(第6章)あなたの仮面の下はどんな顔かしら?

(第6章)あなたの仮面の下はどんな顔かしら?

中国の上海海洋研究所から大分離れた距離にある『惑星調査船エクゼロス号』
の小型船内では、高新一が上海の森の地図をスクリーンに
映して何かを探しているようだった。
やがて狼の形をした砦のような遺跡が映し出された。
高新一が別のボタンを押すと、スクリーンは遺跡の地下深くの研究所らしき物を
映し出した。
李仙竜が
「見つけたか?」と聞いた。
高新一は
「見つけたぞ!!例の廃研究所を!!」と言った。
陳天来は
「そうか……一体この研究所でどんな研究をしていたんだ?」
と聞いた。高新一はしばらく押し黙っていたが、やがて口を開いた。
「1万2千年前に我々の軍が地球を攻撃した時に、この遺跡は発見され、そこに『
例の寄生生物』に関する地下研究所が作り上げられた。そこでは数万年前に倒産
した銀河最大の生体兵器企業『アンクロスエクス社』の社員が働いていた。
その会社はX星人だけでは無くキラアク星人やMハンター星雲人、ブラックホー
ル第3惑星人等多くの惑星の宇宙人達を雇っていた。しかしその地下研究所で漏え
い事故が起こり、地下研究所は封鎖され、大勢の宇宙人達が『例の寄生生物』に
より死亡した。それ以来この研究所は封鎖されている。もしかしたら2年前に地
球の東京に出現した『2体の生物』は『例の寄生生物』と何か関係があるのかもし
れない……」
すると李仙竜は「それはどういう事でしょう?」
高新一は「……その『2体の生物』と『例の寄生生物』の生態を比較したところ、
たくさんの類似点が見つかった……」
陳天来は
「なるほど……」
高新一は
「まだ調査中の段階ですがね……」
李仙竜は
「でも……本来アメーバのように不定形ですから、形が何であれ同族である可能
性は高いですね……」
高新一は
「それでその廃研究所は地下を爆破して撤去する予定だ!!
6日後には地下爆破部隊を乗せた宇宙船が到着する!!」
と言った。
すると李仙竜は
「やれやれ……ようやく漏えい事故も1件落着か?」
とつぶやいた。

美雪の家の玄関で凛の元気な
「行ってきます!」
という声が聞こえた。
キッチンから母親の美雪があわてて
「凛!!忘れ物!!」
と言ったが既に遅く、凜は、自宅のドアを開けて外へ出て行った。
学校に行く途中の凛は山岸の後ろ姿を見つけた。凛は後ろからそっと音を立てず
に近寄り、突然大声で
「おはよう山岸君!!」
と言うと彼の腕に抱きついた。
山岸は驚いて振り向き
「うわ!!ビックリしたな~。おはよう凛ちゃん」
凛はペロッと舌を出して
「御免ね!!ビックリした?」
と言った。
山岸は「うん……」と言うと額の汗をぬぐった。
凛は
「今日は超熱いね!!」
山岸は
「うん…まるで砂漠みたいな暑さだね」
凛は
「高校2年生だった頃のほうがまだ夏は
涼しかったのにね……」
山岸は
「とにかく日射病には気付けなきゃ……」
今年の東京の8月はとにかく日中は砂漠のようにカラッとした暑さだった。しか
も6月の梅雨にも雨がほとんど降らない状態が続いた。その為農作物には深刻な被
害が出ている。
これも恐らく『例の甲殻類』が発生させた化学物質のせいかもしれない。
やがて凛は
「この頃変な夢を見るの……」
山岸が
「へぇ……どんな?」
凛は水筒を取り出して水をゴクゴク飲むと
「その夢はね……」と少し顔を曇らせた凛はペットボトルの水をしまうと
「やだ!!また灰色の砂山!!」
と言って、灰色の砂山を避けるように歩いた。山岸は
「最近多いな……コンクリートの砂山……」
と言うと、彼女と同じく少し硬い灰色の砂山の所を避けた。
その灰色の砂山は、『例の甲殻類』が発生させた化学物質の影響で、東京湾の近
くの土壌における塩類濃度が上昇し、地下水が地表面で蒸散して塩類だけが残っ
てたものである。塩性化と言う砂漠化の主なプロセスの一つである。
しばらく2人が歩いていると今度は
「あっ!!塀が壊れて灰色の砂が道路に流れている!!」
山岸は「あ~あこれは大変だ!!」
と言いながら2人は仕方なく通学路から別の道を迂回していった。
そしてようやく灰色の砂山の全く無い通学路の脇道に出た。
凛は思い出したように
「それでね!!例の夢の話なんだけど、あたしが真っ暗など真ん中に立っていて……
それで目の前に黄金の光に包まれたもう一人の自分が立っているの……
そのもう一人の自分が黄金の竜に変身して襲いかかって来て、
あたしは怖くて逃げた所で眼が覚めたの!!」
と言った。
山岸が
「大変な夢だね…」
と心配そうに言ったので凛はため息をつきながら
「そうなのよ……もう3回も見ているのよ!!毎晩寝る度にね!!」
と言った。
山岸は
「そうなんだ……」
とカバンを肩にかけ直しながら曲がり角を曲がり、校門の前まで来た。

X星人の小型船『エクゼロス号』内で、陳天来は気になった様に
「なあ新一、あのX星の倒産した『アンクロスエクス社』が
どうしてあんな中国の遺跡の地下に軍事研究所を?」
と質問した。
高新一は
「俺も良くは知らないが……噂によるとあの場所には『例の寄生生物』に寄生さ
れた黒いバガンモスラ族によって地下に封印され、それを見た先住民族達がそ
れを『闇の森の神』として祭るために遺跡を建てたそうだ……」
すると李仙竜が現れ「それで地下にはX星人が家畜生産用のクローン技術に不可
欠な『例の寄生生物』のサンプルが宝の山の様にとれるから
『アンクロスエクス社』の他に幾つもの軍事企業が、どんな汚い手を使っても
その場所を独占したがっていた。」
陳天来は
「なるほど……」
と納得したように言った。
高新一は
「万が一『例の寄生生物』が研究所内に漏えいしても、地下の研究所を封鎖して
地上の家畜達に被害を出さない考えだったらしい……」
と付け加えた。

凛と山岸は校門から入って学校の下駄箱に外靴を入れながらふと凛が
「もしあたしがカイザーだったら?」
と聞いたので山岸は「うーん多分びっくりするね!!」
と笑いながら靴を下駄箱に入れながら答えた。
凛もふと笑いながら「カイザーだったら念動力が使えて超人的な体力があって?」
と上靴を履くと外靴を下駄箱に入れた。
山岸は
「たしかに……凛ちゃんはスポーツは得意だけど超人って程じゃないね。念動力
も使えないし……」
と言いながら廊下を歩き始めた。
凛は
「あら…カイザーは覚醒するまでは念動力は使えないのよ」
これに山岸は
「でも凜ちゃんが体育とかの授業でミュータントみたいに超人的に動く所を僕は
今まで見たこと無いな……」
と考えながら言ったので凛は
「確かに……でもオリンピック選手はみんなミュータントかもよ!」
言った。
山岸は
「まあ……そうだね!!」
と笑いながら言った。
しかしふと凛が
「……ミュータントやカイザーだったら普通の人達はよく知っているけど……」
とつぶやいた。
山岸は
「まあね……でも!一部の市民で敵視というか?嫌がる人達もいるけどね……」
すると凛は
「人と人とが付き合う時って…必ず恋人であれ…友達であれ……自分の本音を隠
さなきゃいけないのね……」
と言った。
山岸は
「どうしたの急に?」
と心配そうに聞いた。
そして教室の前に来た時、凛が
「あたしと山岸君の仮面の下はどんな顔かしら?」
山岸は
「さあ……それは本人しか分からないさ!!」
凛は
ゴジラや他の怪獣達の仮面の下も?」
山岸は
「まあね……でもどうしたの?何か悩みでもあるの?」
と聞いた。
凛があわてて首を振りながら教室のドアを開けて
「別になんでもないけどね!!」
と言って、2人は教室に入って行った。

(第7章に続く)

今日の変更はここまでです。
シーズン4はだんだんネタ切れで停滞していますが近日中には載せます(汗)
では♪♪