、遅れた義務教育の徹底と
社会の知識と秩序の理解を深める活動、少なくともこの位の事は
今後必要になってくるかも?できれば『E型・エヴリン』のように
家族が欲しいのに願いを叶えられぬまま倒される結末は余りにもかわいそうだ。
もしも『R型・ローズ』の様にうまくきちんとした大人の私達が説得に成功し、
ワクチンでン躯体も普通の女の子になって。普通の教育を受け。
普通の生活が可能ならば。出来るだけ多くのBOW(生物兵器
にされた子供達を助けたい。あのエヴリンやローズだけではなく
もっともっと大勢の子供達を。それから色々あってクエントは
福祉委員の女性職員に会いに行くべく烈花を連れて、
一度『R型・ローズ』をBSAA職員に預けて外出して行った。
BSAAの医療施設から出る途中の廊下である一人の白衣を着た女性が現れた。
白衣を着た女性はBSAA医療機関ウィルス学者であるようだ。
「いたいた!こんなところに!もう~探したよ~」
軽いノリで白衣を着たBSA医療機関ウィルス学者の女性はそう言った。
その女性は胸元まで伸びた茶色の髪に茶色の瞳にふっくらとした両頬をしていた。
「私の名前はコバルト・ローランっていうのよろしくねぇ~」
コバルトはニコニコとまるで太陽なような明るい笑顔を向けた。
「なんなんだ……この女……」と烈花は彼女の明るすぎる彼女の態度に面食らった。
やがてコバルトは明るい笑顔のままこう話を切り出した。
「あの『R型・ローズ』さんの血液から採取しておいた新型のウィルス兵器
T-sedusa(シディユウサ)の遺伝子を詳しく分析したら意外な事実が判明しました。
実はこのウィルスは元々はB型T-エリクサーの変異株にGウィルスや
E型特異菌の遺伝子が組み込まれた全くの新種のウィルスだったんです!
そして元々、彼女の体内に存在していたB型T-エリクサーとは別種でした!」
「と言う事は!HCFはまだ0歳の『R型・ローズ』
に新種のウィルスの投与をした?」
「そして10年間密かにBOW(生物兵器)として育てて来たと……」
「ふっ!ふざけるな!そんな事実など!なんて奴らだ!許さん!絶対にだ!」
コバルトとクエントの話を聞いていた烈花は憤慨した。
「どうやら新型ウィルス兵器『T-sedusa(シディユウサ)』の基になった
B型Tエリクサーの変異株は当初、9年前にスパニッシュハーレムを
襲撃したピエロ型宇宙人のものと思われる地球外生命体の遺伝子を
B型T-エリクサーに組み込んで変異株を製造する予定だったらしいです。」
「あのピエロ型宇宙人にジルの賢者の石の存在を教えたのはHCFだったんですね!」
「恐らくリー・マーラがそのピエロ型宇宙人と何らかの取引をしたのかも知れん!」
「ですが、今回の新型ウィルス兵器『T-sedusa(シディユウサ)』の基になった
B型Tエリクサーの変異株にはあの同じ年に発見された
『賢者石バエル細胞』の特異遺伝子が検出されました。」
「つまり?魔王ホラーバエルの細胞内の特異遺伝子が組み込まれていた?」
「間違いありません!遺伝子結果は何度同じ方法を試しても同じ結果が出ました。」
このウィルス検査の結果にクエントと烈花は驚きお互い顔を見合わせた。


烈花とクエントが出かけた後、『R型・ローズ』
は少し寂しそうな表情を浮かべていた。
するとBSAAの職員は『R型・ローズ』にこう言った。
「そうだ!好きなテレビ番組ってなんだい?」
「えーとね、いっぱいあるの!」
そして『R型・ローズ』から好きな番組のことを聞いている内に
BSAAの職員は今日放送されていたテレビ番組をDVDに
録画していた事を思い出した。「ちょっと!まってて!」
BSAAの職員はカバンの中から一枚のDVDを取り出した。
「あの若村って酷い大人達がテレビをぶっ壊したせいで
見られなかったんだよな?これあげるよ!」
BSAAの職員はそのDVDを『R型・ローズ』にあげた。
「わーい!ゲゲゲの鬼太郎(第6期)の5話だ!」と『R型・ローズ』は大喜びした。
「他にも見たいテレビ番組があったら録画して持ってきてあげるよ。
なんでも兄ちゃんに言ってごらん!」
『R型・ローズ』は純粋なようやく本当の意味で愛らしい
希望に満ちた満面の笑顔を見せた。
「ありがとう!お兄ちゃんの名前は?」
「翔太でいいよ!」
「翔太お兄ちゃんありがとう!」
『R型・ローズ』は笑顔で翔太にお礼を述べてぺこりと頭を下げた。
それから『R型・ローズ』は彼に向かってこう言った。
「やったり個々の大人達なら信用出来そうな気がする!
若村達はね。あたしから大事なテディベアーを言う事を聞かないと
言う理由で取り上げた後に捨てたの。でもあたしが泣いて都合が悪くなると
捨てたはずのテディベアーを隠していたタンスから取り出して渡したの。
若村みたいな悪い大人って自分の思い通りにしたいから
すぐそうやって平然と嘘をついて者を奪って盗むの。
だから今まで大人達が信用できなかったの!」
「そうか……酷い大人達だったね……」とそう言いつつも翔太はその通りだと思った。
実は案外、大人が気付かない小さな悪事を見抜く力がある。
だから大人達はしっかりしないといけないんだなと思った。
結局、若村達は悪い大人の見本となってしまった訳だ。
だから今、この子には私達がちゃんとした良い見本を見せないといけない。
彼は『R型・ローズ』の話を聞き、しみじみとそう思った。
それからさっそくビデオを観ようとテレビのスイッチを押した。
すると朝のテレビのニュースであの洋館の『R型』暴走事件の
ニュースがトップで放送されていた。それによるとー。
「今日昼頃末期から夜にかけてアークレイ山脈のヴィクトリー湖の
洋館内にて反メディア団体ケリヴァーの若村以下多数のメンバーが
テレビ、ゲーム、携帯、スマホー、パソコンなどのメディアツールの
完全排除と開発阻止の為、新型ウィルス兵器とBOW(生物兵器)を
利用してバイオテロを計画していた事がBSAA関係者や
ルーアンブレラ社の関係者の取材で判明しました。
しかしある事故が原因でBOW(生物兵器)は暴走し、
反メディア団体ケリヴァーのメンバーがバイオハザード(生物災害)
によって69名が生存し、メンバーのほとんどが死亡し、全滅した事が判明しました。
更に生き残った聖ミカエル病院に勤務している看護師の
リサ・アルミケラ氏が自身のツイッターや世界的な動画サイトのユーチューブに
『R型』と呼ばれる10歳の少女のBOW(生物兵器)が暴走した瞬間を初め
さらに10歳の少女のBOW(生物兵器)『R型』に日常的に若村氏や
メンバーが虐待を繰り返す動画や10歳の少女の『R型』が暴走する直前に
自分の好きな番組を放送していたテレビ番組を不特定多数のメンバーや
『R型』本人の目の前で破壊した事により、『R型』本人に精神的な苦痛の与え、
虐待した容疑で生存している若村氏やそれに関係したメンバーを児童虐待容疑で
逮捕し、さらに詳しい事件の解明を地元のラーテル警察とアメリカのFBI
ルーアンブレラ社が彼ら関係者から詳しい事情を聞き、
責任の所在を明らかにする方針です!次のニュースです!」
それからニュースキャスターは次のニュースペーパーを読み上げた。
「今日あの洋館から救出された聖ミカエル病院の看護婦として勤務している
リサ・アルミケラ氏は病院で謝罪会見を行いました。
リサさんによると1年前の2月20日にアシュリー・グラハム医師から
彼女の担当していた若村氏の精神鑑定の結果を無断で持ち出した事を
世間に公表しました。更にリサ氏は反メディア団体ケリヴァーの抗議運動によって
救急車がER(緊急救命室)に入れず多数の患者や家族に
迷惑と不安を与えた事を謝罪しました。」
翔太と『R型・ローズ』はテレビ画面の中で静かに涙を浮かべ、
頭を下げ謝罪するリサの様子を黙って静かに見ていた。
「人を救う身なのに人を殺すというようなこの行為を……。
深く反省しています!処分はきちんと受けます!」
それからリサの謝罪会見のニュースがニュースが終わった。
「謝るのは私の方だよ……あたし……酷い事を…」
『R型・ローズ』は自分のしでかした大罪の存在にふと気が付き、すすり泣いた。
「ちゃんとあたしも反省してみんなに謝罪したいよ……」
それを聞いていた翔太は泣き出した『R型・ローズ』にこう優しく語りかけた。
「ちゃんと反省して!これから多くの人々を殺すのではなく助けなくちゃね!」
翔太の言葉を聞いた『R型・ローズ』は無言で何度も頷いた。
 
(終章に続く)