(第2章)怪獣に優しいエコ暮らし

(第2章)怪獣にやさしいエコ暮らし

M機関の地球防衛軍では、カンナが大量のポテトチップスとジュースを出して、
無言で2枚3枚をまとめてバリバリかじっていた。また他のミュータントもジュースをガブ飲みしながらまるでサッカーの試合を見るように全員テレビ画面にくぎ付けになっていた。
テレビでは、北朝鮮に上陸したゴジラが核施設を目指して、北朝鮮の戦闘機や戦車を蹴散らしながら進撃していた。ゴジラはすべての軍を壊滅させて、核施設の核エネルギーを吸収すると海へ去って行った。そのようすを見ていたカンナは
「やっぱり東京の戦いで何倍にも強くなっているわね・・・」
北朝鮮は以前ニュースで、日本やアメリカが要する『核』の無力化に大反対をして、
あくまでもゴジラを倒すことを強調していた。
また軍事パレードでも自慢の兵器を行進させて、ゴジラの上にNOマークをつけた旗を掲げていた。しかしアメリカや日本の地球防衛軍自衛隊は、北朝鮮やイランに対して『核』を廃絶しない限りその他の怪獣の防衛作戦には一切参加しないと発表している。
ジェレルがふと思い出したように
「この前の核実験中にもゴジラが上陸してダメになったからな…」
アヤノが「わずか3日で瓦礫の山ね・・」
その後ニュースでは北朝鮮には『核を廃絶』する以外道がなく、イランも同様に
『核を廃絶した』と報道された。
その代りエネルギーは風力や太陽光に切り替わりつつあった。
世界中の原子力発電所のほとんどがゴジラに破壊しつくされており、深刻なエネルギー不足に悩まされていた。またゴジラ達は、人間達が次々と核を廃絶して、食糧不足の為、
ガソリンや石油、バイオエタノール等を捕食するようになった。日本はすでに核は永久放棄されており、ソーラパネルなどの太陽エネルギーや風力発電型エネルギープラントが多数作られた。世間ではこれ以上怪獣が出現しないようにと地球温暖化や環境破壊を防ぐ様々な取り組みがなされていた。
内閣官房副長官の金田トオルは自分の妊娠と付き合っていた覇王圭介の
正体を聞かれて動揺している美雪の様子を見て、
「もしかして図星ですか?その男の正体は…」
しばらくトオルの話を聞いていた美雪は笑いながら
「まさか?冗談ですよね?」と不安げに言った。
トオルはまじめな顔で「茶化さないでくださいよ!!」と言った。
剣士は「その男のDNAを調べた結果…驚くべきことがわかった!!」
すかさずトオルはしばらく興奮気味にしゃべっていた。
美雪はしばらく考えながら1人言のように
「まさか?…モスラ轟天号をかばってギドラに殺される直前に伝えたかった事って?」
とつぶやいてから「でも生物学的にはあり得ません!!」と否定した。
しかしトオルが「でも実際に子供がいるじゃないですか?」と反論した。
剣士は「今!!我々と一緒に来れば、テログループであるバイオメジャーや
サラジア共和国から君と子供の安全は保障する」と言うが美雪はそれでも拒否し続けた。
さらに剣士は「でも考えてみたまえ!!その子供がもし大勢の人々を救えるとしたら?神にも等しき力を持つゴジラには様々な兵器は全くの無力だった…他の怪獣も戦ってほとんどが倒されている。町が破壊されて、人々の安全が毎日のように脅かされている。それを救うためにぜひ協力してほしい!!」
ところが美雪は「ゴジラは畏怖すべき存在です…それに…覇王圭介は
自分の子供が兵器として使われるのを望んではいないでしょう…」
と言った。しかしトオルは「兵器では無く新しい人手だ!!」
と再び反論した。しかし美雪は何かに怯えたように2人の申し出を必死に断り続けた。
美雪は「ゴジラを殺したくありませんし・・・戦いをしたくありません!!」
トオルは「それであなたは現実から逃げるおつもりですか?」
と怒鳴った。しかし美雪は「いいえ違います…怖いんです…」
静かにイスに座りながら言った。
すると剣士が「それなら仕方ない…」
と言うと部下数名が美雪を捕まえた。
「何をするんですか!?離してください!!」
と怒鳴ったのを最後に、無理矢理睡眠薬で眠らされ、用意されたベッドに乗せられて
彼女は強引に仮設研究所から連れ出された。

朝日テレビのある番組に出演していたリポーターの山根優香は
「それでは最近話題の全国市民団体の怪獣災害ネットワークが立ち上げた
『平和作り計画推進委員会』についてお送りします。
どんな活動をしているんでしょうか?」
その団体の代表者の温水浩子は「主な活動としては、国会に『平和作り無防備平和条例』
を直接申告する為に全国で署名活動を行っています」と説明した。
すると日東のアナウンサーでありジャーナリストの音無杏奈が
「その『平和作り無防備平和条例』とは何でしょうか?」と質問をした。
浩子は「『市の責務として、怪獣との戦争に関する行動は一切行わない』
『対怪獣用の軍事建設を認めず現存する施設をすべて撤去または廃止する』
怪獣達が町を襲うのは軍隊や軍事基地あるいは『核』等の危険な
兵器があるからです!!それさえ無くせば!!怪獣達と人類の共存は可能だと私は信じています!!」
さらに浩子は
「怪獣達を目覚めさせて、軍に強力な兵器を売りつけ大金を儲ける兵器産業こそ我々の敵です!!
戦渦で焼け野原になった東京等の街を復興させるといって大金を儲けるのも彼らです!!
犠牲になった私たちにビタ一文も保証はありませんでした!!
毎日!!日本は89兆以上の借金をしてまで、世界第2位の軍事費を確保している。
全くの無駄金ですよ!!平和外交や教育や医療、福祉、年金に使えばいい事です!!
自衛隊地球防衛軍は災害救助隊に変わればいいですね!!」
山根優香の「もし宇宙人のX星人が攻めてきたらどうするんですか?」
という質問に対しては
「私達は彼らにも全力で反戦運動をしますね!!」
と冗談交じりに答えた。最後に代表者の浩子は
「実際軍隊の無い国は25カ国以上もありますし、その国の殆どは
怪獣や宇宙人に襲われた事はない。まだまだ課題はありますが・・・
必ず実現させます!!」と全国テレビで力説していた。

(第3章に続く)