(第14楽章)黒き英雄にして野獣のバラード

(第14楽章)黒き英雄にして野獣のバラード
 
シャノンの自宅のガレージ。
俺事、アレックスは白いバイクに乗って出掛けて行ったシャノンに
何のアピールが出来なかった事を赤いセダンに変身したまま精一杯悔しがった。
そうこうしている内に赤いセダンのまま彼女のガレージにいるのも余りに
退屈で暇だったので昔の魔獣ホラーに
憑依される前の人間だったころの記憶を思い出した。
俺は裏切られる前の仲間のピートとビリーとつるんでニューヨークの街中を
遊び場にしてやりたい放題の事をやり、わがままに自由にはみ出してやっていた。
例えば歴史上の人物の顔と髪を何から何までよく出来た仮面をかぶり
(しかもプラスチック製でとても柔らかく用がなくなったら
クルクルと丸めて靴の中に隠せるすぐれものだ)
その3人で店に入り、太った女主人を荷箱をこじ開ける
テコのバールで警察を呼び出してしまわないように失神させた。
(もちろん死なない程度にぶん殴った。念の為に言っておく)
そして店の賽銭箱を奪い取り、店の高そうな煙草をそれぞれ奪い、とんずらした。
後は発電所の近くでブクブクと太った小汚い安上がりのトックリみたいな
クソガキ集団と派手に戦い(もちろん我々の歴戦の勇者たる俺達)
でボッコボッコに痛めつけて、ピートは部下の少年の目にチェーンを目に叩きつけた。
ピートのチェーン攻撃をまともに食らった部下の少年は目元の激痛で叫び声を上げた。
もう一人の部下の少年は哀れにもビリーのとても硬くて上等な
黒いブーツでがっちりと蹴飛ばされて失神してしまった。
そしてリーダーの少年も俺もノズ(カッター)ナイフで
奴のプラティ(ふく)の前のところをスッパリと切った。
結果、エンドウ豆の鞘のようにお腹もパンツも丸出しになり、夢中で隠そうとしている
隙を突いて俺は思いっきり顔面にパンチを食らわせた。
リーダーの少年は吹っ飛ばされ、鼻から大量の2本の血を吹き出しながら
仰向けに倒れ、両手で鼻を押さえて苦しみのた打ち回っていた。
俺はその様子を少しばかり楽しんだ後、こいつをとっとと楽にしてやろうと
更にそのリーダーの少年の小汚い油ぎった土まみれの右側の顔をブーツで蹴飛ばした。
するとリーダーの少年はあっけなく失神した。
その時、うっかり強く蹴り過ぎた気がした。
だが幸いにも「うーん」と唸り失神したので恐らく大丈夫だろう。
しかも俺達の耳にこびりついたあのおなじみのサイレンの音がした。
サイレン!つまりパトカーにミリセント(おまわり)だ!兄弟!
さーてと逃げないと!さもないとまた拘置所に放り込まれる。
最悪!刑事裁判とくれば有罪で豚箱行きだ!
まあ―仲良く3人ならまだ寂しくないだけマシだっただろう。
あのクソ共が裏切らない限りはな!!でも裏切っちまった!
おかげで俺様は一人寂しく拘置所へ入る羽目に!
おっと!話が脱線しちまったので元に戻そうか。兄弟!
そして俺達がやっつけた脂ぎったクソガキ集団を
ほったらかしてその場をトンズラした。
逃げる途中、まだうつ伏せに倒れて悶絶している仲間数名がいた。
しかしリーダーと部下の少年二人は失神していた。
俺がぶっ飛ばした奴だ!それから危うくミリセント(おまわり)
と鉢合わせそうになって凄くヒヤリとしたがどうにか逃げ切った。
しかも二人組でカプランとワンと言うらしい。
あれはなかなかスリルがあって楽しかった。
心臓の動悸が高鳴っていた事をよく覚えているよ。
それから俺達は道路の近くに停めてあった車を借りて、
「わーわーわー」と大騒ぎをした。
更に調子に乗ったピートとビリーは持ち前の無作法を車の上でやらかした。
ピートとビリーはラッパみたいに唇を鳴らしてから犬の遠吠えみたいな
鳴き声を上げ、道化のような大笑いを周囲にまき散らした。
当然近所の住民は迷惑がった。
頑固なクソオヤジは「親の顔が見たいわ」だの「このクソガキ共!いい加減にしろ!」
とギレムズビ(あたまにきて)で怒鳴り散らしていた。
また通りがかりの反メディア団体のケリヴアーのビラを配っていた
チボーチカ(女)は俺達の悪ふざけを面白可笑しく笑い、はやし立てた。
だからピートもビリーと俺は盛り上がっちゃって。
そしてチボーチカ(女)を横に車を停めて、ちょっと話しかけてみた。
ちなみに名前はナルシッサ・ウィッチャーだと言う。
どうやらケリヴァーと言うくだらない反メディア団体に入っているらしい。
しかもそれはゲームやテレビや携帯、スマホを悪と信じ込んでいる母親に
無理矢理勧められて入ったらしい。それで団体の活動には元々は興味が無く
別にやりたくない事をただ機械人形のようにやらされている事に嫌気がさしていた。
しばらくの世間話の後、彼女と別れて別の場所で
何事も無かったかのようにナルシッサはまたどビラ配りを退屈そうな表情で再開した。
さて!と兄弟!俺の輝かしい栄光の過去を話すのはこの辺にしよう。
何故ならたった今、ようやく美しい太陽は落ち、美しい月と
星々が光る魔獣ホラーが活動する夜となったからである。
ようやくアレックス事、俺様の出番であり、時間である。
俺は赤いセダンの姿のまま嬉しそうにヘッドライトを白くチカチカと光らせた。
それからアレックスは夜な夜なガレージを抜け出そうと目の前の固く閉ざされた
シャッターを開ける為、人間の姿に戻り、シャッターのスイッチで開けた後、
赤いセダンに変身し、何事もなかったかのように走り、こっそりと抜け出した。
そして丁度、腹が減ってきたのでどこかで
昨日の夜と同じ方法で狩りをしようと考えた。
俺はまた人気のない場所のバーの近くの
東口の駐車場の前辺りで餌の人間を待ち伏せした。
アレックスは赤いセダンの姿のまま獲物となる人間が来るのを
ニューヨークの人気の無いバーの東口の駐車場の前辺りで
待ち伏せてから10分以上経過していた。
しかしいくら待てども待てどもバーから人間が出てくる気配は無く腹が減り過ぎて少し
苛立ち、チカチカと白い光を放つヘッドライトを
点滅させたり、車体を左右に揺らした。
間も無くして人気のないバーの東口の駐車場の入り口から少々酒を飲み過ぎて
酔っ払った若い男二人が仲良く肩を組んで出てきた。
俺の思惑通り、四角い隅に停車している赤いセダンを見つけた。
二人の酔っ払った若い男はケントとガイラと言うトルコ人の男と日本人の男だった。
2人は車を盗むのが得意らしく(つまり常習犯)
たちまち俺の車の鍵をキーピックで開け(少しくすぐったかった)
車内へ入った。突然、僕はいつも通り、そいつらを車内に閉じ込めた。
続けて車内に生温かい消化液を流し込んでやった。
2人の男は大慌てでドンドンと内側のドアを叩いたり、
悲鳴を上げたり、助けを求める叫び声を響かせた。
それらはしばらく聞こえていたがやがて「ゴボゴボ」と言う音から
「グボボボボ」という声が聞こえた後、また静かになった。
車内は誰もいなくなり、元の二人が乗る前の状態に戻っていた。
それから食事を終えて俺は直ぐに発進させた。
そしてまた昨日の夜のようにまたチボーチカ(おんな)
を引っ掛けてセックスしようとコンビニの近くの
人気の無い場所で赤いセダンからアレックスの姿に戻ると
丁度コンビニに入ろうとする一人のチボーチカ(女)
の後を追って自分もコンビニに入った。
すると驚いた事にかつての俺の仲間と
グルービー(仲間)だったピートとビリーだった。
そう、こいつらのせいで俺は殺人犯として警察に捕まった。
こいつが裏切ったから俺は狭い拘置所の牢屋の中で自由を奪われた。
そのお礼参りはきちんとしないと。
俺はそのピートとビリーの一人のチボーチカ(女)
の前で鼻の下を伸ばす間抜け面をこっそりと見た瞬間、
俺の心の中にふつふつと憎しみや怒りが噴水のように湧き上がるのを感じた。
畜生!あの野郎!!絶対に罪を償わせてやるぞ!!と。
俺事、アレックスはこっそりとピートとビリーが狙いを定めたチボーチカ(女)
をうまくナンパしてコンビニの外に誘う様子をしっかりと確認した後、
すぐさま二人とチボーチカ(女)の後を追った。
その時は直ぐにビリーとピートにいつでも攻撃を仕掛けられるように
赤いセダンの姿では無く人間のアレックスの姿で走って電柱の陰や
物陰に隠れてこっそりと後を追った。ビリーとピートは人気の無い廃ビルの
ベッドのあるボロボロの部屋まで
その金髪の眼鏡を掛けた清楚な女子高生を誘い込んだ。
兄弟!あとはお約束通りの展開さ!思った通りピートとビリーは
一斉に連れ込んだチボーチカ(おんな)に飛び掛かった。
間も無くしてビリーは背後からチボーチカ(女)を羽交い絞めにした。
ピートはそのチボーチカ(女)ののズボンのチャックを外して脱がせた。
更に白いパンティも強引に降ろして脱がせた。
俺はそのピートとビリーに襲われているチボーチカ(女)をよく見ると以前に
途中の路上の隅で金髪の若い灰色の服を着た日本人のおっさんに
公然と猥褻(わいせつ)な行為をされていたあの十代になる
金髪の眼鏡をかけた清楚な女子高生だった。
「やれやれまたあの子か?なんで……また夜中にうろついているんだ??」
流石の俺もすっかり呆れてしまった。もしかしたら案外、天然なのかも知れない。
続けてピートは一度チボーチカ(女)を羽交い絞めにするのを止めて
無理矢理、黒い天使の絵の付いた上着とブラジャーを脱がせた。
その十代になる金髪の眼鏡をかけた清楚な女子高生は哀れにも全裸となった。
そしてピートが自分のズボンを脱ごうとする瞬間。
俺は偶然を装ってビリーとピートの前に現れた。
「ウェルェルウェルウェル!どうもお久しぶりでね!ビリーとピート!」
聞き覚えのある声に2人は驚いた様子で俺を見た。
「おやおやビリー!フン!くせえオスヤギのビリーボーイさん?
とっととその小汚い手を清楚なおしとやかでお美しい少女から退けろよ!
安油のトックリめ!汚れるんだ!白い肌が汚れるじゃないか!!」
しかしビリーとピートは目の前に現れた自分達が裏切った筈の
アレックスがここにいるのか理解出来ず茫然と
トックリ樽と木のようにその場に阿呆のように立っていた。
 
(第15楽章に続く)