(第5章)長野先生と洋子の正体

次のゴジラの自作小説です。

(第5章)長野先生と洋子の正体

 ゴジラはどこか巨大な洞窟の中を泳いでいた。
 そこは数億年前にできた古い洞窟らしい。
その中を進むとその先は広い空洞になっており、
何百頭のゴジラの群れがのんびりと泳いでいた。
 さらに洞窟の奥にはゴジラの心臓や、モスラの糸に包まれた
機龍と言う名前のゴジラが静かに眠っていた。
 誰がこんな北海道の海底の洞窟に運んだのかは知らないが、
同族の仲間が協力してこんな所へ運んだのだろうと思われる。
ゴジラ族がここを新しい住処として住み始めたからである。
そこにはミニラやジュニアもいた。
 もちろんゴジラ達や小笠原怪獣ランドのラドンを始め
怪獣達しか知らない秘密の場所である。
人間達はこの未知の洞窟の存在を全く知らない。
 ゴジラはすぐ近くにあった大岩に身を潜め、ウトウトと眠り始めた。
ここはゴジラ達の心休まる場所であった。
 
 友紀と蓮はドアのカギ穴の部分から中を覗こうとしていた。
そして小さい隙間から中の様子が少しだけ見えた。
長野先生は
「あたし達の母星では種を存続できなかったの……
だからこの惑星に大勢が移住したわ!カナダとか北海道とか?」
友紀は、長野先生の部屋の中の様子をカギ穴から、
デジタルカメラのレンズを押し当ててレンズ越しで覗いた。
洋子は深刻な表情で野先生の話を聞いていた。
長野先生は
「貴方は最初の地球人と宇宙人とのハーフなのよ!」
友紀と蓮は驚いて互いに顔を見合わせた。
蓮は「やっぱり……だから……」
友紀は信じられない顔で
「まさか?先生は洋子ちゃんみたいに
SF映画の観過ぎじゃないかしら?」
と聞いた。
長野先生の話は続いた。
「次は明るい話をしましよう!気になる人って誰かしら?
あなたはその気になった人の子供が欲しくないの??」
洋子は
「先生、大丈夫ですか?なんでいきなり
そんな話をするんですか!?証拠でもあるんですか?」
長野先生は必至に
「どうして?理解してくれないの?……今までのあたし達の苦労を……」
と食い下がった。
しかし洋子は
「知らないわよ!」
と言うと、ドアに向かった。物凄い足音が聞こえたので、
友紀と蓮は急いで近くにあった掃除用具入れの中に隠れた。
 洋子は憤慨した様子で息も荒く足音を響かせ、歩き去った。
長野先生はその後ろで
「今!自分の正体と向き合わないと!あとで一生後悔するわよ!」
と嫌味を言う声が聞こえた。
その声は普段の先生の声色と全く違っていた。
蓮は腸が煮えくりかえるのに堪えるのに必死になった。
その様子を友紀はいくぶん心配そうに見ていた。
 長野先生が歩き去った後、蓮はたまらず
「洋子ちゃんが心配だ!」
と言うと自分の部屋に戻ろうと走り出した。
友紀は自分の部屋へ戻って走って行く蓮の後ろ姿を不安な様子
で見送っていた。
 蓮が自分の部屋の戻ると洋子が
奥のベッドに座って一人で泣いていた。
 蓮はどうしたらいいのか分からなかったが、思い切って
「俺……長野先生の話を聞いたんだ!君が宇宙人と人間の
子供だって?長野先生と君はミュータント?」
と聞いた。
洋子は驚いて蓮の真剣な顔を見た。
「先生の話、本当だったらどうしよう?」
蓮は洋子を優しく両手で抱き
「例え……宇宙人でも人間でも……同じ命だ!」
と言った。
洋子は大声で泣き出した。
 蓮は急に泣き出した洋子を見て優しく
笑い掛けると洋子の唇にキスをしようとした。
しかし洋子は
「ちょっと待って!友紀ちゃんに『本当に好き』って告白しているなら!駄目よ!」
と言った。
しかし蓮は
「君は……友紀ちゃんと同じくらい綺麗に見える!だから好きなのかな?」
洋子は「ありがとう……でも……それは……」
しかし蓮は構わず洋子の首筋や胸元にキスをしながらベッドに
倒れ込んだ。
 偶然にも電源を切るのを忘れていた蓮のカメラはその一部始終を捉えていた。

 大岩でウトウトと眠りこけていた時、突然、ゴジラは何か強
い殺気と冷気を感じた様子で目を開き、低く唸った。
ゴジラの目の前に、右腕が自分と同じ皮膚をした女性がいた。
 その女性は振り返り、ゴジラに向かって微笑した。
ゴジラは怒りの唸り声を上げながら、その女性を睨みつけた。
それから目の前が真っ白になり、
女性は消え、元の洞窟の風景に戻った。
 他の同族達も動揺した様子で今起こった出来事を考えていた。
 ゴジラは再び低く唸ると、洞窟から飛び出し、
海面へゆっくりと浮上を開始した。

(第6章に続く)

まだまだ続きます♪♪