(第4章)運命

(第4章)運命

真鶴の断崖から飛び降りて自殺を図った美雪は海の底に沈んでいった。
かすかな意識の中、美雪の耳に「生きろ!!それが運命だ!!」
と声が聞こえた。美雪は真っ暗闇の中で「また…誰なの?」
とつぶやいた。さらに同じ声がして
「仲間を死なせるな!!ここで散るのは運命ではない!!」
とも「何故?死のうとする!?意味がわからない!!」と聞こえた。
美雪は「あたしにも良く分からない…母として子を守るためなの?怖い!!」
前作で尾崎から貰ったインファント島のお守りが発光していた。
一方M機関のヘリの中では
「北海道沖で謎の高エネルギー!!」
とジェレルが大声で言った。
尾崎は「まさかゴジラか?」
アヤノは「そんな…緊急事態なのに!!」
ジェレルは驚いたように
「あっ!!真鶴近海で弱エネルギ―反応!!いや!!ここです!!美雪さんが沈んだ所です!!」
ニックは「まさか?もう1匹のゴジラか?!」
ジェレルが
「この2ケ所のエネルギーが互いに共鳴しています!!いったい何が?!」
と混乱した様に言った。
アヤノが「あそこ!!何か光っている!!」と海を指さした。
一方CCIも2ケ所で同様のエネルギーを確認したと報告を受けて、
トオル
「まさか?!弱エネルギーは美雪さんの赤ちゃんから…それに
反応して高エネルギーが…ゴジラ?!」
剣士は「だから…互に共鳴して…だとしたら面倒なことになるぞ!!」
トオルは「早めにここへ来ないように攻撃準備をさせましょう!!」
と言うなり、テントに駆け込み,無線で
ゴジラらしき高エネルギーを北海道沖で確認!!早めに攻撃準備を!!
真鶴の近海に来ないようになんとしてでも進行を阻止せよ!!」
そして剣士は「すぐに彼女を救出しろ!!何をしている!!急げボヤボヤするな!!」
と周りの職員に怒鳴った。
真鶴の海の表面は発光したり消えたり、点滅し、そこにあおむけに人らしき物が浮かんで来た。
アヤノが「美雪さん!!」
ジェレルは「2ケ所のエネルギー反応…消失しました!!」
ゴードン大佐は「一体何だったんだ?……」とつぶやいた。
その1時間後…美雪は救命ボートに乗せられて無事救助され、真鶴の病院に搬送された。
CCIのトオルや剣士は彼女の無事を聞いたが、剣士は
「そうか…無事に救助されたか…何!?地球防衛軍のヘリに!?」
トオルは「完ぺきにやられましたね…国連が許可したらしいですよ!!我々がやらなくても済みそうですな!!」
剣士は「抗議してやる!!全員引き上げだ!!」
と悔しそうに関係者に命令した。
そしてCCIの関係者達は本部に引き揚げて行った。

真鶴の山奥の断崖から飛び降り自殺を図った美雪は謎の声と地球防衛軍の尾崎を
始めM機関達の決死の救助により、
真鶴の病院に運ばれ、医師達の緊急処置ですぐ
に意識を取り戻した。
やがて美雪は病室に運ばれた。そこには姉の杏奈と両親が来ていた。
両親は美雪の無事を知るや否や大泣きを始めて
「よかった!!ありがとうございます!!」
と医師達とM機関のミュータント達に
何度も頭を下げた。
美雪はベットの上で泣きながら
「父さん…母さん…本当に…ごめんなさい…」
と何度もつぶやいていた。
すると尾崎が
「何故?自殺なんか…」
と質問した。
美雪は
「怖かったの…自分の子供が兵器として使われるのが…」
母親は
「最初聞いた時は本当に驚きました!!娘の相手の覇王圭介さんの正体が…
しかも!!子供がいるなんて!!」
父親は
「私は何度も中絶を考えました……
まさかその男の正体が…正直考えたくもありませんでした!!」
と涙ぐんで
「でもそれは間違ってました!!」
と言うとハンカチを取り出してすすり泣いた。
美雪はベットの上で泣きながら
「中絶なんて絶対嫌!!」
と必死に母親に訴えた。
母親は
「本人もそう言っていますし……せっかく生まれ出る命ですもの……
私は例えどんな子であろうと…
夫には反対し続けました。」
父親は
「おかげで離婚寸前でしたが……さっき尾崎やゴードン大佐からその男の話を聞
いて……娘の命を何度も助けてくれたと聞いて……私達は最初はミュータントの
人達かと思ってました!!」
と声がかすれて無言になるまで言い切った。
母親は
「ミュータントの人達には本当に感謝しています!!」
と再び何度も頭を下げた。
父親は
「是非!!覇王さんに会うことがあったらよろしくお伝えください!!」
と言って丁寧に頭を下げた。
美雪は
「姉ちゃん……覇王君のテープをかけてあげて……」
杏奈は
「これは覇王君が地球防衛軍をやめた時に残したテープです。」
と言うとスイッチを入れて再生させた。
テープから覇王本人の声が流れてきた。
両親は無言で聞いていた。
自らの正体を告げ、今までの自分が『殺人者』だったと言う事、激しい後悔の嵐
に苦しみながら自ら犯した罪を背負って1人で生き続ける事
を選んだ事、そんな覇王の言葉に両親はただひたすら耳を傾けた。
覇王が美雪との生活ができない理由を知ると、両親は同情すべきか憎悪すべきか
正直判断に苦しんだ。やがてテープの最後になって「結婚」や「プロポーズ」の
言葉を聞くと両親はさらに複雑な気持ちになった。
テープが終わるとしばらく両親は無言になっていたが、どう答えていいのか全く
分からない顔をしていた。
美雪は優しく
「分かってあげて彼の事……」とつぶやいた。
母親はそれでも
「理解するにはまだ時間がかかるわ……お願い……もう少し家で考えさせて」
と言った。

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